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    ロトス

    @tsr_gnsn

    空ベドとベドベドの漫画、絵、小説を溜めていくところ。pixivに出さないやつもあります。

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    ロトス

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    カプがわからない
    空とリネとリオセスリの話

    「旅人、リネットを見なかった?」
    それはメロピデ要塞での一悶着が終わり、ようやく通常運転に戻りつつある、ある日のことだった。
    焦って汗を切らしたリネが午前の仕事を終えた旅人、空の元を訪れたのだ。
    「リネットはおまえといつも一緒にいるだろ? オイラ達より詳しいと思うけど」隣を浮遊するパイモンがそう返す。
    「いや、それが見当たらないんだよ。確かに近くにいたはずなのに目を離した隙に消えててさ」リネは困ったように溜息をつく。
    「フレミネも知らないみたいなんだ。うーん、リネットのことだから問題ないとは思うけど心配だな」
    空とパイモンはリネと一緒にリネットを探すことにした。フレミネはまた別の場所を探してくれているらしい。
    「うーん、でもあまり好き勝手出歩けないよな。看守が監視しているし」
    「そうだね、また見つからないように忍び込むしかないかも」鋭い目で当たりを見渡す看守を見、呟くパイモンにリネが返す。
    「じゃあ公爵に頼めば良いんじゃない?」と空。
    メロピデ要塞を管理している人本人から許可が下りれば看守なんて気にする必要もない。なんなら公爵、リオセスリがリネットの行方を握っている可能性だってある。
    「うぇ……」リネの表情が一緒でバツの悪そうなものに変化する。まるで不味い料理を無理やり食べさせられたかのよう。
    「そういえばそうだ。前にリネットがいなくなった時の黒幕はリオセスリだった。あいつなら、何か悪いこと企んでいる可能性だってあるよね。まさかまたリネットを……?」と疑心暗鬼に陥るリネをパイモンが慌てて宥める。
    「待てまて! 公爵がリネットをさらうなんてありえないだろ! そりゃ、前はそうだったかもしれないけどあれは理由があったしあいつはフレミネのことを助けてくれたじゃないか」空もうんうん、と頷くがリネはまだ彼を許せていないようだった。
    「う……確かに情報も何も無いまま疑うのは良くなかったよ。でもリオセスリはあまり頼りたくないかな……。貸しを作りたくないんだ」リネは溜息をついてトボトボと歩き出す。
    「時間も遅いから後は僕1人で探してみるよ。君たちは明日、何か情報を掴んだらカードで知らせて」リネはそのまま歩き去ってしまう。

    「オイラたちはどうする?」残された空とパイモンは顔を見合わせる。
    リネットは2人にとっての友人でもある。このまま他人のフリするわけにもいかない。
    「うーん、リネは嫌がってたけどリオセスリに話聞いてみよう」
    「そうだな! 公爵なら事件とかきっと全部知っているだろうしな」2人は執務室へと歩を進めた。

    「やっと来たな」公爵、リオセスリの執務室を訪れるとそれを最初から予測していたかのように彼はにやりと笑む。
    「公爵~! 大変なんだ、リネットが!」
    「ああ、事情は看守から聞いているよ。リネットちゃんが行方不明で兄であるリネくんがメロピデ要塞を駆け回っているとね」
    「知ってるなら話が早いぜ! でもだったらなんでリネのこと助けてやらないんだ? ファデュイだからってまだ警戒してるのか?」
    公爵はいや、と首を振る。
    「その逆だ。リネくんはきっと俺がリネットちゃんを攫った犯人だと思っているんじゃないのかい?」
    さすがは公爵。リネのことをよく分かっている。
    「確かに、さっき話した時に疑っていたけど。免罪被せられたからリネに怒っているのか?」

