Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hankisamurijan

    @hankisamurijan

    はんきさ小説を投稿します。
    アップした作品にリアクションありがとうございます、とても嬉しいです☺️❤️

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    hankisamurijan

    ☆quiet follow

    区切りいいとこまで書いてた書きかけが出てきたのでアップ。続きは気が向いたら…
    最終回軸半+稀。ンマは過去軸の記憶持ち、稀は記憶なしです。
    若くで死んだ半の遺体を引き取りに、単身海外に行く稀の話

    #半稀
    semicircle
    #はんきさ
    halfDifference

    無題『親族全員死んでっからさあ、なんかあった時の連絡先オマエにしていい?』
     耳の奥で、軽い声がゆらゆらと鳴いている。
     気圧変化により閉じたままの耳管のせいで、ぼんやりとした音を捉えることしか出来なくなって久しい。実際には鼓膜を揺らしていないはずの低い声の方が、馬鹿みたいに鮮明に記憶と心を揺さぶっていた。離陸してから既に六時間は経過しているが、まだようやく中間地点といったところだ。到着までに長時間を要しはするものの、飛行機一本で行ける国に半間が滞在していた点は不幸中の幸いだった。
     特に旅行の趣味の持ち合わせもないオレが、わざわざ長時間のフライトに耐え海外に出るのはこれで二度目だ。仕事ならまだしも、両方とも半間絡みなのだから辟易する。
     ───辟易、とは違うか。さすがに。今回は。
     だが、なんと形容していいかいまだ分からない。感情の整理が追い付かず、ただやるべきことをこなしている。感情の整理どころか、今のところ何の感情も湧き切っておらず、整理のしようもないというのが一番近いのかもしれない。生まれて初めての経験だから、という衝撃はこの虚無感に関与していない、と思う。悲しんではいけないような気がしている。何故かは分からない。昔からそうだ。
     半間に対して湧き上がる感情は、いつも二分化していた。何故かオレを気に入り変わらず懐いてくる半間を嬉しく思う本音と、向けられる笑顔を完膚なきまでに跳ね除けたくなる衝動と。今回はそれら二つの両極端が激しく相殺し合い、結果攻撃的な衝動が全ての感情を叩き潰してしまったような。そんな気がする。
     それならどうしてオレは、半間を引き取りに単身アメリカに出向くことを志願したのか。自分のことなのに掌握し切らない不愉快と、黒々とした想いが胸を満たし続けていた。
     半間が死んだ。遠い異国の地で。
     三十五歳の早い死だったが、動揺はなかった。我ながら薄情だとは思うが。
     半間を東卍に引き入れる際に、彼の個人情報は粗方調べをつけていた。だから天涯孤独の身であることも知っている。割とハードな身の上にただの一欠片の憂いすら所持していないことも、長い付き合いで分かっている。だからこそ、自身に興味関心が薄い半間が長く生きないというのも、どこかでうっすらと分かっていたのかもしれない。
     見慣れない固定番号から着信が入った時の胸騒ぎは、三十年以上生きてきて初めて感じたものだった。そしてもう二度と感じたくはないと思う。本来なら縁遠いはずの外務省から電話が入った時、仰々しい発信元に動揺しなかったのは、海外で親族が亡くなると海外の在外交官を経由し外務省から連絡がくるということを知っていたからだ。緊急連絡先をオレにすると聞いた時に、その緊急連絡先がどう活かされるのか調べ得た情報の一つだった。活用法として最も最悪な選択肢を一等賞にブチかましてくるのは非常にアイツらしいが、伴った怒りをぶつける矛先はもうこの世にいないらしい。実感が薄いからか、その事実がとてつもなく不思議だった。
     半間の撮る写真は、まるで本人の性質かのように一貫性がなく、絶景等の美しい風景写真から凄惨な紛争写真など様々だった。紛争地域やスラムにも平気で踏み込んでいて、なんなら時々実際に厄介ごとにも巻き込まれ相当危なっかしい生活を送っていたにも関わらず、事件性はなく自然死だというのだからどこまでも飄々としている。普通にベッドに入り翌朝には死んでいたらしい。モーテルの従業員が第一発見者で、その男の証言は「あんまり安らかな顔してるものだからただ眠っているのかと思って起こそうと声をかけたが起きず、揺さぶってみようと体に触れた冷たくて、そこで亡くなってることに気付いた」だそうだ。
    『死亡連絡だったら骨は海に撒いてくれりゃいいからさぁ。海外から運ぶのダリィだろうし適当に焼いて適当に散骨して。あとは折角だから観光して帰れよ♡ 遺産の相続先オマエにしとくから♡』
     自然、眉が寄るのを感じる。ようやく一息ついたからだろうが、飛行機に乗ってからずっと半間の生前の言葉がリフレインしていた。別に思い出そうとしている訳ではないが、恐らく脳が勝手に状況に必要な情報を引っ張り出してきているのだと思う。
     適当に焼けるモンじゃねんだよ。国外で死にやがって手続きの煩雑さと手間と費用考えろテメェ。観光してる余裕があるかふざけやがって。こっち帰ってくる度タダ飯たかってくるわ居候決め込むわヒモ同然だったくせに遺産だと? よく言う。
     遺体は、防腐処理を施し日本に搬送する。現地で焼いて遺骨の形で連れ帰ることも当初は選択肢の一つとしていたが、却下となった。半間の死を周囲に知らせると、多くの人間が悲しみ手厚く弔ってやろうと言ったからだった。葬儀は、死んだ人間のためのものではない。遺された人間たちのための儀式だ。周囲の反応を鑑み、皆に見送ってもらう一日葬が釣り合いが取れていると判断した。「安らかな死に顔」とやらを世話になった人間に見せつけて旅立てよ。お互い死後の世界なんてまるで信じちゃいないタチだが、死後の世界があるとしたなら、半間はきっと友人たちの涙なんて意にも介さずもう既にあの世に行ってしまった後のような気がするが。
     いっそアイツの言う通り観光して帰ってやるか。そう考えたら少し気が抜けて、しばらく眠れていなかった分の眠気が思い出したように襲ってくる。到着まではまだまだ時間がある。上手く眠れる気はしなかったが、寝れそうなタイミングは逃さず掴み、ここから先の体力を確保しようと目を閉じた。
    『うーん。オレが死んだら分かんじゃね?』
     脈絡のない記憶が鮮明な半間の声を呼び起こす。それはオレが十代の頃、考えが読めない半間に何故着いてくるのかと聞いた時の答えだ。タケミっちと半間、この二人との出会いはオレにとっては未だ解せないものがある。出会いこそ別のタイミングだったが、初めて会った時二人ともがおおよそ初めて会う人間に対して向けるものではない顔をした。
     タケミッちは、どこかホッとしたような。今にして思えば迷子の子供を見つけた親のような顔をしていた。
     半間は───。泣きそうな、顔をしていた。迷子の子供が母親を見つけたかのような。当時から平均より随分高かった身長とその不安気な表情は酷くミスマッチだった。その後半間の人となりを知っていくに伴い、よりらしくない表情だったと違和感が増していった。
     二人ともに共通しているのは、その不思議な反応は一瞬で身を潜めたこと。次の瞬間には満面の笑顔に変わり、初対面の人間の平均的な挙動へと変化した。そのアクションに、言いようもない違和感と幾度となく重ねた慣れのようなものを感じ、オレの中に印象深く残っている。あれは、事前にオレを知っていた人間の挙動だと思う。何らかの理由で事前にオレについて調べた末の計画的接触だったのであればいっそ合点がいくのだが。タケミっちも半間も、そんな周到な用意が出来るタイプではないことを知っている。
     タケミっちは、誰に対しても郷愁を覚えるような目をしていた。だけど半間は、半間のあの───慈しむような目は。オレ以外の誰にも向けれず、ただひたすらにオレだけを追っていた。そう認めざるを得ない程長い間、ずっと。
     出会った最初から最期まで、結局ずっと読めない男だった。
    「分かんねェよバカ……」
     思わず溢れた独り言の語尾は眠気に飲まれて窄まり、視界は闇に溶けて消えた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏😭🙏👏👏👏👏👏💯🙏🙏🙏❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    hankisamurijan

