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    suzu_saya

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    トビー(28)たまちゃん(24)

    トビたまに深歩を絡めた話(ギャグ)「で、どう?上手くいった?」
    マスターの問いに響はあからさまにため息をついた。
    「その様子から駄目だったみたいだね……。よし、そんな響ちゃんにはデザートをタダで食べさせてあげよう」
    「うう……ちょっと元気出る」
    響と環の二人は友人がマスターを務めるシーサイドカフェYuKuRuに訪れていた。コンパニオンで生計を立てている響はよく合コンに参加していて今はその帰りだった。
    「ごめんねえ、たま。ついてきてもらったのに」
    「ううん、全然いいよ」
    「でも、楽しくなかったでしょ……?」
    「話しかけてくれた人が、優しい人だったから……」
    環はスマートフォンの画面を見せた。
    「え!? いつ連絡先交換したの?!」
    「響ちゃんが席を離れてるときに。なんかその人が勝手に……」
    「勝手にってあいつ怒らない?」
    その声と共にマスターがコーヒーとレアチーズケーキを持ってきた。
    「あいつって」
    環は誰のことを言ってるのか分かったのか少し眉を下げながら笑った。
    「お前のプライベートにいちいち口出すかよって」
    環の傍には飛田という男がいた。だが別に付き合っているわけではない。学生の頃に彼の露天商を手伝ってからも環は今も手伝い続けている。マスターは常連客として時折この店に訪れる二人を見ていたので飛田が怒らないかと口を出したのだった。
    「じゃあたまもその人のこといいなとは思ってるの?」
    「んんん……まだそれはわかんない……」
    環は砂糖を入れたコーヒーカップをティースプーンでくるくると混ぜた。
    「でも、もしたまちゃんがその人といい感じになったらお店は辞めないといけないね」
    「……どうして?」
    「そりゃ気になってる女の子が知らない男のしかも怪しい店なんて手伝ってたら疑問に思うでしょ?」
    ずっと手伝ってきた店を辞めるということは考えもしなかった。環は思わず俯いて考え込んでしまう。
    「ああいや、そんな深く考えなくても大丈夫だよ。もしもだからね」
    「ん……そうだね」
    環の隣に座る響もまた合コンが上手くいかなかったことに落ち込みカウンターには若い女性二人が肩を落として座っていた。
    眼鏡のバイトの少女は何してるんですかマスターと冷たい目で見て「あーあやっちゃったなあ……」と情けない声が響いた。
    そんな少し重苦しい空気を破ったのはスマートフォンの振動音だった。環は鞄からスマートフォンを取り出し画面を確認すると先程連絡先を交換した相手からのメッセージが届いていた。
    『今何処ですか? よかったら会いませんか?』
    「えと……どうしよ……」
    「どうしたの?」
    環の呟きを拾ったのか響が問いかけた。環はメッセージ画面を響に見せると響は目を輝かせた。
    「いいじゃん、たま。会っちゃいなよ!」
    「で、でも……」
    たしかに連絡先を交換したこの人は優しかったがこんなにもすぐに誘いのメッセージが来るとは思っていなかった。
    「待ちなよ、響ちゃん。たまちゃんはそういうのに慣れてないんだから。彼女のペースに任せてあげなよ。それにもう夜も遅いのに突然会おうって、いい予感はしないと思うね」
    マスターのその言葉にそうかな?と思いながら考え込んでいると、また相手からメッセージが届いた。
    『お忙しいならまた今度で』
    「また今度、って……」
    「うん、それがいいよ」
    環は緊張が解けた気がしてふうと息をついた。
    「不安だったら響ちゃんに同行してもらうのはどう?」
    「そんなのあたし、邪魔ものになるんじゃない?」
    「ううん、そんなことないよ」
    「ほんと?」
    「うん。お願いしていいかな? 響ちゃん」
    「もちろん!」
    「たまやさしー!」と響は環に抱きついた。
    とまたスマートフォンの振動音が鳴る。
    確認すると今度は露天商を環に任せている飛田からメッセージが届いた。それによると明日は休みにしてもいいということだった。
    「誰から?」
    「ひださんから……。明日お店休みにしてもいいって」
    「じゃあ明日、その人に会ってみない?」
    環は頷き、響のアドバイスをうけて連絡先を交換した相手と明日会う約束をした。

    そして翌日、二人は駅前で待ち合わせをしていた。
    「ね、ほんとにあたし邪魔じゃないかな」