    「いや、リネくんの立場を考えたら仕方ないことだ。だから怒ってはいないし、リネくんに同情もするさ。だが、もし俺以外に犯人がいると知ったら彼はどう動く? 前にもあっただろう、リネくんはリネットちゃんのためにどんな行動に出るか分からない。自分を犠牲にしてでも大事な妹を助けに行くだろう」
    空が自分とパイモンがメロピデ要塞に来たばかりの頃リネット、フレミネと離れ離れになった時のリネを思い出す。冷静になれと自分に言い聞かせるも最後はこの執務室へ駆け出していた。
    「つまり、こっちに敵意を向けさせておけばリネくんは俺を監視対象に入れる。同時にリネくんもこちらの監視下に入ることになる。そうすれば、彼が危険に晒されることはなくなるだろう?」
    「こ、公爵~! お前リネのことそんなに……! なのにリネのやつはそれが分からないなんて! 旅人、今度リネに会ったら全部話してやろうぜ!」と意気込むパイモンに対し、
    「今のこの関係が作戦にもなっているから、話すならリネットを見つけてからね」


    リネの話が一段落し、話は本題へと映る。
    「それでリネットちゃんだが、まだ行方は分かっていない」リオセスリのその発言に空とパイモンは顔を見合わせる。
    「さらに言うと、このメロピデ要塞で行方不明者が現れ始めた。リネットちゃんを含んだ、このメロピデ要塞にいる女性をターゲットにね。水の上で起きていた連続少女失踪事件とよく似ている」
    「なんだって!? でもマーセル……ヴァシェのやつはもう裁かれて……、いやあいつ多分メロピデ要塞に収監されてるよな。つまりここでもまだ続けているってことか?」パイモンの問いにリオセスリはいいやと続ける。
    「当然、最初に彼のところに話をしに行った。が、彼は全く知らないようだったし水の上で相当懲りたのかもう二度としたくはないと怯えていてね。あの様子じゃ、犯行を続けることは不可能だろう」
    つまり、他に犯人がいるということになる。しかも、連続少女失踪事件に寄せることでヴァシェに疑いの目を向けることもできる。
    「なんてやつなんだ! さっさと捕まえて裁判に……いや、ここにいるってことはもう裁かれているんだよな? じゃあ反省させてやろうぜ!」
    その思いは空もリオセスリも同じだろう。
    「しかし、実はまだ犯人の足取りは掴めていなくてね。俺が直接見回りに行くと怯える奴らもいるから看守に任せるしかないんだが、それでも一切の情報がない。そこで君たちの顔が浮かんだ。リネットちゃんの話を聞いてリネくんが駆け込んでくる可能性も考えたが、君たちで安心したよ」
    「そうだったの……」せめて何か情報を得られたらリネに共有しようと思ったが、これではあまり良い情報は渡せそうにない。連続少女失踪事件がまた起きている、と知らせるくらいだろうか。
    「看守に君たちは自由に行動できるように知らせてあるからこの事件を調査して欲しい。もちろん、リネくんとも協力をしてくれて構わない」


    こうして、空とパイモンはメロピデ要塞での調査を開始した。特別許可券も割と余っていたからわざわざ働いて稼ぐ必要もなさそうだ。かつてメロピデ要塞のルールを探った時のように聞き込みから開始する。

    「最近ここにいる女の子達が行方不明になってるって聞いたんだけど」
    「お、俺たちは知らないぞ!タルタリヤの兄貴の情報を隠すにはこれで十分だからな!」
    1番詳しそうな人に、と思ったがいきなり詰まってしまった。レオニード達も状況は把握できていないようなのだった。
    「他に詳しそうな人いないかな。ボム・ブラザーズとかは?」
    「行方不明事件は噂になってるが、奴らの隠れ家が分かっていたらとっくに通報してるだろう。誰にも見つけられない場所に閉じこもっているのさ。間違いなく只者じゃない」


    「そうだ、お前公爵に地図をもらったんじゃないのか?」パイモンの話に空はああ、と荷物を広げる。
    足しになるかは分からないが、調査の役には立つだろうとリオセスリから貰い受けていたのだ。
     地図を見ながら歩き回ってみるが、やはりどこも一度は行ったところで隠れ家なんて正直見当たらない。あるとすれば、廃棄エリアだろうか。しかし制帽の会事件で立ち入ったばかりだし、そんなわかりやすく使うことがあるだろうか。

    「他にあるだろ、実はとんでもなく穴掘りの名人で毎日夜な夜な穴を掘っていたとか!」とパイモンが言うがそんな手間のかかることを看守に見つからずにできるはずがない。
     ただ、まったく帰ってこないとなると、それこそ制帽の会事件みたいに閉じ込めらている可能性は高い。
    「かといって、公爵ですらわからない場所ってそれはもうメロピデ要塞にいないようにも思うんだけど」
    「メロピデ要塞にいない……それってつまり外に隠れ家があるってことか?」
    「俺たちだって脱出ルートを知っているでしょ? 公爵や看守に見つからずに抜け出せているんだとしたら、ありえない話じゃないよ」

