夜中の一時。深夜に似つかわしくない油の匂いがキッチンに立ち込めている。普段であれば寝室で横になっていることのが多い時間だが、今日は深夜にも関わらず、紅郎はキッチンに立って揚げ物をしていた。揚げたてのポテトの匂いが食欲を誘う。
こんな時間にフライドポテトを揚げるなんてどうかしていると思うが、今日に限っては仕方がないのだ。
それは朝、紅郎と千秋が仕事に行く前のこと。
『うう、どうして夏になるとホラーものが流行るんだろうな…』
『毎年言ってんな、それ。心霊スポットにでもロケに行くのか?』
『そうなんだ!しかも学校!夜の学校というだけでも怖いのに、曰く付きの廃校なんてもう…想像しただけで怖い!』
『仕方ねえな…じゃあフライドポテトでも作って待っててやるから、それ目指して頑張れ』
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