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    maybe_MARRON

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    付き合ってる2317
    久しぶりに短い話をば。一郎は相手の気持ちがわからない鈍さじゃなくて、自分の気持ちがわからない鈍さのような気がします。

    恋愛初心者 たぶん本気だったと思うんすよね、と一郎は組み敷かれたまま呟いた。戸惑いも嫌悪も浮かべていない、いつもと変わらない澄んだオッドアイ。いまいち感情の読み取れないその瞳に向けて、訝しげな視線だけを送る。
     視線の意味を正しく理解した一郎は、「朝の女性ひと」とだけ端的に告げた。左馬刻も思い出して、ああ、と息を吐く。
     こんな状況で他の女の心配をするとは、随分と余裕があるものだ。
     事務所に来る途中、「左馬刻サマって彼女いるの?」なんて言いながらするりと腕を絡めてきた女がいた。一応見覚えはあった。いつだったか、乱数と飲んだ日に途中から合流してきた女の一人だったような気がする。その程度の覚えしかない相手に彼女はいないが恋人はいるだなんて正直に答える義理もなく、「興味ねぇ」とだけ答えて視線を正面へと戻し、絡め取られていた腕は引き抜いた。
     それを見られていたのだと気づいた時には、もう一郎は背を向けていた。
    「……んで? 本気だったとして何だっつーんだよ」
    「……なんでもないっすけど」
     ふいと逸らされた視線に再び眉を顰める。何が言いたいのかさっぱりだった。
     少しだけ声を落として名前を呼ぶ。静かな部屋に響いた低い声は、普通の者なら目を逸らしたくなるものだ。だが一郎は違う。逆だ。小さくため息を吐いた後に、色違いの瞳がゆっくりとこちらを向く。居心地悪そうにしながらも、じっと視線が絡む。
    「……本当に、なんでもねぇんだって。別に嫉妬もしねぇし優越感あるわけでもねぇし、こんなもんかって……思って……」
     そこまで言って初めて、ふっと、男の表情に影が差した。
    「…………ただ……」
     薄く開いていた唇が閉ざされる。視線を外されたが、それでもじっと見据える。一言も拾い逃さないように耳を澄ます。小さく息を呑む音がした。
    「早く、こっち見ねぇかなって、思ってた」
    「…………」 
     拗ねたようなガキくさい声色に、言われた言葉の意味を理解するのが一瞬だけ遅れた。ようやく思考が追いついてからもどう返すべきか迷っていると、先に焦れたのは一郎だった。緑と赤が、再びこちらを見つめる。なんすか、と相変わらず何もわかっていない声で言うものだから、ついため息が零れた。
    「……バカな一郎クンに教えてやんよ」
     それを嫉妬っつーんだよ、と。思わず緩んだ口元を隠すために、唇を重ねた。
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