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    shiro_sou46

    @shiro_sou46

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    shiro_sou46

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    付き合いの長い🐯🌸
    何かで弱った🐯を、🌸がしょうがないなと甘やかす話。
    お酒は次の日に持ち越しになりました。

    お前の事を考えたら俺はどうでもいいので「あぁ〜〜〜〜薫、ちょっとだけ」
    「あっ……お、おいなんだ重いぞデカゴリラ……ッ」
     俺がこの図体のデカい筋肉ゴリラのソファで、のんびりとタブレットを弄り寛いでいたところだった。背後から声が聞こえたと思ったら、この男はすぐにこちらへ移動してきて空いた右隣に座ると、そのまま俺の膝へと頭がダイブして来たのだ。そして顔を俺の腹に押し付けるように埋まると、巻き付くようにその自身の太い腕を俺の胴体へと回した。俺はと言うと、がっしりと抱き着かれて固定され、その場から身動きが取れなくなってしまった。
     今日はいい酒が入ったからと虎次郎に自宅へ招待されていた。俺も明日の仕事は午後からであったし、特に支障は無いだろうと、二つ返事で了承し、身支度を整えた後に足を運んだのだが。
    「……すぅ」
    「おいどさくさに紛れて俺の体臭を許可無く吸うな。この駄目ゴリラめ」
     ドス、とこの筋肉で固められた背中に拳を振り下ろすが……まぁ当然効く筈も無く。
     俺はタブレットを持った手とは反対の手で、おもむろにわしゃりと虎次郎の頭を撫でた。
     風呂上がり、一応適当にドライヤーである程度は乾かしたのか湿ってはいるものの、濡れる事は無かった。鼻息で徐々に腹部が生暖かくなってくる。
    「……おい」
     俺は埋まる虎次郎に再度呼び掛けた。すると心なしかまた腕に力を込められた気がして、その様子に思わず溜め息が零れる。
     タブレットの電源を落とし目の前のテーブルに置くと、空いた方の手は虎次郎の肩に添えた。
    「抜いてやろうか?」
     俺がそう言うと、腹の男はぴくりと反応を示す。
    「手でもいいが……口の方が手っ取り早いか?」
    「…………は?」
     俺は何でもないようにつらつらと言葉を並べていると、ようやく男はこちらに視線を向けた。僅かに髪の間から覗いた視線は訝しげに細められる。まるで真意を探るような目つきだ。
    「何だ冗談だとでも思っているのか? 安心しろ。俺から離れたら今すぐにでも咥えてやるよ」
    「いや別に……お前がこういう時にそういう冗談言うヤツじゃないの知ってっし」
     虎次郎はようやく回した腕を解くと、くるりと仰向けになって顔をこちらに向けた。眉根を顰め、ジトリとこちらを見つめてくる。
    「何だその腑抜けた面は。不細工ゴリラになっているぞ」
    「ってか何で急にそんなこと言い出したんだよお前は」
     俺の嫌味には一切乗らず、虎次郎は疑問を投げてくる。なかなかの重症である。
    「別に深い意味は無い。そうした方がいいかと思ったから、そう言っただけだ」
     言いながらすり、と顎を撫でると膝の上で虎次郎は擽ったそうに首を竦めた。
    「嫌なこと、ムカつくこと……落ち込んだ時でもいい。その煩わしい感情を手っ取り早く忘れる手段の一つを俺は提示したに過ぎない」
    「お前って気遣いの方向がかる〜く飛んでんだよな……順序って言葉知ってっか?」
     小馬鹿にされたような気がしてムッとするが、この状態の筋肉ゴリラと言い合っても張り合いが無いだろう。それは本位ではない。
    「俺の頭は常に効率の良い、最善の方法が優先して導き出される。頭の回転が悪い類人猿とはまず根本的な造りが違う」
    「はいはい先生の言う通り、比べてこっちは頭悪いんで過程すっ飛ばして本ちゃん言われても分からねぇっつうの。だから……」
    「結論から言えば、俺はお前とのセックスが好きだからだ」
     言い募ろうとした虎次郎を遮り、俺は鼻を鳴らした。
