【創作】とあるハンターについて【第三者視点】■13. とある街付きの世話焼きハンター
「この辺じゃ見ない顔だったから声をかけたんだ。ただの気まぐれだよ、気まぐれ。というよりも、操虫棍の使い手は珍しいから、そっちに興味が湧いてね。猟虫というのもじっくり見せてもらったよ。実に興味深い。なんでも、旅の途中でここに立ち寄ったとかなんとか。行きかう砂上船や飛行船をずいぶんと物珍し気に見ていたよ。一体どんな田舎から出てきたんだが。でも、なんだか駆け出しの頃の自分を思い出してしまってね。わたしもついお節介をしてしまったよ。ふふ……峯山龍がやってくる季節も近い。彼は幸運だ」
■14. とある堅実なハンター
「いやさ、フィールドのど真ん中でほぼ丸腰のハンターとオトモが寝ていたら、そりゃ誰だって驚くでしょ?キャンプまで運ぶの大変だったわ。救援出したら近くにいたハンターが来てくれてね、運が良かったよ。で、たたき起こして話し聞いたら、ヒプノック狩猟中に眠らされたみたいで。しかも、手持ちのアイテム全部なくなっていて。きっとメラルーたちに盗られたんだわ。あたしも似たような経験あるけど……なんというかあまりにも不憫で笑っちゃったわ。だから仕方なくクエスト手伝ってあげたの。……別に恩着せがましくはないでしょ。ハンターは助け合うものでしょ?」
■15. とある町の豪快なハンターコンビ
「ああ、あの口なしのガキか。受付のお嬢から、次のクエストはあいつと組んで行けって言われちまってよぁ。憂鬱だぜ。せいぜい俺たちの足を引っ張らないようにしてほしいもんだ。わははっ!」
「あの野郎、これっぽちも口きかねぇから舐めてんのかと思ってよぉ、礼儀ってモンを教えてやろうとしたら、オトモアイルーが怪我の後遺症だっつーから優しい俺様たちは見逃してやったわけだ。しっかし、まぁ、そのオトモがこれでもかってくれぇ喋る喋る。だが、存外話が分かるヤツでよぉ。冗談半分で『俺様たちのオトモにならねぇか』つったら、ガキがいきなり殺気立ってなぁ。口がきけねぇ分、なかなかの迫力だったぜぇ。俺様たちほどじゃあねぇがな!がははっ!」
■16. とある港の船乗り
「毎日、毎日、たくさんの人たちを見ているからさ、人を見る目には自信あんのよ、オレ。あのハンターを初めて見た時のこともよーく覚えているぜ。顔つきは東の生まれぽかったけど、目が青ぽかったからさあ。だから印象に残った……ってのもあるけど、実は理由は他にもあんのよ。仕事仲間のアイルーがさ、あのハンターとオトモが話しているところを見かけて、そんで言ってたんだ『オイラたちの言葉とはちょっと違うけどニャ、あれはヒトの言葉じゃニャイ。ニャんだか、不気味ニャア』って。つまり、獣人族の言葉?それが喋れるってことだろ?ってことはさ、あのハンターって元学者だったりすんのかな?ほら、確か獣人族の言語学って分野あるんだろ?…………流石にそれはないか。もしそうだったら天才か奇才だぜ」
■17. とある都の彫師
「あー……あのお客サン、ネ。ボクのこと、ハンター仲間さんから聞いたみたい。そう、ボク専門家だからネ。これでも仕事の腕はいいんダヨ。あのお客サン……施術中も眉のひとつ動かさなくってサア。よく覚えているヨ。アレ、ヤバいネ。痛覚あんノ?って感じ。大の大男でも痛みで失神することだってあるのにネ。逆にオトモの方が痛がっていたヨ!ケハハッ、可愛いよネエ!別に自分が施術されているわけでもないのに痛がっちゃってサア!」
「……タトゥー入れる理由ってサア、ヒトそれぞれあるけど、あのお客サンは『目印がほしい』って言ってたネ。ボクはその注文に応えた。それだけダヨ」
■18. とある村の子
「目、とてもきれい、だった。この場所で、毎日、見るイロ。お空のイロ。晴れのイロ。不思議なイロ。初めて会うヒト、だけど、初めてって、思えなかった。どこかで、会ったこと、あったのかな?でも、ここ、あまりヒト来ない。きっと、初めまして。でも、初めまして、じゃない。不思議なヒト。たくさん話、してくれた。ハンターの話。モンスターの話。外の国の話。いっぱい、してくれた。また会えると、いいな。会いたいな。あのヒトは、いっしょにいると、おちつくの」
■19. とある町の飯屋の娘
