ベランダで花火を見る話今日はアヒージョの日だ。
私は七海が丁寧に作るアヒージョが好きだし、七海はアヒージョそのものが好きだから二人ともいつもより少しご機嫌になる。白ワインと一緒にアヒージョを楽しんでいると遠くから爆発音がした。顔を見合わせ窓に近付く。帳は下りていない。あれほど大きい音が鳴る爆発を起こせるような呪霊に心当たりはない。高専が把握していない呪霊か、呪詛師が何か仕掛けたのか……。窓から見える範囲に呪霊はいないけど、遠くからそんなものを判断出来るのはきっと五条くらいだ。緊急要請に備えて脳内で身支度を始める。うん、洗濯中のものは特に無いしすぐ問題無く出勤出来るだろう。
そのまま見渡していると夜空にパッと花が咲いて爆発音が鳴り、ああ花火だったのかと気付いた。ホッと肩を撫で下ろす。
「見る?」
「良いですね」
少し多めに注いだワイングラスを手にベランダに出て、ステンレスの手すりにもたれかかった。少し冷たくて、気持ち良い。
「そんな格好で外に出ないでください」
「皆花火しか見てないよ」
確かにこの黒いキャミソールはもしも今から外出するなら迷わず着替えるけど、ベランダに出ることさえ躊躇うような露出度ではない。なんの変哲もない普通のキャミソールだ。それを『そんな格好』呼ばわりなんて失礼な奴。
コクリとワインを飲んで、深く息を吸う。少し湿っぽい空気、汗ばむような気温、花火。夏だ。
「丁度見えるところで良かった」
「花火、好きなんですか」
「人並みに」
また、ドンと音がなる。パラパラと続くあの音は何の音なんだろう。これは何花火なのかな。そういえば去年はこうして遠くから見ることも、手持ち花火をすることも無かったっけ。七海が私の真後ろに立って、まるで私を囲い込むかのように手すりに手を付いた。抱き締められているわけじゃないけど、右にも左にも七海の太い腕があるし背後には服が擦れるような距離に七海がいるしギリギリ暑い。
「そんなとこで花火見えるの」
「ええ」
「暑いんだけど……」
するすると伸びてきた手が下腹部と肩をぎゅうと抱き締める。こいつ私の言葉が聞こえなかったのか。肩を掴む七海の手の熱が素肌へとダイレクトに伝わる。暑い。七海のキスマークのことを虫刺されだなんてベタに誤魔化したことをふと思い出す。案外七海にも虫除けスプレーが効くんじゃないかな。スプレーしておけばよかった。持ってないけど。
熱源を意識から追い出して、絶え間なく咲き続ける花火を眺める。せっかくならもっと近くで観たかったな。もしまだ他に花火大会があるなら近くまで観に行くのもアリかもしれない。後ろの熱源は誘ったら一緒に来てくれるのかな。すん、と私の髪に鼻を埋めているのであまり興味が無いのかも。セフレらしからぬ七海の奇行にもすっかり慣れた私はコクリとワインを飲む。
「七海は花火好きじゃない?」
好きじゃないなら絶対誘わない。好きならたまには誘ってみるのもいいかも。あーでもなんだかんだ硝子を誘う気がするな。
耳の上あたりにあった顔がするりと移動して耳元に唇が寄せられた。そして、花火の合間にそっと囁く。
「好きですよ」
ゾクリと肌が粟立った。何、何、何。急に何。ああ、花火が好きか聞いたんだっけ。びっくりした。余りにも甘ったるい声で囁くから、なんかこう、別の意味かと思ってしまった。誤魔化すようにワインを一口。あ、ハート型の花火。
「そうは見えないけど」
「……」
背中がじんわり汗ばんでいる。七海は暑くないのかな。花火を観たいのに、暑くて仕方ないから涼しい部屋に戻りたい。熱源がくっついてなかったらここまで汗ばむことはないんだけど……。部屋にいる間はこんなにくっついてなかったじゃん。いい加減暑いから離れてと言おうと少し振り返ると、肩を抱いていた手が頬を覆った。覗き込むように顔を寄せた七海から逃げるよりも早くふに、と唇が重なった。伏目がちな七海と目が合っている。また花火の音。そして、リップ音。身体ごと顔を遠ざけて二回目から逃げようとするのにそれを良しとしない七海の口にワイングラスを当てた。大人しく受け取った七海がワインを飲んで、ベランダのテーブルにコトンとグラスを置く。そしてまた顔を寄せて来る。いつも以上に固く結ばれた唇。あ、これ口移しされる!
