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    utusetu4545

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    カガミ×うちハン♂(セツ)のお話。2人の出会い編。

    #カガミ
    #セツ
    cetsu
    #うちのこ
    myChild

    白銀の中、タンスープ「まずいな、吹雪が激しくなってきた」
    寒冷群島での任務を終えたカガミは、思ったよりも時間がかかり、予定外の吹雪に見舞われてしまった。
    「吹雪が止むまでキャンプに留まるしかないか」
    カガミは急いで近くのサブキャンプに向かった。

    「まずいな、誰かいる」
    サブキャンプから光が漏れている。同じように遭難したものが吹雪のせいで足止めを食らったのだろう。
    仕方ない、吹雪が止むまで邪魔させてもらう。そう、そう言えばいいはずだ。
    息を整え、キャンプの外から声をかけようとしたら、内側から唸り声がした。
    (人間じゃない、ガルクか?)
    最近、王国でもガルクを伴った狩りが定着するようになったと聞く。とすると、中にいるのは王国のハンターかもしくは…。
    「どなたですか?」
    テントの中から男の声がした。猫の声も混じる。アイルーか。
    「怪しいものじゃない、ハンターだ。吹雪が止むまで、邪魔をする。入れてくれないか」
    心の中で練習したセリフを言う。他人と話すのは久々で緊張していた。
    「どうぞ」
    テントの中から声がした。
    「あっ」
    「ん?」
    中に入ると同時に驚いた声を出された。何事かと中にいるハンターを見るとカガミもまた驚いた。自分と、瓜二つだったからだ。

    「アルビノ?」
    「はい、生まれつき身体が白い体質なんです。だから髪の毛も肌もみんな白くて」
    ハンターはセツと名乗った。彼もまた狩猟に来ていたが、突然の吹雪に見舞われここに避難していたらしい。
    カガミは己のことをただのハンターだと名乗った。仕事関係者でもない相手に、王国の諜報部隊隊長などという肩書きを名乗ったところで、得することはほとんどない。必要以上に警戒されるか、嫉妬されるか、擦り寄ってくるか。いずれにしてもロクなことはない。だから、今回も行きずりの相手に自分が何者なのか明かすつもりはなかった。
    カガミはずぶ濡れになった上着を掛け、火鉢の前に腰を下ろした。温かい。冷気で感覚の無くなった指先がじんわりと温まっていく。
    「カガミさんも同じ体質なのかと思ったんですけど」
    「いや、俺は違う」
    白い肌、白い髪、同じ髪型。一目見た時には共通項が多く瓜二つかと思ったが、よくよく見るとセツは眉毛やまつ毛まで白く、顔立ちも幼い。一方カガミは眉毛とまつ毛は黒い。
    「光に敏感だったり肌が焼けやすかったりはしない」
    「そうですか…」
    それはそうか、とセツはオトモのアイルーと苦笑していた。アイルーの他にガルクもテント内に連れてきていた。奥にはフクズクもいた。
    「他には」
    「えっ」
    「ほかには、いないのか。ハンターは」
    「えっと、一緒に狩りに来てるハンターはいないのかってことですか?」
    「ああ」
    「いえ、俺だけです。今日は修行のつもりで来たので」
    内心ほっとした。他にもハンターがいるとなると、気まずくなる。
    「ボク達もいい修行になったニャ」
    「助かったよ、おゆき」
    おゆき、と呼ばれたセツのオトモアイルーが頭を撫でられて気持ちよさそうにしている。それを見たオトモガルクが自分もと見つめて身体を擦り寄せた。オトモ達との信頼関係は厚いらしい。一人きりで狩りをするカガミには縁遠い光景だった。
    「カガミさんもおひとりで?」
    「ああ」
    「オトモは連れてないんですか?」
    「ああ」
    「そうなんですね、すごいな」
    「昔からそうだったから、1人で狩るのは慣れている」
    「へえ」
    「…」
    「…」
    沈黙。ああ、これだ。人と話す時この間が往々にしてできる。この間が気まずい。カガミは1人を好むあまり、誰かと時間を過ごす事が苦手であった。
    これが諜報員としての仕事であったなら。情報を引き出すために話題を考えられるのだが、ただの雑談が出来なかった。仕事が絡まないのであれば、相手を知る必要は無いし、こちらの情報を出したところでなんの得がある、と思うと何も言えなくなる。
    役に立たない雑談だからいいのだ、と人は言うが、その意味がカガミには分からなかった。
    このハンターも可哀想に。俺と居合わせたばかりに気まずい空間に押し込まれてしまった。
    さっさと備え付けの布団にでも被って寝てしまおう、そう思った時、セツからなにか差し出された。
    「あの、もし良かったら、これお飲みになりますか?」
    「なんだ」
    「生姜とハチミツを混ぜた飲み物です。これを飲んだら温まります」
    セツがかき混ぜている鍋からはふんわりとハチミツの香りがした。
    「ボクたちも飲んでるニャ。美味しいニャ」
    オトモアイルーがそう言ってカップを煽った。ぷはぁ、と飲みきったあと満足気な顔をしている。どうやら毒は無さそうだ。
    「もらおう」
    カガミは自分の携帯している空の瓶を出した。調合用に使うものだが、諜報活動中には飲み水を携行するためにも使う。次がれたものを一口飲むと、甘いハチミツの風味がとろりと口の中で溶けていった。あとから来るぴりぴりとした辛味と苦味が生姜だろうか。
    「…うまい」
    「良かった」
    寒さに耐えてきたカガミに嬉しい温かさだった。身体の奥からじわじわと温まってきた。
    「旦那さん、お腹減ってきたニャ」
    「そうだな、夕餉にしようか。カガミさんも一緒にいかがですか?」
    いくら非常時とはいえ突然転がり込んだ上に飯まで馳走になるわけには、と遠慮しようとしたら腹の虫が鳴いた。
    「…」
    バツが悪く黙っていると笑われた。
    「ふふ、用意しておきます」
    「なら、せめて手を貸そう」
    「お疲れでしょうし結構ですよ」
    「世話になりっぱなしというわけにはいかない。おかげで身体は温まった。手伝いぐらいわけはない」
    流石に年下のハンターに何もかも世話になるというのは情けない。食い下がると、じゃあお言葉に甘えて…とセツが折れた。