「この町じゃあ喧嘩は日常茶飯事だけどねえ。店のもん壊すひとには参っちゃうわ。当然弁償させるし、目に余るようならパパが出禁にさせるけどお。はあ……ハンターが全員そうってわけじゃないのは分かっているけどさあ、やっぱり力加減とかが分からないひともいるみたい。あーでも、先週来たハンターはおとなしくて助かったわあ。若く見えたけど、二十歳くらいかなあ?ずいぶんと落ち着いた雰囲気でね。詳しくは知らないけど、なんか上位ハンターぽいひとがそのハンターにいちゃもんつけたみたいでえ……『口がきけねえのか!』とか『調子に乗るな!』って叫んでたわ。でも、そのハンターね、なーんも言い返さないの。耳が聞こえないってわけじゃなさそうだったから、大人の対応っていうか、眼中にないっていうか、全然相手にしていなかったの。ていうかオトモアイルーが代わりにすごい怒っていた感じね。『そっちが謝るニャ!撤回するニャ!』って。ご主人様思いのいい子ね。結局、そのご主人様が止めに入って、さっさと店出てっちゃったわ。なんかそれが余計に気に障ったみたいで、その上位ハンター顔真っ赤になってねえ。あははっ、なんだかラングロトラみたいだった。ちょっとせいせいしちゃったわ」
■20. とあるお調子者ハンター
「いやあ~全っ然知らねえとこに落ちて、一時はどうなるかと思ったぜえ。突風のせいで飛行船がすんげえ揺れてよお、そんで見事に振り落とされちまってなあ。結構な高さあったけど、木が多くてまじで助かった。流石、俺。そんで途方に暮れてたところ、たまたま探索中のハンターがいてよお。事情話してたら、ちょうど目的地の町に滞在しているって分かってな!で、とりあえず町まで同行することになったてわけさ!ツキが回ってるってのはこういうことだぜえ~!」
「なんか町の学者や医者に頼まれて薬草や骨の採取に来てたんだと。俺、納品クエストとか運搬クエストまじで苦手だからさあ~そういうの全っ然受けたことねえんだよなあ!で、何がビビったって、そいつ一週間近く町に帰ってねえっつうの。ありえねえよな!?どんだけ夢中なんだよって!!そりゃ俺だって任務で数日間キャンプで寝泊まりすることあるけどよお……ただの探索だぜ?意味が分からねえ……」
■21. とある妖艶なハンター
「ミステリアスな男って素敵よね。そう思わない?周りの男ハンターたちは、強さを誇示したり、しつこく迫ってきたりする人が多かったから、ああいうタイプは珍しかったのよね。それにあの顔……そう、東国の。あの顔、とってもそそられるわ。年齢の割にはあどけなさが残っていて、それなのに体はしっかりと鍛えられていて、筋肉に無駄がない。そのアンバランスさがなんとも言えなくて……なんだか庇護欲をくすぐられるの。ウフフ、分かるかしら?それと……なにより、あの目。太陽の光に当たると、まるで澄んだ海のような色で……どこか神秘的で、初めて見た時は思わず見惚れてしまったわ。東の人間には珍しいわよね、あの色。でも、それが彼をより魅力的にしてくれるの……ああ、素敵」
「……ねえ、あなた。彼、首にタトゥーいれているのをご存知?普段は見づらいけど。そう、このへんに。タトゥーなんて珍しくない?そうね。でもなぜかしら、とってもセクシーなのよ、あの人のタトゥーって。それと、タトゥーの下に古傷があってね。一体どんな相手につけられた傷なのかしら。聞いてみたけど、答えてくれなかったわ。怪我の後遺症でうまく喋れないのは彼のオトモから聞いていたけど……そんな態度をとられると余計に気になってしまうのが人の性よね。二人きりでお酒を交えつつゆっくり話して……あわよくば夜の御相手をと思って誘ったけど、断られちゃったの。味見くらいしたかったのに。残念。フフ、あの青い瞳が快楽や苦痛で歪むところが見たかったわあ」
■22. とある村の住人
「やぁやぁ!見間違えたよ!立派になって、まぁ!ずいぶんとデカくなったなぁ~!!あん時はまだこ~んな小さかったのに!そうだ!教官、まだ修練場にいるだろうから顔出してやりな!きっと喜ぶ!集落の方には……そっか。まぁ、そこはかとなく伝えておくよ。坊主が元気にやっているってね。さぁさぁ、久しぶりに温泉入っていきな!長旅の疲れを癒しておくれ!はぁ~それにしてもアカ抜けたねぇ!首にえらい立派な刺青いれちゃってぇ~!おいちゃん、驚いちゃったよぉ!あっはっは!」
■23. とある町の新米ハンター
「はい!彼は自分の命の恩人です!自分、尊敬します!心から!!自分はまだまだ新米で、狩猟の経験も少なくて、クエストに失敗することもあって……ハンターに向いていないんじゃないかと正直悩んでいました。そんな時、彼と出会ったんです」