「違、そういう意味じゃ……んぅ、」
後頭部を大きな手の平で覆ってぬるりと舌を這わされて早々に抵抗を諦めた。今の振り返るような体勢は首が痛いのでもぞもぞ動いて正面から向き合うと、熱くて太い腕が背中に回った。そのままぐっと抱き寄せて流しこまれるワインをこくこくと飲み下すと、案の定ぬるりと舌が入り込んでくる。ぞくぞくと背筋を走る甘い痺れに流されて舌の侵入を許した。七海の顔が傾いて奥まで舌が入ってきて、有無を言わさず流しこまれる快楽で声帯が震える。逃げる舌をべろりと舐めて、はぁ、と熱い息を吐く七海は花火なんてちっとも見ていない。腰をするすると撫で上げてまた唇を重ねて執拗に舐ってくる舌に、甘噛み。ぴくりと身体を震わせて舌が出て行った。銀の糸で繋がっている二人とも少し息が荒い。ああもう、身体が熱い。
「背中の湿度凄いですよ」
「誰のせいだと思ってんの」
「部屋に戻りましょうか」
「……ん」
「キャミソールでベランダに出るよりも、ベランダで長くて甘ったるいディープキスしてる方がよっぽど問題だと思うよ」って言ったらどんな顔をするんだろう。明日起きたらすぐ言ってみようと思う。
◎かつて上げた悲鳴
エッ?…………何この………………えっ?…………"""愛"'"…………………なん……えぇ………愛だ………めちゃくちゃ愛…………スゥ─────…………ハァ──────……………ワァ…………やっぱり夢じゃない……待って………無理………しゅき……………何…………えぇ………………愛の塊………………助けて………………………
どこから息を荒げたらいいの!?!?ってくらい興奮ポイントが多くもはやどれに触れたらいいのかわかりません……………まず第一に『私の作品を読んでこんな素敵な絵を描いて贈ってくれるひとがいる』この事実が私の胸をぎゅうぎゅうと握ってあと少しで潰れてしまいそうです………大好き……………
矢印♡の数がもう既に最&高です………………険しい顔して表情にこそ出してないものの矢印が『すき♡』『だいすき♡』って言ってる……聞こえてくる………………なんて愛おしい男………これたぶん周囲には見えてるんだろうなぁ…………ハグこそせずともバレバレなんだから…………硝とか猪とかに(めっちゃハート出てんなーなんで気付かないのかなー)とか思われてんだろうなァ…………………夢主だけが気付かない………………お顔とお顔の間にも♡があってきゃわ……………こんなのもうキスじゃん……………唇くっつけてないだけでキスでしょ………………でも夢主からは一つも♡出てない……………6vs0……………100vs0も6vs0も同じ…………相手が0なら同じこと……………愛い……………愛いよ…………………そうこれぞ土足厳禁…………………
腕の位置が独占欲滲み出てて愛おしいったらない…………こんなの逃げられない…………拘束に近い………………ぎゅっ♡と抱き締めた上で直立ではなく身を乗り出して覗き込むような位置で夢主ちゃんを凝視しててもう本当にめちゃくちゃ好きじゃん………………一挙手一投足を間近で見ていたいのかな……………スリスリ♡とかちゅっちゅ♡とかするのではなく、【凝視】………………も〜全身全霊でだいちゅき♡って言ってる…………それに対して夢主は軽く振り返ってるだけっていうこの差があまりにも土足厳禁…………………さすが…………さすがの解像度…………!!!!!
これどんな状況なんですかねぇ…………🥰🥰🥰🥰🥰🥰🥰🥰🥰七がラフな格好だし七宅かな…………お家夢主の背後を取るなら料理中かな……………夢主が二人のご飯の準備してるところにスタスタやってきてハートいっぱい飛ばしながら独占欲剥き出しハグ♡する七海建人いっっっとおしい……………「いま包丁使ってるからやめて、動きにくい」「邪魔はしません」「動きにくいんだってば」「……」「無視すんな」「……では交代で」「ん、わかった。じゃあ私は炒め始める」「交代と言ったでしょう。今私は何をしていますか」「七海が切るなら私が炒めたらいいじゃん、離して」「……」「このっ……くそ、料理中の力じゃない……っ」とかそんな会話が聞こえてくるようですわ…………ワァ七さんってば好きで好きで堪らないんじゃん………なんちゅう愛妻家………えっ?結婚していない?……あじゃあ彼女大好…………えっ付き合ってもない?え?これで?そんなわけ………えっ?本当に?
そして体格差ァ…………………男性の中でもとりわけガッチリしたガタイのよい男が自分より小さくてどうとでも好きにできるような女に【恋愛感情】で骨抜きにされて手綱を握られているのめっっっっちゃくちゃ癖です………………あっもしかして凝視は凝視でもキス狙ってるのかな………あーっ!今!男らしい右腕で夢主の顔をクイと自分の方に向けてむちゅっとキスを……アレッ!?よくみたら動画じゃない!?!?じゃあこれ今動いたの妄想……!?!?
あと色ですよ…………明るすぎず暗すぎず………ちょっとくすんでるけどラブいピンク色…………土足厳禁の色ですわ……………
ありがとうございました