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    AKtyan5560

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    AKtyan5560

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    イノゼロifマシュ
    運命の番のワスとマシュとオタは出会うい愛を育み軈てオタとワスが告白し番になる約束をする。マシュを気に入らないモブが悪意を企てそれに怒りに満ちるオタとワスがモブを制裁し番になり、祝福され軈て子供が出来るまで

    ※マシュとオタとワスの子供出ます
    ※モブがマシュを襲おうとしますが未遂です
    ※イノ0や兄弟にマシュが抱かれる表現あります
    ※マシュが二人と番になれるオメガです

    #オタマシュ
    #ワスマシュ

    ウインティーに誓う雲が優雅に泳ぐ青空を眺め街を歩く青年が一人マーケット通りを歩いていた。青年は人気店のゴブリンシュークリームの新作を並んで買うと、その場から離れ空を眺め食べ始める。平和な街の姿に平穏を謳歌する事に、城に居ては体験出来ない日常に満足し歩いていると、前から歩いて来た人に当たってしまう。視線を上げると顔を顰めるサングラスをした青年が、マッシュを訝しげに見ている。
    「おいテメェ何処見てんだ!」
    「すみません空見てました。あ、シュークリームついてる。すみません弁償します」
    青年は目の前のマッシュルームヘアーがそんなに悪い者には見えずに、溜息をひとつ付くとハンカチを出し服を軽く拭い呆れ声で答える。
    「はぁ……別に怪我したわけじゃねぇしもう良いわ」
    「そうですか?ラッキーけどお兄さん本当に大丈夫ですか」
    青年にそう問われた時、男は何か脈打つ物を感じ胸が高まる。まるで目の前の男が運命な様な、運命の番そうか彼がそう思った瞬間彼をもっと知りたくなった。此処で手放してはいけないと胸の奥で本能が叫ぶ、今彼を逃したら後悔するぞと叫ぶ自分に珍しく従う事にした。
    「詫びか…なら俺の買い物に付き合え」
    「お兄さんの買い物?」
    瞬間男は青空に吹き抜ける風の如く楽しげに笑い、青年はその男の笑みに胸が高鳴り頬を染める。
    「ワースで良いよ。お前は?」
    「……マッシュ・バーンデット」
    「マッシュ宜しくな!」
    そのマッシュにとってワースの眩しい限りの笑顔が太陽に重なり、マッシュの胸は大きく音を立てドキドキと響き始めるのだった。
    それからワースとマッシュはマーチェット通りを周り、クシャミコアラではワースが高得点を発揮し、露店のアクセサリー店ではワースがマッシュへアンクレットを買い、昼は通りでハンバーガーを食べ等一通り遊び回り時刻は夕刻になっていた。マッシュは帰宅を急がねば今度こそ暫く父に仕置され監禁されてしまうと危機すると、隣に歩くワースへと向い問いかける。
    「あの、僕徐々帰らないと父に怒られちゃいまして…」
    ワースと離れたくない、此一日で彼と大変仲良く為り兄弟と父と世話係の義祖父で形成されていたマッシュの世界は、大変大きく広がりを見せた。ワースが色々と細かい事を分かり易く教え、勉強が苦手なマッシュもつい聴き入る位には今日一日で色々な事を知って楽しんだくらいには彼との時間が楽しかったぐらいだ。そして彼の優しさに触れ離れたく無かった。だが父の言う事は絶対である。マッシュは彼と離れる決意を決め向き合う。
    「また遊ぼうぜマッシュ」
    ワースの幸せそうな笑みに、マッシュの目は軽く見開き多き頷いた。
    「はい!先越されちゃいましたね」
    「俺の方が年上だからなぁ!」
    揶揄う様なマッシュを撫でるワースに、あぁ離れたくないなと思うのだった。
    ワースは目の前のマッシュを見て、一日接して会って彼を知ったばかりでも分かる純粋無垢な穢れのない彼を抱いて、泣かせて汚したらどんなにこの渇きが満たされるだろうと想像する。が、この渇きや飢えが満たされる事は多分来ないのだろうと思うと胸を掻き毟りたくなる様な衝動に襲われた。目の前で幸せそうに薄く笑み手を振る青年を見遣る。
    あぁ…欲しいなと胸の奥が心底渇望した。

