薪の音 びゅうびゅうと、冷たい風が吹き荒んでいる。イシュガルドはどこも寒い。
もう思い出したくもないあの薄寒い故郷ですら、これほど冷えることはなかった。
俺は横に積まれた薪を取り、ひとつふたつ、薪の中へと放り込んだ。炎が舞い、赤い光が周りで眠る三人の顔をゆらゆらと照らす。
静かに上下する彼らの体が、穏やかな寝息を表している。エスティニアン。イゼル。それからアルフィノ。
思えば遠くへ来たものだ。
俺はありとあらゆるものから逃げ続けている。そのくせに、やたらと夜は穏やかだ。
ふう、と白いため息を夜空に溶かす。しかし同時に、薪がばちんと大きな音を立てた。水分が残った薪が混じっていたのだろう。
薄い眠りから覚めたエスティニアンとイゼルが、ちらと顔を上げる。鎧や夜の闇越しで二人の顔は見えないが、ゆるゆると手を振って何もなかったことを示すと、彼らはまた静かにまどろみの中へ帰っていった。
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