Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    shiraseee

    @shiraseee_0108_

    気ままに更新しています。
    サイレント更新&修正は常習。
    凪茨ばかりですが、たまに他CPなども。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🍫 👏 ✨
    POIPOI 58

    shiraseee

    ☆quiet follow

    同棲している凪茨の休日。
    ふたりの家事事情だったり、茨のあれこれだったり。
    ほのぼの甘めを目指しましたが、色々そう出来てるといいなぁ…(願望)

    ##凪茨

    ────────


    「…仕事、まだ終わってないんでしょう?家事なら私がやっておくから、気にしないで」

    ───と言われ、こちらが何か言うより先に閣下に自室へと押し込められてしまったのが、大体10分ほど前のこと。最後に肩越しに見たやけに良い笑顔が、自分を不安にさせる昼下がり。
    (たまに自分と一緒にやってはくれましたが、それはほんのお手伝いを頼むといった形で、です。閣下一人で、本当に出来るのか…?)
    閣下に対していくら何でも大変失礼な心配しているのは分かっているが、買い物を最近覚えた人間がいきなり一人で家事の全てを出来るわけない。そんな自分の心配はいざ知らず。閣下は特にこのところ食器の片付けや掃除、洗濯、ゴミ捨てなんかも積極的に行おうとしてくる。
    機器の使い方、洗剤の量、片付ける場所に調理風景…様々な部分を見られていたことはあったし、教えたり説明書を出せば全てをきちんと把握し覚えて下さるのだろう。
    だが、今まで何かと理由をつけて家事をやらせて来なかった。やらせる理由も無いのだが、何よりやらせたくなかった。
    水仕事は手が荒れる、人目につく行動は避けてくれ、家事なんていいから好きなことをしていて良いと言っても、「…茨にばかり、家のことまで何でも任せていられないよ。一緒に暮らしてるんだから、私もやるのが当然だと思うけど」──って、仰るお気持ちは有り難いし、実際感謝も述べる。が、世間一般の恋人とかは、そうあるのかも知れませんが!
    さっきだって昼食後の皿洗い、私がやる、の一点張りを突破するのにどれだけ苦労したか。結局その後、有無を言わせず仕事をしろと部屋に押し込まれてしまっては意味がない。普段から仕事を理由にして色々と断ってしまうことも多く、そのたび閣下には拗ねられたり落ち込まれたり、寂しいと文句を言われたり、たまに怒られたりとしたことか。そうした積み重ねが、まさかこんなところで仇になるのかと頭を抱えた。
    自分は恐れ多くも恋人である以前に閣下の下僕として仕えているのに、下僕がやるべき作業を主人にやらせるだなんて言語道断!仮にもし取材や収録で、休日に何してますか?って聞かれた時に、洗濯機回して部屋に掃除機かけて自分の使った食器を片付けたりする、なんてうっかり言われてしまいかねない危険を避けなければ。
    庶民的な親しみやすさを狙った時もあるが、これは少し、いやだいぶ閣下のイメージと違う。晴れの日には庭園で優雅にアフタヌーンティーを嗜んでると言わせたいくらいだけど、残念ながら我々の暮らすマンションに庭園は無い。
    ああ駄目だ、やっぱり自分がやりますと無理矢理にでも代わってもらおう。確か殿下に頂いた一箱ウン万円する閣下お気に入りのチョコレートがあったはず。紅茶と一緒にお出しすればそちらに気が逸れて、大人しく部屋に戻ってくれるだろうそうしよう。
    何より、このままでは仕事どころではない!
    思い立てば即実行、善は急げです。
    一応手には持っていたが、内容は全く頭に入って来なかった書類をテーブルに投げ、閣下に気付かれないようにと足音を消し気配を殺して自室を出た。





    廊下に出て、キッチンに向かうまでの間。
    自室から数歩の距離とは言え物音一つせず、家の中がやけに静かだった。家事がこれほど無音で出来るのか?まあ、閣下なら出来るかもしれないが。…冗談はさておき、不思議に思い辺りを見回すが足音どころか、閣下の姿すら見当たらない。

    「飽きて本でも読んでるんですかね」
    「……その考えになるのは、ちょっと酷い」
    「ひぃっ!?」

    紅茶の準備をしようと戸棚からカップと茶葉の缶を出しながら独り言を呟いたら、背後から声をかけられたので危うく全部落とすところだった。
    ──何であんたも気配殺して近付いてきてんですか!?
    完全に不意を喰らって、驚きで早鐘を打つ心臓を落ち着かせながら、想定外の事態に強張った体を振り向かせる。
    声の主は、もちろん閣下である。情けない叫び声をあげてしまったので手遅れだろうが、至って平静を努めて姿勢を正す。

