すくいのもり 見渡せど、山、山。山。三方を山に、残りの一方は川に囲まれた小さな村がある。総人口は三桁に及ぶかどうか。山が含まれているので土地は広いが、人の住む面積は少ない。風光明媚と言えば聞こえがいいが、回りをぐるりと山に囲まれた田舎である。
ふしぎと整備された広大な道を進み、二メートルほどの堀を越えれば、落ち武者伝説がある集落がある。そもそも車が通れるほどの橋は少なく、入り組んだ道に車は不向きだ。人ひとり通るのが精いっぱいという道も多い。石階段は経年劣化して歪み、慣れていても足元を取られそうになる。風情のある不思議な光景ではあるが、観光名所というほどではない。
だが暮らしてみれば、意外にも住み心地はいいらしい。
2970