    「あ、そう言えばカガミさん苦手な食べ物ってありますか?」
    セツの指示通り、香草を刻んでいる時に声を掛けられた。
    「いや、ない」
    「そうですか、なら良かった」
    セツはキャンプの外の雪山から肉の塊を持ってきた。
    「なんだそれは」
    「ポポノタンです。食べようと思って下処理してました」
    ちょっと多めに作っといてよかったな、とセツは肉塊を2つ取り出していた。
    「下処理」
    「はい。ここ数日泊まるかなと思って、蓄えを」
    「泊まり込むほどの大物相手にしてるのか。制限時間があるだろう」
    「え?ああ言ってませんでしたっけ、俺採取ツアーでここにいるんです」
    「採取ツアー?修行じゃなかったのか」
    「修行ですよ。ツアーの間は何度倒れても問題ないし時間制限もないので、修行にもってこいなんです」
    修行の時はいつも泊まり込みだから、最低限の調味料とか持ち込んで、現地でご飯調達するんです、とセツは話した。
    「最近マスターランクのモンスターを相手にするようになったので、少しでも慣れておきたくて」
    「そうか」
    持ってきたポポノタンを薄く切り、塩コショウをかけて油をひいた鉄鍋の中へ入れる。ジュウと音を上げて香ばしい香りと共に焼き目が付いていった。
    「イカダガキも取ってきてたニャ、あれは食べないのニャ?」
    控えていたセツのアイルー、おゆきが口を出した。
    「イカダガキかぁ、今当たると怖いなあ」
    「ダメニャ?」
    「帰ったら食べよう、な?」
    イカダガキ。以前諜報活動でしばらく何も口にしてなかった時、久々に食べたら絶品だったのをカガミは思い出した。
    「イカダガキか…。あれは、美味い。焼いてレモンを垂らしたら、美味かった」
    過去を思い出してぽつりと言ったら、おゆきに聞かれた。
    「ほらニャ!美味しいのニャ!絶対食べたいニャ!」
    「美味しいのは分かってるって。でも今誰か食あたりおこすと辛いぞ」
    「当たると、辛い。あの後は思い出したくもないな…」
    イカダガキ暴食後の食あたりを思い出し、カガミは項垂れた。
    「ほら!」
    「フー!」
    2人と1匹のやり取りを見ながら、オトモガルクは暖気と香ばしい匂いに包まれながらくあ、と欠伸をした。