    「いっ──いやぁ、これは大変なご無礼を!申し訳ありません!ところで、閣下は今までどちらに?」
    「…乾燥が終わったから、洗濯物を取りに行ってた。茨は…もう仕事終わったの?いくら何でも早い気がするけど」

    ぎくり、と体の強張りが増した気がする。早々の指摘に顔も引き攣った。あまり取り繕い過ぎては余計に怪しまれてしまうと、愛想良く笑うのもそこそこにして次の言葉を探した。
    ふと見れば、閣下は洗濯物が無造作に入れられたカゴを持っていた。それだけならミスマッチにも程があるが、仕上がりたての柔軟剤の匂いが漂っているのも相まって、ふわふわとした柔らかな雰囲気が中々どうして悪くないと感じる。もしかしなくても、閣下にも柔軟剤のCMとかの爽やか路線を押していくのも良いのかもしれない。
    いやはや、日常の一場面にすら新たなる可能性を見出せる閣下からは、目が離せませんなぁ!
    気付けば一人満足感を得ていたところに、閣下が「…茨?」と首を傾げたので、はた、とすぐさま思考を切り替える。

    「ああ、えっと。終わってはいないんですが、そろそろ休憩でもいかがかと思い閣下にご提案を」
    「……始めて数十分しか経ってないから、まだ必要ないかな」
    「そうでしたっけ?…そうかもしれませんね?」
    「…うん、そうだよ」

    わざとらしく腕時計に目を遣る。デジタル表示の盤面は正確に時を刻んでいたが、今は一秒すらやけに遅く見えた。
    自分の数々の言動を訝しみつつも、微笑んで断りを入れるなどされてしまえばこれ以上は流石に見苦しい。言い訳は全く通じなかった。ならば魂胆はとうに見抜かれてしまっただろうか。余計なことを考えてるより、するのならもっとマシな言い訳を探すべきだったと反省。
    ばつが悪くなりつい泳がせた目線の先、持ったままで行き場の無くなっていたカップと茶葉を仕方なく棚に戻すことにする。

    「…何か飲むんじゃないの?」
    「そのつもりでしたが、閣下に家事をお任せしているのに自分だけ休憩しているのもどうかと」
    「…いいと思うよ。茨はいつも頑張ってるから、むしろ休んでいて欲しいくらい」
    「お心遣い痛み入ります!そのお言葉をいただけるだけで十分です。とはいえ、休める時にきちんと休んでいますので、実際何も問題ありませんから平気です」
    「…今日は、起きるのが私より遅かったしね。ゆっくり眠れたみたいで良かった」
    「それはっ!………あー、いいです、何でもありません」
    「…ふふ、かわいい」

    眠ったというより、気を失ったと表現するほうが正しい昨晩。目覚めは普段より悪くなかったこともないけれど、自ら恥を掘り返したくはないので、それは閣下が寝かせてくれなかったからだろ、かわいいって何がだよという文句と飲み込んだ。
    心なしか上機嫌になった様子の閣下がリビングへ移動していくのを、後ろからついていく。真っ直ぐベランダ前の窓辺に向かいカゴを置いて、閣下もそばでダークブラウンのカーペット上に正座で座る。
    乾燥機付きの洗濯機を使用しているので外に干す必要はないのだが(購入時、外に干してこそ洗濯物とか謎の主張を受けだいぶ渋られた)、やむなく出した妥協案の窓辺で洗濯物を畳むことが、天気の良い日は特にお好きらしく。時折鼻歌を歌いながら衣類を畳む姿は、ちょっと可愛らしいと思わないこともない。

    「閣下、自分もやります。お隣失礼しますね」

    今もそうしようとする閣下の隣に腰を下ろし、カゴから黒のTシャツを一枚取る。ああ、ワイシャツはあとで閣下のもアイロンをかけないと。見えた何枚かを除ける。今までわりとぞんざいに扱っていた洗濯物も、閣下の分も増えたとなると衣類を傷めないためにもきちんとするようになった。
    取ったTシャツ、背中側を自分に向けて広げ、左から内側に折り畳む。反対も同様に。裾を持って襟元に向かって半分にし、表にかえす──そんな同じ畳み方を教わって、共用の箪笥に仕舞っていく。お互い必要最低限の量しかないから、場所を取るよりはと一緒にしているのだけれど、たまに取り違えることもあるがそれはそれ。
    洗濯物を畳むのって意外と集中するから、仕事の息抜きにちょうど良いものだと気付いたのは最近だ。時間の無駄だなんだと効率化を求めて捨ててきた日常の何気ないことにも意味を見出せたのも、ちょっとした発見に頬が綻んでしまうのも、閣下と共に暮らすようになったからこそ。…とは、本人に言えないが。

