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    ドドドドド攻めワイズ
    (ほんとうはビグオンリーの展示だったもの……)

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    DONEビリーが依頼人と喋ってるだけのビリ→グレ
    (ビリグレワンライ【恋の悩み】)
    マジック・アワー「ロニー・ビードルよ」
     きれいに切り揃えられた桜貝のような爪が、音もなく一枚の写真を差し出した。ご挨拶だな、とビリーは思う。ゴーグルの中で目を細めながら肩を竦めてみせる。こちとらまだ店に着いて席に座ったばかりだというのに、間髪入れず仕事の話ときた。無駄がないのは嫌いじゃないが。
     胸元がざっくり空いた漆黒のワンピースを纏った彼女は、どうやらビリーと視線を合わせてくれるつもりは無いらしい。小さな顔がすべて隠れてしまいそうなほどのサングラス。ビリーが言えた義理ではないが素顔を露わにしたくないのだろう。緩くウェーブがかった明るい茶髪を耳に掛け、それきり彼女は俯いた。
     ビリーは彼女を一瞥してから店内に視線だけを滑らせる。夕暮れのアンクルジムズダイナーは取引の穴場だ。ディナータイム前で客が疎らな時間帯、一番奥のボックス席に呼び出されたビリーを待ち受けたのは一人の女性と、テーブルの上で冷や汗をかいているブラックのアイスコーヒーだった。ニューミリオン随一の情報屋という肩書きだけが先走ったらしく、店に着いたビリーが席に座るなりその若さに彼女が僅かに驚いたような素振りを見せたのがほんの十秒前のこと。アンクルジムズダイナーならばチェリーサイダーかジンジャーエールが良かった。そんなことを宣える空気では無く、ビリーは仕方なくアイスコーヒーのストローに口をつけた。なにせ目の前の女性の口元が、上がった肩が、話の真剣さを物語っていたからだ。
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    DONE喧嘩したビリグレが深夜ドライブする話
    (ビリグレワンライ【ドライブ】)
    naked くぐもった音を合図に前方の景色が開かれたのを見て、ビリーは雨が降り出したのだと悟った。車窓に流れゆく景色は変わらず、等間隔で背の高い街灯をうつし出している。きれいに舗装された広い道には人はおろか他の車だって見当たらない。眠らない街・ニューミリオンでもさすがに深夜のハイウェイは閑散としていた。
    「もうそろそろブルーノースに入るヨ。サービスエリアがあるけど寄る?」
    「……まだいいかな」
     ビリーは僅かに眉を上げ、スマートフォンの灯りを消した。それならばしばらくナビゲーションの必要は無い。出る幕なしだ。口を閉ざしてしまえば、そこに残ったのは息が詰まるほどの静寂だった。タイヤがアスファルトを削る低音を背後に、フロントガラスに降り注ぐ霧雨を拭うワイパーの間抜けな音だけが続く。彼の実家の車とは違ってエリオス社貸し出しの車のシートは硬く、けれどそれよりも遥かにぶっきらぼうな返事の方が固かった。ビリーくんは大丈夫? トイレとか平気? 普段ならかけられるであろう言葉もかけられないほど、今のふたりの間には薄く張り詰めた氷のようななにかがあった。
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