夜中に目が覚めた遊作の話 のおまけ*
悲鳴が聞こえた。
微かだが、聞き違えようはなかった。
了見は作業を中断してすぐに立ち上がった。音を立てないよう注意を払いながら部屋を出て、隣室のドアの前に立つ。
中の様子を伺うが、今はしんと静まり返っている。外の波音だけが微かに響く。
了見は小さくドアをノックした。
「──遊作」
客人の名を呼ぶが、返事はない。もう一度ノックするが何の音沙汰もない。
「開けるぞ」
言いながらそっとドアを開けて部屋を覗く。
室内は深夜の青い薄闇に覆われている。了見はそっと部屋に入るとできるだけ静かにドアを閉じた。
星明りの入る窓辺のベッドの上で、遊作は毛布に包まり身を縮めるように蹲っている。想像よりずっと状態は悪そうだ。
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