「あれは下位クエスト中に、狩猟対象のトビカガチの棘に足をやられて身動きが取れなくなってしまって……万事休すと思いきや、どこからか閃光玉が飛んできたんです。思わず目を閉じてしまい、気付いたら誰かに担がれていました。それが彼でした。オトモにモンスターを離れた場所に誘導させ、その間に身を隠せる場所へ自分を運んでくれて……そしてすぐ踵を返してトビカガチに向かっていきました。素早い動きをするトビカガチ相手に、的確に弱点を突いて弱らせて、瞬く間に捕獲してしまい……思わず見惚れてしまう手際の良さ。なにより初めて間近で見た操虫棍の戦い方……猟虫を使い、空中戦を制する武器……あんなに身軽に宙を舞うことができるんですね。圧巻でした」
「助けていただいたお礼もですが、上位ハンターの彼から色々話を聞きたかったので、後日改めて狩猟にとお誘いしたんですが『明日には発つ』と言われちゃいました。彼のオトモが言うには、ずっと根無し草の旅をしているようで……実力があるなら町付きのハンターになったりすることもできるのに。気になったので、どうして旅を続けるのかと聞いたら『雑音が聞こえない、静かな場所へ行きたい』『そんな場所をずっと探している』『だからより広く、より高みへ』と言ったんです。…………かっこよくないですか?もう尊敬しかありません。自分、いつか絶対、彼のようなハンターになります!!日々精進です!!」
■24. とある街の調査員
「先日、調査に赴いたら一人のハンター様にお会いました。わたくしの調査地域で、ハンター様にお会いすることは滅多になかったもので……お声をかけました。その方も、わたくしと同じようにここ一帯の地形や生態系にご興味を持たれており、独自の調査を行っていると、かれのオトモアイルーが教えていただきました。もっとも、ハンター様はこの地域の固有種に特にご興味があるようでしたので、僭越ながらいち調査員として軽く講義をさせていただきました。怪我でうまく話せない分、かれのオトモアイルーが代わってたくさんの質問をしてくれました。ふふ。優秀なハンターには、優秀なオトモがついているのですね。少し、羨ましかったです」
「ああ、そう言えば。あれは何年前でしたか。ギルドが各地の優秀な人材を集めていたのを、あなた様もハンターであればご存知でしょう?そう。『新大陸古龍調査団』です。確かあの時は、四期団の募集でしたね。近々、五期団が結成されるのではないかと噂されています。『渡り』の兆候が観測されているそうですからね。きっと、かれのような……幅広い視野を持っておられるハンター様は、ギルドからお呼びがかかるのではないでしょうか」
■25. とある都の店主
「いらっしゃ~い。あら?初めましてかしら?アタシがここの店主よ。どうぞよろしく、ギルドのハンターさん。……ふふ、なぁ~に驚いているのよ。悪いけど、アタシこの町では『地獄耳』って言われているの、舐めないでちょ~だい。ここに来たってことは情報が欲しいんでしょ?で?ご依頼は?……ふうん。人探し、ねぇ」
「ああ、もしかしてあのハンターをお探しかしら?黒髪で、青い瞳の操虫棍使い。以前もここに滞在していたけれど…………へぇ、その反応、ビンゴね。ということは、あの坊やを古龍調査団の第五期団としてスカウトするのかしら?いやん、別に隠さなくたっていいじゃなぁい。言ったでしょ?『地獄耳』だって。隠したって、ぜ~んぶ無駄よ?
……うんうん。そうねぇ、あの坊や、ひとつの場所に留まらないからなかなか捕まらないのよねぇ。ふふ、まるで何かを探してさ迷っているみたい。まぁ、任せてちょ~だい。アタシ独自の情報網を駆使してみせるわ。そうね……また明日、同じ時間に来てちょうだい。それまでに見つけておくわ」
「と、こ、ろ、でえ。御代の話なんだけど……今夜、付き合ってくれないかしら?ええ?『男に興味はない?』あ、そう。残念。これでもアタシ経験豊富だから、たっぷり愉しませてあげられるのに。ああん、いけずぅ。でもあなた、アタシのタイプだからお安くしてあげるわ。ふふ。またのご利用、お待ちしているわ」
■26. ギルド直属の律儀なハンター
「やっと見つけました……ええ、なんとか。本当に捕まらなくて……いえ、それが任務でしたから。そんな、もったいないお言葉です。ただ……そうですね。まさか50日近く、彼を追いかける羽目になるとは思いもよりませんでした。優秀な情報屋のおかげです。今の任務が終わり次第、港へ向かうと言っていました。はい」
「あの……彼が有能なのは、その経歴を見れば火を見るよりも明らかです。ですが、その……お言葉ですが、大丈夫なのでしょうか。あの場所には変人しかいないとお聞きします。彼のように真面目そうなタイプは…………は?杞憂、と?そう、ですか。そう、なんですか?はあ……分かりました。では私も一度ギルドへ戻ります。ええ、では。ここで失礼いたします」