     当然、虎次郎は俺の言葉に大きく目を見開いている。
    「俺も人間だからな。嫌なこともムカつくことだってごまんとある。最初はどうしたもんかと苛立つだけだったが……でもふと気付いた。そんな時、お前に会って、セックス出来ればどうでもよくなってくるってな」
     俺は瞼を閉じる事で虎次郎から視線を切り、身体を背凭れに預けて天井を見上げた。脳裏に浮かぶは他愛も無い、こいつとの日々。
    「勿論気持ち良いから好きでもあるが……特にお前が俺を、必死に抱いてる時の顔が好きだな。名前呼びながら忙しなく色んなとこ触って、奉仕するだろう? 全身で俺を一生懸命愛そうとするお前が、とにかく不思議と見ていて、可愛いらしいという気持ちに俺をさせる」
     虎次郎の柔い癖っ毛をくしゃ、とまた撫でながら口元を緩めた。
    「だからどうでもよくなってくる。他人や自身にそんな感情を抱く暇があったら、お前の事を考えてた方がいくらかマシだと気付いた。例え見た目が可愛くも無い逞しく鬱陶しいゴリラであっても、あの時ばかりはただの一匹のゴリラとして愛でていられるからな」
    「……さっきから俺は、ゴリラじゃねぇっての」
     虎次郎はその言葉と共に、ようやく起き上がった。その背中を見ればのっそりと、まるで熊のようだ。
    「じゃあなんだ? ……ああ、我儘なヤツだな。こう言って欲しいのか? マイダーリン?」
     言葉にどことなく含めてその背中に掛けると、虎次郎は後頭部を掻きながら低い唸り声を漏らした。相変わらず分かりやすい男だ。
    「はぁぁ〜…………ずりぃよ」
    「聞こえねぇよ。なんだ?」
     ぼそぼそと呟かれた言葉に片眉を上げると、虎次郎はゆっくりとこちらを向いた。
     怒っているような、それでいて照れてでもいるような……なんとも言えない表情で真っ赤に染まっていた。風呂上がりだから、という訳でも無いだろう。
    「お前さぁ……常にそんな事思いながらセックスん時俺の事見てたワケ?」
    「さぁな? その答えが気になるなら、今だけ試させてやってもいい」
     指先でこの男の顎をなぞるように一撫でし、ずいっと顔を近付ける。そして真正面から虎次郎を射抜き、ニヤリと笑ってやる。
    「するのか、しないのか……二つに一つだぞ? 虎次郎」
     顎からそのまま滑らせた人差し指で虎次郎の唇を撫でると、男の瞳がガラリとその色を変える。凪いだ海のような静けさから、本能のまま猛る獣のような、情欲を孕んだ熱い色へと変化した。
     ゾクゾクと、背筋を期待が這い上がるのを感じてたまらなくなる。俺への執着を惜しみも無く剥き出しにした色男は、この世の誰よりも可愛く感じた。
    「ッ……ここまで言われたらす、るに決まってんだろっ……!」 
     俺の煽っていた手は、この男の節々のしっかりとした熱い掌に絡め取られて、引き寄せられた。さらに近付いた虎次郎に、そのまま唇を噛み付かれる。半ば強引にぬるりと侵入してきた舌に誘われるまま、絡め取られて、啜られて、ざらりと撫で上げられる。
    「ふはっ……お前はそのぐらいっ、ン……単純でいい。そっちの方が、俺好みだぞ……?」
     俺は虎次郎が一通り味わい離れたタイミングで息を整えながら笑い、軽く握った拳を厚い胸板に向かって突いた。
     虎次郎は対して悔しそうに歯を軋ませていた。
    「ああもうっ! 俺お前より駆け引き上手いと思ってたんだけどっ」
    「そんなの、いちいち考えているから負けゴリラになるんだ。お前が自分で言ったんだぞ? 人生はノリと強引さが必要だとな」
    「ちくしょう……その余裕、今に見とけよ? その達者なお口が可愛い鳴き声しか出せないようにしてやるからな」
     虎次郎は俺を引き起こすと、視線で寝室へと促してくる。
     俺はそれに対して仕方が無いと鼻を鳴らしながら頬を緩めて返事とした。
    「さっきまで泣き虫ゴリラだったクセに。お手並み拝見だな」
     俺は結んでいた髪を解き全てを後ろに流すと、虎次郎に次いでリビングの照明を落としてその場を後にした。
     このゴリラが次の日には何事も無くケロッとしていたのは、ここで言うまでもない。
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