    「…ねぇ、茨」
    「!な、何でしょうか閣下」

    黙々と畳んだ洗濯物を積んでいると、何故か止まっていた閣下の手が自分に向けて動いた。今日はよく驚かされる。それは制止の手で、次いでかけられた言葉は予想外のものだった。

    「…一緒にやってくれるのは助かるよ。でも、私としては仕事を終わらせてくれる方が嬉しいのだけれど」
    「えっ」

    ぐらり。倒れたのは距離感を見誤って積みきれなかった洗濯物で、自分の世界ではなかった。二つほど崩れて床に落ちたのを、すぐに拾えないほど一瞬で鈍る神経。てっきりこの時間を過ごすことを嬉しく感じ、柔らかな笑みを浮かべているのだと思っていた自分が恥ずかしい。
    しかし、一体今日は何なんだ。とことん仕事を終わらせろと、何度も仰るほどにこだわる理由が分からない。思わぬ発言と思案に固まってしまった自分へ、閣下は数秒考えてから口を開く。

    「……、…茨の仕事が終わって、家事も済ませてしまえば、あとの時間はあくでしょ?」
    「まぁ、はい。やることが済めばあきますね」

    手を離され、閣下もシャツをカゴからひとつ取り上げて、自分より少し慣れた手つきで折り畳む。

    「…だから、その時間で私と過ごしてもらうために家事をやっておきたいんだけど…仕事が手につかなくなるほど心配?私、大体のことは覚えてるよ」
    「…………は、ぁ……なるほど…?」

    洗濯物を畳む姿すら画になっていたのでついぼんやり眺めてしまっていたら、閣下は今なんと?
    聞き間違いかと頭の中で繰り返す。家事が問題なくこなせてしまうと判明したのは後々解決するとして、このあとの時間を自分と過ごすために、洗濯や掃除などを閣下が全て終わらせておきたいと。だから自分にはさっさと仕事を終わらせて時間を、体をあけろと。それで急かされていたのか。なるほど、閣下の様子に漸く納得しました。
    そうして長らくの間をあけてした間抜けな返答に、小さく笑われる。ははは、自分もつられて笑いそう──いやいや。いやいや!納得ってどこにだよ!

    「あのっ、ちょっと待ってください。閣下の記憶力は疑うべくも無いですが、もしかして、そんな理由で最近やたらと家事をやりたがってたんですか!?」
    「…ん?十分大事な理由じゃないかな。茨と過ごす時間は、私にとってとても大切だよ」

    畳み終わったシャツを仕上げに膝の上に乗せてぽん、と叩いてから、閣下は自分に向けて首を傾げる。さも当たり前のことかのように、こちらの問い掛けに不思議そうにして。
    更には崩れてしまった洗濯物も綺麗に積み直してもらったというのに、自分の手は、口は動かなかった。

    「…それに、忙しい茨を少しでも助けられるならと思えばやりたかった。仕事で私に出来ることは限られているし、茨に任せておいたほうが上手くいく。じゃあ家の中のことならと考えた時に、やれることは沢山あるから何でも手伝えるなって」
    「───……」

    世間一般の恋人たちは、そう助け合うのかもしれない。一般的な感覚がよく分からなくて、自分も閣下もまだまだ手探りなことばかりで、うまくいかないこともある。
    だけど互いを想う心は、自分でももうどうしようもないくらいに認めてる。
    ──茨のために。閣下のために。
    全部、貴方のためにと。そこで譲れないことがあったとして、誰より長く共に過ごしている人のことを許せるようにもなってきていたのは、自分も驚いたものだ。

    「…茨と一緒にやれるのも楽しいけどね。終わるのを待ちながら、部屋を綺麗にしたり食器を片付けたりしているのも中々良いよ。今まで家事をあまりやらせてくれなかったけど…それでも、たまに褒めてくれる時は君の役に立てたんだと密かに喜んでたりもした」

    いつのことを思い出しているのだろう。昨日かもしれないし、何ヶ月も前のことかもしれない。建前はほとんど消えて本音で話せるのも増えてきたから、自分が憶えていない当たり前を、見ていると擽ったくてあたたかくなる、穏やかな微笑みで言うから。

