割れ鍋に綴じ蓋※了遊は両片想い
※当人たちは友達同士のつもりだが、頻繁に連絡取りあったり休みにちょいちょい二人きりで出かけたりで周りは付き合ってるみたいなもんじゃんて思ってる
※了見は出ません
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「なあAi、お前から見て俺はどうだ?」
「どうって?」
「普通の高校生だろう」
「……まあ名目上はな。それがどうかしたの?」
「了見と話していて気がついたんだが、あいつどうも俺が子供か何かに見えているみたいなんだ」
「んー? というと」
「まず、一緒に歩くとやたら車道側を歩こうとするから毎回場所の取り合いみたいになる」
「……そこ気にするんだ。ちなみになんで遊作は車道側をあるきたいわけ? 彼氏かなにか?」
「なりたいところだが脈がないからな。もう少し仲良くなってからの方がいい事くらいは俺でもわかっている。この辺はそう危ないこともないが、単純に俺がやりたいだけだ」
「向こうはなんか言ってんの?」
「自分の方が年上だからというんだ。たかだか二つなんて誤差みたいなものだろうにな。年長者らしくしようとするああいうところが案外了見は可愛いんだ」
「かわ……聞き間違いかな……いや、えっと、実際アイツ年上だろ」
「2つだけだ。あいつが学生だったら同じ学校に通ってる年だ、誤差だろう」
「誤差の運用間違ってない?」
「──それはそれとして『鴻上先輩』とか呼んでみたくはあるな。同じ学校か……」
「そういう妄想は聞いてないし」
「しかし逆に2歳下だったら、呼ばせたいな。『藤木先輩』……悪くないな」
「えっ怖……! どうしたんだよ遊作」
「怖いわけがあるか、了見だぞ? 今だってそうだが出会ったときなんて天使のように可愛いかった。正直、一緒に育ったスペクターが羨ましい」
「オレが怖いのは相棒の知りたくなかった一面なんだけど? 遊作ちゃんてばそういう妄想とかしちゃうタイプだったっけ……?」
「想像だ」
「同義だろ……いやこの話止めよ。それで、えっとなんだっけ。子供扱いされるって、他にもあるんだろ?」
「あとはやたらものを食べさせようとする。あれは何なんだろうな」
「遊作細いから太らせたいんだろ。ま、オレもそれはいいと思う」
「確かにあいつに比べたら背は低いかもしれないが、それだって比べてわかる程度の差だ。むしろ伸びしろがある分成人までには追い抜けると踏んでいる」
「どっちかというと厚みがほしいんだけどね」
「とにかく、あれこれ美味しいからと持ってくるのはいいんだ。年上らしく面倒をみたいの現れだろうと思うと可愛いが、食べてるとやたら満足げな顔で見てくるのが引っかかる」
「あー、うん。えっと、そこは庇護対象感あるな」
「おまけに、たまに手ずから食べさせようとしてくるから困る」
「食べさせ? あーんって? アイツが?」
「子供扱いするなと言うと、そういうつもりはないと言うんだ。となると他人に普通にああいうことをするということなんだろうがそれはそれでどうかと思う。上手いことを言って俺以外の相手にさせないようにしたいところだ」
「子供扱いされたくないら普通にやめるように言ったらいいんじゃないの? 遊作がヤダって言ったら聞くだろアイツ」
「嫌というか不服ではあるが、その、そういう時の楽しそうな顔は嫌いじゃないというか。だが他のやつもあれを見られるというのはな」
「あっそう……計算しなくても分かるんだけど遊作にだけだよそれ。だからそれなら、現状維持でいいと思うぜ」
「なるほど、あいつの周りで年下はスペクターくらいだし、スペクターはむしろ了見の世話をしたい側だろうからな。──ということはやはり子供扱いしてないか?」
「そうじゃないんだよなあ……。で、他にもまだあんの?」
「あとはそうだな、会った日の帰りはいつも俺を家まで送りたがって毎回揉めて困っている。小学生でもあるまいし」
「いや、前科考えると正直そこは仕方ないだろ」
「そんなに夜遅いわけでもないし、むしろあいつのほうが危ない。LVならともかく、現実では容姿がいいのなんて隠しようもないんだ、変なやつがちょっかい出すかもしれない。だからあいつこそ夜道をふらふら出歩こうというのは心配なんだが、俺が送るというと嫌がるんだ。それで揉める」
