ヴァンパイアパロの紅千の千秋誕。『現代軸』吸血鬼紅郎×人間千秋
○ほぼ不死の吸血鬼紅郎と人間千秋で同棲してる。
〇前世で恋人だった吸血鬼紅郎と人間チアキ
○千秋に前世の記憶は無い。
『なぁ、…毎年お前が俺の誕生日を祝ってくれ!約束だ』
暖炉の前に並べたケーキを眺めながら言う彼。こちらを見ている彼は嬉しいはずなのに泣いていた。そんなに泣くなよ。いい記念日なんだろう?何千回だって祝ってやるさ。といえば『そんなに、長生きできないぞ』と笑ってケーキを一口食べた。
なんで、あの時一緒に生きてくれって言えなかったんだろう。でもそれをお前が望んでなかったから俺はそれを飲み込むしか出来なかった。でも、俺はお前の傍で隣で何千回だって祝ってやりたかったよ。
「…ちあき」
「夢の中で俺に意地悪でもされたのか?」
顔をのぞき込む彼の姿。匂いが違うけれど同じ顔のそれ。
ぼんやりと彼の顔を見つめていれば彼の指が目尻をなぞると水滴がそちらに移る。自分が泣いていたと解り恥ずかしさとみっともなさで頭をかいた。
いつの間に千秋の膝の上で寝たのかと横を見れば、ローテーブルには食べかけのケーキと大皿に鶏肉の骨と乱雑に置いたフォークが見えた。
そして飲みかけのワインも。
「あ〜わりぃ飲みすぎて寝ちまってた」
「キッチンから戻ったら、紅郎が転がってたからびっくりしたぞ。珍しいなそんな酔うなんて」
いつも介抱される側だから新鮮だったと笑う千秋。その笑う顔を指先で撫でる柔らかくて生きた人の素肌。温度。ちあきだ。俺の愛した人。
「…千秋、誕生日おめでとう」
「ふふ、たくさん言ってくれるんだな。嬉しいけれど段々照れてしまうな」
赤くなる頬がじんわりと熱を持つ。膝枕は名残惜しいが起き上がり肩を引き寄せて抱きしめた。あの頃と違う無垢な顔して俺を見る千秋。
あと何回、お前に伝えられるだろうか。
「毎年祝ってやるよ…何千回だって」
「ふはっそんなに長くは生きれないぞ」
また、あの時と同じセリフを言って笑う千秋の笑顔を見れて、なぜだか俺が泣いてしまった。俺を見て慌てる千秋をなだめながらその口にケーキを一口放ってやる。クリームをつけて咀嚼して幸せそうな千秋を見て、変わらないななんて思ってしまった。
なぁチアキ、あの時お前が嬉しくて泣いた訳が今になってわかったよ。
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