「……楽しそうだな」
ふと、遊作が呟いた。
「それはだって、君もだけど彼女も彼も僕にとっては憧れのデュエリストだからね」
尊は笑った。
「もちろん勝負は真剣なんだけど、ずっと遠くにいた人と同じ世界に立てたのが嬉しかったのがある、かな」
デュエルが楽しかった。
負けられない勝負であったが、それは別として強い相手と、それもカリスマと呼ばれる人たちを相手にするのは心が躍る体験だった。
「――多分、なんだけど。そもそも、ここにいるのだけでも僕にとってすごいことだし、嬉しいことなんだ」
少し前までは、ずっと鬱屈したものを抱えたまま動き出せずにいた。ただ日々を無為に過ごし、しかし抱えたものをどうしたらいいのか分からずにいた。
不霊夢がやってきて、教えてくれた。
戦うということを――同じ立場にいながら、きちんと立ち上がり、前へ進み、ついには過去を打ち破ったものがいたことを。
(……遊作にはきっと、ずっと分からないだろうな)
それでいい、と尊は思う。彼は誰のためでもなく自分のために動き始めて、結果的に世界を助けた。尊が助けられたのは世界のおまけであって、だからそこに感謝や憧憬を抱くのも尊の勝手だ。分かってもらう必要はない。
尊の言葉に遊作は目を細めた。何かまぶしいものでも見るみたいに。
「怖く、なかったか」
主語のない問いだったが分かった。尊は首を振る。
「怖かったけど、今は大丈夫だよ」
そう答えると遊作はわずかに目を伏せた。
「――そうか」
尊は強いんだな、と囁く。