     そして二人の予定が固まった。かつてラノールやキャタピラーと逃げ出したときに使ったあのルートを調べるのだ。そこまで広い場所でもなかったはずだし、相手は空たちがそのルートを知っているなんてサーチできていない可能性が高い。
    「僕も連れて行ってよ」早速移動しようとした二人にリネの声が響く。
     リネはおそらく心配で睡眠もとれていないのだろう、目の下に隈ができていてとても見ていられない状態だった。
    「確証はないけど、良い?」
    「手がかりが何もないよりはずっとマシさ。聞き込みをしたって誰も情報を持っていないなんて……はあ」リネはそうため息をつく。


    「む」三人は出口付近で悲鳴のようなものを聞く。
    「あの声って……」
    「まさかリネット!?」リネがその声がする方へと駆け出した。
    「ちょっと待てよ!罠だったらどうするんだ!}慌てて空とパイモンが追いかける。

     かろうじて人が一人通れそうな細い道があり、その奥から声が聞こえる。三人は足音を立てないように中へと進む。ここはもうメロピデ要塞を超え、洞窟のような場所となっていた。ここなら確かに、万が一穴を掘っていたとしても看守が見つける可能性は低いのかもしれない。
     奥で低い男性の声が聞こえ、だんだん遠くなる。歩を進めると、ドアもない簡易な部屋が見つかった。中は薄暗いが、人の気配がする。

    「慎重に行こう」とリネは言い、炎元素を明かりの代わりにして中へと足を踏み入れた。

    「あ……」そして、そこにリネットの姿を見つけるのだった。
    「リネット!」リネは飛びつくように彼女へと駆け出す。
    「リネ、どうしてここが? ここはメロピデ要塞からも遠く離れているから誰も来られないと思っていたのに」
    「旅人がここを知ってて案内してもらったんよ。それにしてもああよかった!」リネをリネットを強く抱きしめる。
    「いろいろ聞きたいことはあるんだけどみんな早くここから逃げ出そう。ここは危ないよ」空は外への道を指さすと、部屋に閉じ込められていた少女たちを誘導する。少女たちはありがとう、と空に頭を下げて先へと進んでいく。

    「俺たちはここで待とう。犯人が戻ってきたときに捕まえられるし。リネは女の子たちを連れて行ってあげて」空は少女たちを誘導しながら背後のリネに声をかける。
    「うん、わかっ……」リネがそう返事をし、途端に詰まってしまう。
    「リネ?」空が彼を振り返ると、そこにいるリネは横たわっていた。
    「リネ、どうしたの?」空が声をかけるとリネは何か苦しそうに呻いている。
     周りからも怯えるような悲鳴があがっている。空はリネたちの視線の先を辿る。
     そこには高級そうな服に身を包んだ囚人がいた。メロピデ要塞にはあまりにも不相応とも言える。背後には警備ロボの姿も見える。空たちが駆け付けたのを察して連れてきたのかもしれない。
    「リネ……そんな……」リネットも青ざめた顔でリネの前に崩れ落ちる。
    「大丈夫……ちょっとかすっただけだから」というリネの腹には完全にナイフが突き立てられていた。ちょっとでもかすったでもない。明らかな重傷だった。