    「そんなことないよ。わたしこういうの初めてだから、響ちゃんに居てほしい。それにその人も響ちゃんにも会いたいって」
    「そっか、ならいいのかな」
    ほどなくして連絡先を交換した昨日会ったばかりの男性が二人の前に現れる。
    「待たせてしまいましたか……?」
    「あたし達もさっき来たばかりだから」
    「そうでしたか、よかったです」
    三人は昼食もまだだったので軽く食事をすることにし、男性が選んだ店で少し遅めの昼食を取ることにした。
    昼食を食べながらお互いのことを話し普段何をしてるか聞かれた時は、環が
    露天商で働いていることを伏せながら響が自分のことをいろいろ話したりした。食事を終えて少しして店を出た三人はまた歩き出した。
    「あっ、ここのタピオカ美味しいんだよ」
    響が指差した先には若い女性に人気のあるタピオカドリンク店があった。
    環は行こ行こと響に腕を引かれ並んでタピオカミルクティーを買い、男性が二人についてきた。タピオカを買うと三人は公園のベンチに座った。
    「もちもちしてる」
    「このもちもちがいいよね」
    一口飲んだ環と響は感想を言い合う。男性も飲もうとしてストローを咥えるとタピオカが喉に詰まったのか突然むせてしまう。
    「ごふっ……!」
    「だ、大丈夫!?」
    慌てて環は男性の背中をさする。男性はむせながらも大丈夫だと言った。
    「あたし水買ってくるよ!」
    響はすぐさま水を買いに自販機を探しに行った。
    男性は尚も咳き込んでいるため環は背中に手をやり落ち着かせようとする。
    少し経ったが彼女が戻ってこない。
    響はどこまで行ったのだろうかと辺りを見回した。
    「!」
    気の所為だろうか、今彼が見えたような……。
    「水買ってきたよ!」
    響は水の入ったペットボトルを男性に渡す。男性が水を飲んで落ち着いたのを見て環はホッとしたが先程見えたものが気にかかり、ちょっと待っててと響と男性に言いベンチから離れた。
    公園内を少し歩いたがやはりいなかった。見間違いだったのかと環は戻ろうとした。
    「たまちゃん」
    環は突然知ってる声に呼びかけられた。
    「え!? 深歩ちゃん?」
    そこには環の友人である車椅子に座る深歩がいた。
    ということは、先程見た飛田の姿は見間違えではなかったのだ。
    「……ひださんは?」
    「それがね、聞いてきいて。怒って帰っちゃったの」
    「? どうして……?」
    「どうしてだと思う?」
    質問を質問で返されまるでクイズをしてるようだった。環が考え込んでいると深歩の手には響と買ったタピオカミルクティーがあることに気付いた。
    「あ、これね、美味しいって有名なあそこのお店で買ったんだ」
    ということは?と環は首を傾げた。
    「いたいた、たまどこ行ってたのー! あれ?深歩ちゃん?」
    二人の元に響もやってきた。どうやら男性はこれから仕事ということで帰ったらしい。深歩は響を見ても別に驚いたりもしなかった、まるで環と一緒にいたことを知っているようだった。
    「さっきトビーとすれ違ったんだけど、なんかめっちゃ怖い顔してたよ」
    「深歩ちゃんから聞いたけど、どうしてかな……」
    「ん〜と〜、たまがあの人のこと気にしてたからじゃない?」
    「せいかーい!」
    どうやら本当にクイズをしてたらしい。
    応えたのは響だが。
    環は導き出された答えに困惑していた。
    「で、でもプライベートに口出すかよって……ひださん言ってたよ…?」
    「深歩ちゃんが飲んでるのあたし達がお店で買ったやつだ」
    「うん。どこかの人がね、こんなカエルの卵みたいな奴の何が美味いんだって言ってた」
    「…………」
    環には誰が言っているかすぐに分かった。響はそんな言い方しないでほしいよと怒っていたが。
    「白状するとね、三人をずっとつけてたの。だからこのタピオカミルクティーも買ったんだ」
    「えー! 全然気づかなかった」
    環は驚きすぎて声も出なかった。響の付き添いで初めて参加した合コンで連絡先を交換した男性と響もいたとはいえ一緒に居たのをずっと見られていたのだ。
    しかもその男性がタピオカでむせてしまい介抱していたのを見て怒って帰ってしまった可能性が高い。
    「わ、わたし……ひださん、怒らせちゃったのかな……」
    「とりあえず、信さんのお店に行こ?そこでぜーんぶ話すから」
    深歩の車椅子を押して環と響は公園を後にした。

    「いらっしゃい。これまた珍しいメンバーだね」
    「こんばんは、信さん。これから女子会なんだ」
    「お、楽しい話かな」