    後日あの出会いから少し経った後、マッシュは再び城を飛び出し脱走と言う名の外を又々満喫していたのだった。
    相も変わらず城を飛び出し、今度はマーチェット通りから少し離れた公園へ来ていた。ベンチに座り傍に寄る鳩を眺めながら、一人シュークリームを食べ公園を行き交う人々を眺めている。広い公園なだけあり、誰も気にせずに散歩連れの夫婦や、ジョギングする人等が通り過ぎるのをのんびりと眺めていると隣に大きな音を立て人が座る気配がしマッシュは其方を眺める。
    膝に腕を乗せ前屈みに俯く疲れた大人の若い男が座るのに、距離が些か近いなと思い暫く眺めていたが声を掛ける事にした。
    「あの」
    「…なんですか」
    「近いです」
    苛立った様に掛けられた低い声に、大人は大変なのかもと思うマッシュの次の言葉に緩慢に顔を上げた彼がマッシュとの距離を眺める様に視線を下に遣ると、一拍置いて距離を開ける。
    「失礼しました」
    居住まいを但しだが、項垂れる事を辞めない男の何かが気になりマッシュは声を掛ける事にした。
    「お兄さん疲れてるんですか?」
    「……だったら何ですか」
    「いや大人って皆大変なんだなと思いまして。仕事がキツイなら辞めれば良いのに、あけど辞められない役職もあるのか」
    男は語り掛ける様で独り言ちる青年の事が気になり男は其方を見遣る。前髪で眉が隠れた青年の、黄檗色の瞳に特徴的な髪型が無表情でそう御ちり、一人何かを考える様に俯き加減に地面を見詰めた。あぁ何故だかその瞳を此方に向かせたい、自分を見て欲しいと強く男は思い声を掛ける。更に言えば男が初対面にしては珍しく思った。耳心地の良い声をもっと聞きたいなど自分らしくないと思いながら男は青年へ問いかけた。
    「辞める事は出来ません。この役職は老わない限り永久に退職は来ない」
    「え、お兄さんてもしやブラック企業で働いてます?家も余っ程のブラックだけどお兄さんの所も大概では?」
    「…違う縫うぞその口を。大層な役職に着いてしまい、それからずっとこうだ」
    「お兄さん敬語砕けた」
    「煩いお前にはこれくらいで良い」
    「酷いんだー」
    マッシュはこの男との遣り取りが嫌では無かった。胸が温まる様な幸福感が湧き上がる遣り取りは何処か幸せで、胸が一杯になる程に男の一言一言に多幸感が湧き上がる。彼のひとつひとつに幸せになる空中に浮く、ふわふわとした様な感覚が胸に満ちて行く。マッシュは言葉に出来ないこの感覚が分からず、けど知ってしまったら戻れないとは何処かで感じていた。
    「お前と話ていると調子が狂う」
    男はこの青年と話ていると何処か平常の自身では居られず、何時も寄り悪態をついてしまう。照れ隠しからだと分かるそれは、男には制御出来なく同時に悟る運命の番だと本能が叫ぶのに、渇く様な飢えも同時に覚える。ああ、この青年が欲しい。今回限りで別れたくない、手に入れろと胸の中で暴れ回る仄暗い感情が男は意外にも嫌では無く受け入れているのに、自身はこんな面を持っていたのかと感心した。
    「お兄さん変ですね」
    「お前もな」
    クスリと笑いが漏れ出しお互いくふくふと笑い出す。あぁ、別れたくないなと思ったマッシュは、素直になれなそうな男へと提案する事にした。
    「また来週のこの時間に此処に来て下さい」
    「…来週は別に忙しくないから来てやる」
    「本当に?嬉しいです」
    無表情でファーンと言う青年に、「もっと嬉しそうにしろ」と小言を貰うマッシュは男が次に言った言葉に驚いた。
    「オーター・マドルだ」
    「マッシュ・バーンデットです」
    お互いベンチに座り前を向き顔を見ること無く答える。だが声は弾んでおり、マッシュは離れたくないな此処に居たいな、いて欲しいなと思いながら暫くベンチに座っていたのだ。
    マッシュが離れた所でオーターも離れる。
    数時間話あの意外と悪戯好きの青年が、純粋無垢でだが我が強く真っ直ぐ折れない芯を持った青年だと知った。あの素直で天邪鬼な口を開いて、絶え間無く喘がせ、屈服し中に出し孕ませ自分のものにした時、この飢える様な渇きは収まるのだろうかと思う。それでもこの渇きは永久に無くなる事は無いだろうと確信していた。あの青年を手に入れたくて喉を掻き毟る様な飢えに、オーターは晒されながら帰路へと着く。
    ああ、この手に囲いたいと心臓の更に奥が強く、強く渇望した。

    其れからマッシュは度々オーターとワースに会いに街に下りていた。城から抜け出す度に小言と仕置をされたが、其れ寄り二人に会う事がマッシュの胸を満たす程幸せな行為に気付き其れは誰にも邪魔をさせない程に、兄や父にすら止められない程幸せで幸福な時間ですらある。
    マッシュは二人に恋をしていた。それは本人が自覚を抱く程に大きく育ち、オメガとして兄や父に抱かれ無い日は二人を想い自身を慰める程には二人に恋をし胸を膨らませる程には。
    彼等と番たいな。彼等の番になれる人はどんなに幸せだろうなと、思考を巡らせる。マッシュは昔三男のエピデムに言われた言葉を思い出していた。
    『貴方の身体は​───────』
    それを思い出し本当にそうなったら良いなと思う程には、幸せだったのだ。