    MOURNING相田さんの稀半敦本寄稿用に書いていたのですが、ハジメテの寄稿に気合いだけが空回りし長くなったので没ったやつです🤣
    明日のイベント参加される皆様たのしんでくださーい✨

    ※アッくんがとても可哀想
    ※キャバオーナー軸捏造
    ※アッくんに彼女がいる設定なのでモブ彼女出ます
     柔らかな春の記憶がある。

     花見の約束をしていた。
     仕事の都合で延期を重ねた約束が果たされた日、桜の見頃はとうに過ぎ、訪れた桜の名所の地面は散った花弁で埋め尽くされていた。
     早朝からはりきって弁当を作ったと嬉しそうにしていた恋人の姿を知っているから、敦は彼女に声をかけることが出来なかった。どう謝るべきか模索している敦を尻目に、彼女はピンク色に変貌した地面にそっと踏み込み、そして腰を落とすと花弁を手のひらに掬う。勢い良く振り返り敦を見上げた彼女は、満面の笑みを浮かべ「ふわふわしてる!」と、嬉々とした声をあげた。
     思わぬ反応に敦が何も言えずたじろいでいると、立ち上がった彼女は手を出すように命じてくる。困惑したまま敦が指示に従うと、彼女の両手いっぱいに積み上がっていたピンクの花弁をめいっぱい乗せられる。確かに、ふわりと柔らかかった。
    16018

    related works