兄のようなものその年の秋もようよう深まってきた頃の話である。
この日、炭治郎は昼から出掛けていた。一人麓へ下りて米や野菜を買い求めるためである。
留守を任された禰󠄀豆子の耳に、しょきしょきという音が聞こえてきた。これは何の音であったか。興味を引かれ、格子窓から外を見ようと禰󠄀豆子は背伸びした。しかし、生憎小さな禰󠄀豆子には、爪先で伸び上がってみても外の様子は見えぬのである。どうやら前の川のほとりに、何者かがいるらしい。むう、と唸って、彼女は外へ出ることにした。
一人で外へ出るのは危ないぞと兄に言い含められていたので、普段禰󠄀豆子は外へ出ない。けれども、この日はついつい気持ちが引かれた。そおっと戸口から外へ目を遣る。
3663