    と信は三人の中の一人の女の子の表情を見て察したのか、邪魔はしないでおくよとすぐに席を離れた。
    「でで? 話って?」
    響は興味津々と言った感じで前屈みになる。
    「今から話すこと、誰にも話しちゃダメだよ?」
    「うん、わかった」
    何を話されるのか、緊張を誤魔化すため環は水を飲んだ。
    「実は言うとね、ここのところずーっと、たまちゃんが合コンに行くって話を聞かされてたんだ」
    「へ?」
    「誰から?」
    「それはこの事件の当事者の一人だよ」
    どうやらこの件は事件になったらしい。誰なのか検討がついたのか、響はいつの間にかテーブルの近くでちゃっかり話を聞いていたマスターを見た。
    「やっちゃったね、響ちゃん」
    「ええ!? あたしが悪いの!?」
    深歩はシーと指を口元に当て、話の続きをする。
    「そう、響ちゃんが付き添いでたまちゃんを合コンに誘ったことでたまちゃんも初めて合コンに参加することが決まってものすご〜く機嫌が悪かったの。たぶん変なやつに捕まらないかって心配してたと思うんだ」
    「はーん、ヤツの地雷を踏んじゃったわけだ」
    「でもたまも大人だし――」
    ぴとっと深歩の指が響の唇に触れ言葉を止めた。
    そして彼女の口から指を離して手を膝の上に戻した。
    「それでたまちゃんが合コン相手と会うっていうのが決まったらわたしを巻き込んでまであとをつけてるんだよ? もうこれ心配っていう感情だけじゃないよね」
    深歩は腕を組んで少々真剣に話を聞いているマスターを見た。
    「けどそれは当事者同士の問題だな」
    さっきから何やら考え込んでいる環を優しく見守るようにして見ながらマスターは言った。
    「響ちゃんだってたまちゃんに悪いことしたって思ってるんでしょ?」
    「う、うん……。トビーが怒ったのは、たぶん……そういうことだよね」
    深歩とマスターは同時にうんうんと頷いた。
    環はというと自分を責めていた。やはり合コンには参加するべきではなかったのだと。何故こうなってしまったのか……飛田に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
    そんな環に深歩が優しく声をかける。
    「たまちゃんが気にする必要ないよ。飛田さんがショーゴくんみたいに言いたいこと言わないから悪いんだよ」
    そのときマスターが吹き出した。
    「上手いこと言うね、深歩ちゃん」
    「もう、あの二人ってほんとは似てるよね」
    そう言うと似てる似てるとまたマスターは笑う。
    環は椅子から立ち上がった。
    「わたし、ひださんのところに行ってくるよ」
    その顔は決意を新たにしたような顔だった。
    環はすぐ店を飛び出していった。
    「ふう、これでやっと二人とも前に進めるかな」
    「深歩ちゃん、お手柄だよ。あいつたまちゃんに他の男が近付くのは気に入らないって感じだったからね。深歩ちゃんの話でようやく分かった。それにしてもその話を深歩ちゃんにしてるなんてな」
    マスターはまた笑い出した。
    「もう、笑いごとじゃないんだってば。大変だったんだよ? ていうか信さんがそっち方面のアドバイスしてあげてよー」
    「あいつが聞くと思う?」
    「聞かないね」
    「ねえっ、あたし悪くないよねっ?」


    環は飛田が独り暮らしをしている古びたマンションの階段を登り、インターホンを押した。勢いよくカフェを出てきたはいいが不機嫌のときの彼を想像するとやはり緊張をしてしまう。
    がドアが開く気配はなく、あれとドアノブに手をかけると鍵が掛かっていた。
    「留守かな……」
    俯いて環は踵を返そうとした。
    「何してんだ? お前」
    「ひ、ひださん……!」
    振り返るとそこには環が会いに来た飛田の姿があった。本人を目の前にすると環は言葉が出てこず、先に口を開いたのは飛田だった。
    「何の用だよ」
    「あの、えっと……。ちょっとお話ししたくて……」
    「……」
    飛田は無言で環を部屋に招き入れた。
    カーテンが閉められ外の光が入らず、部屋は暗い。相変わらず部屋の物は少なかった。
    「男と遊んでたんじゃないのか」
    飛田はコンビニで買ってきた弁当やらが入った袋をテーブルに置きながらそう言った。
    環は勢い良く首をブンブンと振る。
    「遊んでなんかないよ、響ちゃんの付き添いだよ」
    それは事実である。会ってみないかと言ったのも彼女である。
    「そのわりには随分楽しそうだったじゃねえか」
    彼は不機嫌そうな顔をやはりしており、深歩から聞いた話から本当の言葉の意味を分かっていても環は目を逸らすようにして俯いた。
    「…………。わたし、知ってるよ……?