「……だから最近迎えにオレを呼び出すし、迎えに行くと向こうにもスペクターとか来てるわけかよ……」
「帰り道をふたりきりでというのが余韻があって良いんだが、揉めるよりはいい」
「そりゃ二人はいいだろうけどね?」
「とにかく、そんな感じであいつは俺を子供みたいに思っているようだし、ハノイのリーダーなんて長年やってるからどうも自分がしっかりしていて俺の面倒をみないといけないと思ってるフシがある」
「駄目だこれ色々全然伝わってないよ先生……」
「何をブツブツ言っている?」
「独り言。で、結局どういう話だったっけ」
「俺としては了見と普通に親しくなりたいが、子供みたいに見られているということだ」
「いやもうしょっちゅう出かけたり連絡したりで十分仲良くなってるし、別に仲良くなれるならなんでもいいんじゃない?」
「最初は俺もそう思っていた。だがあまりにもあいつは自分をわかっていない──いちいちやることが可愛いくせに全然自覚がない」
「……え?」
「だから、了見は可愛いくせに」
「まってえっと、ハイ? 可愛いって言った? 言い間違い?」
「可愛いだろ」
「……今までの所業、可愛くないところしか記録出てこないんだけど」
「おまえとアイツは色々あったからな。そこは仕方ない」
(いやたぶんその感想もつのって世界で遊作と三騎士だけなんじゃないかな……)
「例えばそうだな、俺にくれる菓子なんかは色々取り寄せたり試食したりして美味しいものを探してくれているみたいで、でも渡す時は貰い物だとか余ったとか言い訳するんだ。可愛いだろ?」
「何だよその曲芸みたいなツンデレ……ちなみになんで遊作は、そのへんの試行錯誤知ってんの」
「おいしいと喜んで色々聞いたら口を滑らせた」
「へえ珍しい。……いや、遊作喜んでるのに気を取られて油断したとかか……?」
「いつもかけてくる電話も、俺の時間があく頃合いを見計らってくれているようだ。忙しいだろうに俺のために俺に合わせてと思うといじらしくて可愛い」
「あれ絶対どうやってか遊作の行動監視してんだよな……オレにも方法分からない手段とってる執念怖い」
「最近で一番可愛かったのはあれだな、この前あったとき着ていた服がとても似合っていたから褒めたら、照れていたんだ。あの普段の笑顔とも違うあの顔、珍しいし本当に可愛いかった。お前にも見せたかった……いやだめだ正直独占したい」
「安心して見たいとか絶対言わない」
「そうかならいい。あとはこの前出先で──」
「いやもういい分かったわお腹いっぱい!」
「まだあいつの可愛さの十分の一も話していないが」
「ていうか大丈夫? 遊作は遊作でアイツのこと幼女か何かに見えてんの? きれいな顔してても中身はただのインテリゴリラだよ? 邪魔するもの全て効果で焼け野が原にした挙げ句ダイレクトに殴って来るパワータイプの殲滅者だよ?」
「おまえもおまえですごい言い草だな」
「リボルバーとハノイの塔でやり合ったとき、周到に逃げ道塞いで追い詰めてウッキウキでエクストラリンク決めてきたの忘れたの? あれがアイツの本質だぜ?」
「確かにあの時のリボルバーは楽しそうだったな。あんな状況だったが、だからこそ互いに全力でぶつかりあえたんだと思う。あんな風にリボルバーはどこまでも強くて信念があって敵に対して容赦なく格好いいのに、了見自身はあんなにも可愛いんだ」
「嘘だろ……」
「嘘みたいだ。俺もそう思う。だが現実に了見はあんなにも可憐で可愛い一面があると思うたまらない気持ちになる。あいつも男としての矜持があるだろうから、可愛いなんて感想は不本意だろうがな」
「それはものすごくそうだろな……」
「しかしおまえと話していてハッキリした。やはり了見は俺のことも自分のことも誤解している。次に会うときにはしっかり話をつけてくることにしよう」
「あ、うん」
「なんだその顔は」
「こういうのなんていうんだったかなーって考えてただけ。……とりあえず、オレは遊作が幸せならそれでいいかなって思ってるから」
「? そうか、ありがとう」
***
「例の件だが──どちらが可愛いかで了見とケンカになってしまった」
「そこで揉めるんだ……」