    焼きあがったタンと、タンと香草を煮込んで作った汁物が夕餉となった。
    「いただきます」
    セツが手を合わせて食事の前に一礼した。カガミは確信した。こいつはカムラの里の出身だ。
    「美味しいニャ〜」
    「うん、上手く味が整ったみたいで良かった」
    カガミも一口汁物を啜った。香草で香り付けされた汁物は、塩しか調味料は使っていないはずなのに、タンからの出汁や香りのおかげか味が複雑な味わいに感じられる。寒い中ホカホカと温かいものを身体の中に入れると、何倍も美味い。ぷりぷりとしたタンの塩漬け肉も、いい塩梅だった。
    「ああ、美味い」
    ほう、と息をついて独り言を漏らすと、聞こえたらしいセツがにこにこと笑った。
    「出来たら白いご飯が欲しかったニャ」
    「もう、言うなよ。恋しくなるだろ」
    タンをモグモグと噛みながらおゆきがひとりごちると、セツがむくれた顔をした。
    「じゃ帰るニャ?」
    「いいや、ダメだ。イソネミクニやベリオロスとの戦い方を把握してからじゃないと」
    「白米とはしばらくさよならニャ…」
    おゆきが項垂れた。
    「おい」
    突然カガミに声を掛けられ、セツは少し驚いた。
    「はい」
    「ベリオロスとイソネミクニで苦戦してるのか」
    カガミが尋ねると、セツはバツの悪そうな顔をした。
    「上位の個体とは動きが違ってて、つい避けきれなかったりするんです。だから、今回の修行でそれを克服したくて」
    「そうか」
    カガミはしばらく考えると、セツに向き直った。
    「セツ、明日晴れたら一緒に行くぞ」
    「えっ、行くってどこに」
    「ベリオロスとイソネミクニと渡り合いたいんだろう。俺が教えてやる」
    一宿一飯の恩を返すにはこれしかない。このお人好しで真っ直ぐな後輩ハンターにしてやれることは、少しでも生存率をあげさせることだ、とカガミは考えた。
    「ええ!?でも、カガミさんのクエストは…」
    「俺の方はもう終わった。帰りの船を待つだけだ。どうせこの吹雪が止んでしばらくしないと船は来ない。その間なら手を貸せる」
    突然の申し出に戸惑っているセツたちに、カガミは自身のマスターランクを告げた。
    「すごいニャ!ちゃっちゃと教えて貰ってさっさと帰るニャ!」
    「ふ、俺も手を貸してやるから、早くオトモアイルーに白飯食わせてやるんだな」
    はしゃぐおゆきを見て、カガミはつい笑みが零れた。見知らぬ誰かといてこんなに居心地がいいのは、いつぶりだろう。
    「そんなすごい人に手を貸してもらうなんて、いいのかな…」
    そんなにすごい人なら、きっと忙しいだろうに。頼まれるクエストが山ほどありそうだ、とセツは言った。
    「一宿一飯の恩を返すにはこれしか思いつかん。それでも気後れするなら、また会った時に飯を食わせてくれ」
    そう言ってやると、セツは、小さく頷いた。
    「本人もこう言ってるんだし、大先輩の胸を借りれば良いんだニャ」
    「こら、おゆきの立場で言うことじゃないだろ、それ」
    「大先輩、か…ふふ」
    知らず放ったおゆきの言葉がおかしかった。俺がカムラの里の出身ハンターだと知ったら、こいつらはどんな顔をするのだろう。
    「カガミさん?」
    「いや、なんでもない。セツ。お前の得物はなんだ。俺は双剣なんだが…」
    明日の修行のため、まずはこいつと狩猟について計画を立てよう。カガミは自分でも驚くほど、目の前の後輩ハンターのことを気に入ってしまったのだった。

    おしまい
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