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    センリ°F

    メディア欄整理のためのプラス用格納庫。ぷらいべったー以外のサブのシリーズものを置いています。

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    センリ°F

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    現パロ🃏💋🐯宅の居候猫こと🌸
    *💋はお休み、👒がでます

    -🃏相手プラスだけど逆ハー(なのか?)
    -🐯は🃏💋宅の同居人
    -🃏がある日🌸を拾ってきた
    -恋人というよりもほぼペット扱い
    -ゆるいシリーズ

    ##同居人シリーズ

    ビニールプールの話都内でも路線沿いとしてはかなりの高級住宅地にあるこの家には、それなりの庭とささやかなウッドデッキがついていた。普段はほとんど使われないのだが、今日はビニールプールが展開されている。
    嵐のような客が持ち込んだ未開封のそれを箱から出し、膨らませてホースで水を入れてやったのは家主のドフラミンゴである。そろそろ出禁にしてやろうかと思っていたさなかのコレだ。夏休み中、一体何回ウチに来るつもりだ。
    ドフラミンゴの溜め息とは対照的に、ウッドデッキに腰掛けてプールに足を浸けている同居人はご機嫌だ。麦わら帽子のつばを押さえながら、真夏の太陽にも負けぬきらめきを振り撒いて笑っている。
    普段はゆるゆる微笑むだけの猫が、声を上げて笑うのは珍しい。きゃらきゃらと響く笑い声に、風鈴の涼んだ音が重なる。
    「それでよ!エースが寝言で言ったんだ、『マルコ、俺が悪かった〜』って!」
    「おい麦わら屋、水をこっちまで飛ばすんじゃねェ」
    それに重なる賑やかな声が、問題の客人である。麦わら帽子に焼けた肌、目の下の傷。このビニールプールを持ってきた張本人は、どんな因果かローの悪友らしい。先日、ピザ屋で会った目つきの悪いチューリップ頭ともども、3人集まるとロクなことがない。
    自分の家には庭がないから、という理由で勝手に他人の家に白羽の矢を立てた麦わら小僧は、ローに連絡も入れず元気よく襲来したのだ。
    ドフラミンゴはリビングの窓をガラリと開けた。
    「おい悪ガキども、スイカ切れたぞ」
    その声に、ウッドデッキで涼む3つの頭が一斉にこちらを向いた。そのうち2つが目を輝かせているので苦笑が漏れる。
    皿を置いてすぐに涼しいリビングへ避難しようとしたドフラミンゴだったが、両手首をそれぞれ違う手で掴まれてそれは敵わない。
    「みんごも一緒に食べようぜェ〜!」
    「たべようぜ〜」
    「…おまえらなァ」
    直射日光を至近距離で浴びるが如く、この麦わら小僧の圧は物凄い。サングラスなしでは目が眩みそうだが、インドアな猫は意外にも苦ではないらしい。子供同士、ウマが合うのか。
    男たちはどうでもいいのだが、キラキラと輝く瞳で「ドフィさんも」と腕を引かれては敵わない。家主は猫の後ろへ腰を下ろした。
    涼やかなガラスの深皿に、瑞々しいスイカの赤が美しい。フォークに刺して差し出してやると、猫は受け取らずに口を近づけた。シャクシャクと咀嚼音が小気味よい。
    「ん、おいし」
    隣で麦わらとローも手を伸ばす。みるみるうちになくなっていくスイカを見て、コイツの分は皿を分けておいて正解だったとドフラミンゴは口をへの字にした。
    ビニールプールの水面は、真昼の太陽を反射して七色にきらめいていた。ゆらゆら揺れるプリズムを、猫のしろいつま先が蹴ると、水飛沫が踊る。塗ってやったピンクのネイルは、なめらかに泳ぐ熱帯魚にも似て。今日ばかりは日焼け止めの塗り直しを勘弁してやってもいいと、ドフラミンゴはスイカを口に放り込みながら思った。
    「スイカもいいが、ちゃんと水分も摂れよ」
    ローが小言を言いながら二つのグラスに麦茶を注いでやっている。並んだ麦わら帽子の隣にいると、ローはすっかり兄の顔になる。本人に言えば不本意がられるだろうが、そういう性分なのだから逃れられない。
    「トラ男も水分摂れよ〜!」
    「ローくんも麦茶〜」
    「注ぎすぎだバカ!」
    …呑気な同居人とは対照的に、ローはこの直射日光を相手に、やや気圧されているようなので心中を察する。
    マトモな大人であればやはりこの麦わら小僧の明るさは眩しすぎるのだ。心のどこを照らされてもいいような生き方をしてきたわけではないから、余計に。しかし、その隣でキラキラと笑顔を振りまくこの生き物は、日陰から身体を出しても美しい身体をしていた。
    ああ、これと自分とは違う生き物なのだ、とドフラミンゴはぬるい麦茶を含みながら思う。どんなに暗闇に向かって手を引いても、夕日のきらめきをいつまでも瞳の中に残して夜空を見上げるのだろう。
    ドンキホーテ・ドフラミンゴには──それが少しだけ疎ましく、たいそう愛おしかった。
    「夏休み、ずっと続けばいいのにね」
    そう言って見上げてくる笑顔が眩しくて、しかしいつまでも続かぬものと知っている言葉が切なくて、季節の片隅に一瞬ひかるものを確かに拾い上げている。ドフラミンゴは喉の奥がきゅうと締まるのを感じて、サングラスを押さえた。
    「フフ…毎日こうも騒がしいのは御免だがな」
    「む」
    ぼす、と麦わら帽子ごと頭を撫でてやると、猫の瞳が昼の月の形になった。
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