    「…もちろん怪我はしないように気を付けてるし、水仕事をした後はきちんと手のケアをして……って、茨?どうしたの?」

    とうとう胸の奥からこみ上げてくるものに堪えきれなくなって、閣下の話を全部聞く前に体に頭を預けた。すると自然と撫でてくれる手に、優しく尋ねる声に、…閣下の心に、むずむずする。きゅうって胸が締め付けられる感覚が苦しいはずなのに、嫌じゃない。
    これは、なんだ。いつか感じたことのある気がするけど、待て、どうしよう。何か、なにか言わないと。
    駄目だ。いま、閣下の顔が、見れない。

    「…えっと、怒ってる?ごめんね、確かに今日は少し強引に行動してしまったけど、」
    「───ちがいます、怒ってません。や、ごめんなさい。自分でも、分からなくて」
    「…?何が……」
    「多分、…嬉しいんだと思います。閣下のその、行動といいますか。それに対して…う〜…なんて言えばいいのか分からなくて、すみません。…だけど、ありがとう、ございます」
    「……うん。いいよ、ゆっくりで。茨が嬉しいなら、私も嬉しい。芽生えた感情を大事にしてくれるのなら、もっと嬉しい。…ふふ。ありがとう、茨。大好きだよ」

    どうにも顔は上げられないから、閣下の言葉を聞いて小さく頷いた。
    (俺も好きです。って、あとで正面きって言ってやろう)
    あーあ、本当どうかしてる。嬉しいだとか、心地良いだとか、よく分からないことばかりなのに悪くないなんて感じてて。絆されるだなんて思ってもなかった。何もかも想定と違って、自分でも不思議な感情に振り回されて忙しい。
    だけどそれもいいかってなるのは、相手がこの人だからかなぁ、なんて。

    「…でも、良かった。もうやるなって本気で怒られるのかと身構えてしまってたから、安心した」

    言葉の通りの声音に、ふと口元が綻んだ。そうしようとしたけど、あんなこと言われて、自分はこんなになってんだから何も言えるわけがない。
    頭は撫でられたままゆっくり顔を上げる。目線は少し彷徨ったけど、いつまでも俯いたままでは拗ねられてしまうので、仕方がない。

    「やって欲しくない気持ちは、正直まだ変わらないです。けど、閣下のお気持ちを蔑ろに出来ないので、今後は…今よりもう少し、手伝いを頼むことが増えるかもしれません」
    「……そうなるといいな。じゃあ、今日はこのまま一緒にしてくれる?終わったら一緒に、紅茶でも飲もうか」
    「───ええ。とっておきをお出ししますね」
    「…楽しみだな」

    きっとどれだけ共に時を過ごしても、俺の言葉になんて綻んでくれる笑顔と優しい手には敵わない。
    洗濯物をしまって、掃除をして。紅茶の用意とそれから───今日は少し、甘くしてみよう。


    ─────────
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺💖☺☺☺💞☺💞🙏☕☕💖💖💖💖☺💖😭😭💗💗🙏💞💞😭💘💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    shiraseee

    DONE凪砂くんが眠る茨を見つめて、かわいいなぁ、好きだなぁ、と思うおはなし。同棲している凪茨。
    茨は眠ってるだけになってしまいました。

    新年書き始めとなりました。とんでもなくふわふわとした内容ですけども…こういう凪茨が好きなので、今年もこんな感じのを書いていきます。
    暇つぶしにでもなりますと幸いです。
    拙作ばかりですが、たくさん書いていきたい!どうぞ今年もよろしくお願いします。
    しあわせの風景────────

    薄ら開いては閉じを繰り返す瞼に、注ぐあたたかな陽射し。まだ少し重たいけれど、微睡みから目覚めていく意識が次に捉えた柔らかな匂いに幸福感すら覚え、覚醒していく。
    日向より私に近しい匂いは、すぐそこにある。
    すん、と小さく鼻を鳴らして吸いこんだ。再び眠りに誘われてしまいそうになる安堵感と、心地良さ。この匂いにほだされ、自然と求めてしまう。
    随分そばにあったぬくもりも抱き締め漸く開いた私の視界は、見慣れた暗紅色が埋め尽くしている。
    「……茨…」
    「……………」
    「……?」
    ───珍しい。ぴくりとも反応がない。
    普段なら名前を呼べば起き上がるとまではいかずとも、私の声を聞けば、ふと長いまつ毛を持ち上げ茨の美しい青に私を映してくれることが常だった。その時の、茨の世界にまず私が在れるひとときに期待して暫く様子を見ていても、瞼は開くどころか、かたく閉ざされたまま。どうやら茨は、無防備にも私の腕の中で熟睡している。
    2000

    recommended works