    「私の奴隷たちを逃がしてただで済むと思ったのか?」リネにナイフを突き立てた張本人たる男性がリネ、リネット、そして空たちを睨みつけていた。

    「どうしてこんなことを?」空がそう尋ねると、男性はふんと鼻を鳴らす。
    「私はかつてフォンテーヌ廷でも名だたる貴族だった。可愛い少女たちを鑑賞するのが好きで色んな家から養子としてもらってきていたよ。でも、突然知らない女性に私の家は破壊され私もこのメロピデ要塞へと収監されていた。私はただ少女たちをお金で買い取り、観察していただけだったのにどうして罪に問われなければいけないのか。そこがずっとずっと不満だったのだ。それで、ここ最近メロピデ要塞にも女の子たちが増えてきたからここで私の楽園を作ればよい、そう思ったのだ」
     空はリネに聞いた、かつてリネットが貴族に売られた話を思い出す。
    「同じ……人……なの……」リネットが絞り出すようにそう呟く。彼女は目をつむって完全に怯えていた。
     召使が助けたということは知っていたけれどこの貴族の行方は確かに知らないままだった。だが、まさかここで巡り会うことになるなんて。
    「お前たち子供が大人の遊びを邪魔するな。男に用はない。さっさとその娘を残して去れ。さもなくば、そのシルクハットのガキ以外に負傷者が出るぞ」
     空は剣を抜くと、男性の前に立つ。
    「やれるものならやってみろ。俺、これでも冒険者だからその程度のナイフなんてことないよ」
    「そうだぞ! 旅人はお前なんか目にないくらい強いんだぞ! 命が欲しければ降参するんだな!」とパイモンもふんぞり返る。
     しかし、ここで空とパイモンが見栄を張る必要なんてそもそもなかったのかもしれない。こんな不正をメロピデ要塞の管理者が許せるわけがないからだ。
     目の前で大きな音がしたかと思うと、その男性は気づけば壁に埋まっていたからだ。そこには鋭い眼光でその男性を睨みつけ、溢れる怒りをふつふつと滾らせている公爵リオセスリが立っていた。




    「おーい、公爵! そろそろ落ち着いたか?」後日、空とパイモンは執務室を訪れた。
    「ああ、あんたらか。例の罪人はこちら処理をした。リネットちゃんはトラウマがまだ残っているみたいでな、リネくん以外の男性に近づかれるのに怯えている。だから看護師長にすべて任せている。お前らもすぐ会うのは難しいかもしれないな……。それでリネくんだが」
     公爵は二人を呼ぶと、執務室の奥へと案内する。そこには医務室から運んできたのだろうか、ベッドが一つありそこにリネがいた。今はどうやら眠っているようだった。
    「女の子たちのケアがあってリネくんをあの場に残しておくことができなくてね。こっちで休んでもらっているんだ。彼もしばらくは安静にする必要があるが、多少話すくらいなら問題ない。挨拶していくか?」

     空とパイモンはリネの元を訪れる。彼は二人の気配に気づくと体を起こした。
    「やあ、最近どう?」彼は少し弱弱しかったが体に異常はないようだった。
    「オイラたちは元気だぞ。リネはどうだ? まだ体痛むのか?」
    「いや、もうほぼ完治してるよ。でも、一人で眠ってると色々と考えちゃうんだ」リネは天井を見上げる。
    「僕、ずっとリオセスリが敵だって疑ってた。でも、むしろあの人は僕のことを助けてくれたんだ。リネットたちを気遣って医務室からベッドも運び出してさ。敵だと思ってた相手にここまで助けてもらえたのが、なんだか悔しいんだ」
    「悔しい? あいつにありがとうって言えば済む話じゃないのか? それになんだかんだあいつもリネのこと気にかけていたみたいだし、これからは仲良くしていけばいいと思うぞ」とパイモンが明るく返す。
    「いや、なんていうのかな。ずっと敵だと思っていたからこそどう受け止めて良いかわからないっていうかさ。ありがとうって言いづらいんだよ」
    「うーん、そういうものなのか?」
     二人はリネと別れると、再度リオセスリの元へと戻った。
    「リネくん、相変わらずだったろ?」
    「うん、そうだね。まだ素直にはなれないのかな」そう会話をする二人にパイモンが首をかしげる。
    「うーん、お前ら何か通じ合ってるみたいだけどリネはなんであんなリオセスリに冷たいんだ?ありがとうって言うのはそんなに難しいことじゃないだろ」
     空はパイモンにそうだね、と返すと。
    「妹や弟を守らないとって責任から疑ってた相手に迷惑をかけてしかも助けてもらったなんてのを受け入れるのはプライドがまだ許せないんだよ」

     とはいえ、リネもそこまで長く引きずることはなかったようだ。後日、リオセスリから仰々しい謝罪を受けたと報告があったからだ。
     この時、果たしてあの公爵はどのような顔で彼の謝罪を受けていたのだろう。そんなことを考えながら空は生産エリアへと足を運ぶのだった。




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