    心配してくれてたんだよね……ありがとう」
    「…………」
    飛田は何も答えなかったが環は聞いてくれると悟り話を続ける。
    「わたし……ひださんにそのことを話したとき、気にしてないと思ったから……それがね、ちょっとだけ悲しくて……。だから怒ってくれて、嬉しかったんだよ」
    環が勇気を持って顔をあげると飛田も環を見ていて、少し意外そうな顔をしていた。環はちゃんと伝えることが出来てどこかホッとした。
    「はあ、お前がそんなに無防備だから、危なっかしくて見ていられねえ。
    いいか、好きでもねえ男にベタベタ触ったらな、そいつに気があるって思われてもおかしくねえんだよ。だから気をつけろ」
    「……」
    環は飛田のその言葉がまるで自分のことを気にかけてくれてるように思えた。そしてカフェで聞いた話から本心も感じ取ることが出来た。きっと彼はそれを気に入らないと思っているのだろう。
    環は無意識に彼に近付いていた。
    そして彼の頬に手を伸ばしそっと触れる。
    飛田は驚いたのか珍しく目を大きくした。
    「わたし、こういうことするのは……ひださんだけだよ」
    環の頬は赤くなっていた。飛田はその手を払おうとはしなかったが、突然その手を掴み離したと思うと環を自分の方に引き寄せた。バランスを崩した環は突然のことで彼の方に倒れ抱き止められる。
    彼は彼女の耳元に顔を寄せて囁いた。
    「――じゃあ、こういうことされても文句はねえってことだな」
    環は耳元で囁かれたその言葉にドキッと心臓が跳ねた。
    今までこういう接触はなかった二人だけに環の顔は真っ赤になり動けなかった。それでも会ったばかりのあの人とは違いそれよりももっと近い距離で身体が触れているのに嫌ではないしむしろ環の心臓の鼓動は高鳴ったままだ。
    「こ、こういうこと……?」
    彼は何にも言わずに彼女の顎を掴む。
    環はビクッと肩を揺らしたがそれは怖さから来るものではなかった。
    いやむしろ――。
    (わたし、ひださんになら……)
    環が目を閉じようとしたときだった。
    ぐうううぅ~~~~~~~~~
    と間の抜けた音が部屋に鳴り響いた。
    「…………」
    二人は一瞬何が起きたか分からず放心していたが、すぐに我に返ってはっとして環は自分のお腹を押さえた。そういえば公園でタピオカミルクティーを飲んだきりだったのを思い出すと同時に、
    「ぷっ、はははっ!」
    飛田は堪えきれないといった様子で大笑いをし始めた。
    「お前、まだまだガキだな」
    「わ、笑いでよお……」
    あまりにも恥ずかしい気持ちで環は若干涙目になっていた。
    「そんなに腹が空いてんならカフェ行くか」
    環は恥ずかしさに耐えながらうんと返すと飛田の後を追った。
    カフェまでの道、環は飛田の隣を歩きながらちらりと彼を見る。
    さっき抱き止められそして顎を掴まれて
    自分は目を閉じようとした。環の親友響が言ういい雰囲気だっただけに、その雰囲気を壊すように自分のお腹が鳴ってしまい嬉しい気持ち半分悲しい気持ちだった。

    カフェに着いてドアを開けると、
    「「「おめでとーー!」」」
    突然二人は祝福の声で出迎えられた。
    カフェにはまだ深歩と響がいた。
    「……」
    面倒臭い空気を察した飛田は背中を向け帰ろうとする。
    ガシッ
    この祝福の空気から質問責めに合うことを察知した環は一人にしないでと腕を掴んだ。
    結果、飛田は舌打ちをしてその場に残る。
    「うぜえな、お前ら」
    飛田はシッシッと二人を払う仕草をした。
    「深歩ちゃんに相談してたとは思えない態度だな」
    「そうだよねー信さん。わたしに感謝してくれてもいいんじゃない?」
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