    その日マッシュはワースと待ち合わせをし、少し遠くの街に行こうと約束していた。待ち合わせ時間少し前に着くと未だワースは来ていなかった。見回すと足音が聞こえて来たのに前を見遣る。其処にはオーターとワースがマッシュの方に向い歩いて来ている光景が見えた。
    どうして二人が一緒にと期待と不安が入り混じる。二人が歩む道程がゆっくりと見え、早く着いて欲しいと願う程には緊張で喉が渇き、目の前に二人が遣って来た。
    「来たぜ、久しぶりだなマッシュ」
    「全く会いに来てやったんだ。少しは感謝しろ」
    マッシュは驚きに目を薄く開きながらオーターに問いかける。
    「…オーターさん、なんで」
    「話は後だ。少し揺れるぞ」
    瞬間その場からマッシュは消え、気づいたら目の前に綺麗な花々と街が見渡せる丘へと来ていた。花々と景色に少し胸が癒され、其れらを眺めていると後ろから声が掛かる。
    「マッシュこちらを向け」
    「俺とコイツから話があんだわ」
    マッシュが二人の方を向くと間を隔てる様に一つ風が吹き抜けて行く。二人の髪が揺れる光景を眺め、オーダーが意を決した様にマッシュへと向き合った。
    「お前と会った時、あの時胸が温まる様な心地に、好きなのだと実感している。お前が好きだマッシュ……愛してる」
    オーターが紅の薔薇の花束をマッシュへと差し出し、地面に汚れるのも気にせずに跪く。そのオーターらしくない姿にマッシュは驚き慌てると、今度はワースが意を決した様に声をかけてきた。
    「お前とあった日から好きになって、その日から寝ても醒めてもお前の事ばっかりで、この日から俺は弱くなった。お前に惚れている……好きだマッシュ」
    ワースが純白の薔薇の花束を出し兄と同じく地面に跪く。花束を渡すのにマッシュは驚き瞬間湧き上がる気持ちに、口をもごもご動かしながら二人を抱きしめる。
    「大好きですオーターさんもワースくんも!僕を二人の番にしてください!」
    「だが番とは一人しかなれないのでは」
    「そうだぜ俺達はどっちが選ばれても良いようにって」
    「僕は研究者の兄様に僕の番には二人までなれると言われました。きっと僕の運命なんでしょうね……オーターさんもワースくんも」
    幸せそうに笑うマッシュの言葉に、二人も顔を綻ばせ幸せだというように笑う。三人で声を出し笑い合い花々の香りに囲まれながワースがマッシュを持ち上げ回りだし、全身で幸福を体現するのをオーターも笑みながら眺める。
    幸福な空間がその場には広がり幸せを体現していた。

    まだ隠した重大な秘密を抱えながら。

    其れから暫くマッシュは咎められながらも相変わらず城を抜け出し、二人に会って蜜月を楽しんでいた。二人と時間が合う時に秘密裏に会っては、情事に及びマッシュは兄弟や父に抱かれていた以上の快楽と多幸感を味わいながら、幸せに胸を膨らませ日々を楽しんでいた。
    そして自身の秘密を知られては成らないと胸に強く抱きながら。何時か話さなくては成らない時が来る、だが今は幸せな時を歩んでいたい。だが背後からそれは本当の幸せなのかと囁く自身がいる、マッシュは二人に黙っている秘密が一人では抱えきれない程に重大な事にいえないでいた。
    そんな略々幸せな日々を過ごす中、マッシュは魔法学校に入る事になった。マッシュの重大な秘密に由来する事だが、マッシュは魔法が使えない。魔法が使えない事はこの国では重罪である。その様なマッシュが何故イーストン魔法学校に通うことになったのか、早く言えば成り行きである。イーストン魔法学校の校長と夜中の街で会い、色々ありマッシュのもうひとつの重大秘密を知っていた校長が学校に通わないかと言ったのだ。マッシュは学校と言うものに言った事が無い為、一度行ってみたかった今年から五男の兄も通う為に良いだろうと思い、父に聞いてみた所でマッシュを溺愛する兄弟全員と父とマッシュの大喧嘩に発展し、城が壊れ掛けたのはマッシュの嫌な思い出である。その様な経緯でマッシュは学校に通う事になり、現在オーターとワースを夜の寝静まる街へと呼び出し、報告する為に約束した場所へと現在向う最中だった。

    現在夜のマーチェット通り噴水広場へと着く。オーターとワースは既に着いておりマッシュが最後だったのだが、二人が手を上げるのにマッシュも手を振り返す。
    二人の目の前に行くとマッシュの頭をワースが掻き回す様に撫で、マッシュが制しする様に宙に手を伸ばすのにオーターが咳払いをし話を進めだした。
    「ン"ッ、で本題は何だ」
    オーターの言葉にマッシュを掻き回すのを辞めたワースも向き合い、マッシュは何事も無いように語り出す。
    「あ、僕学校通う事になりました」
    「学生だと思ってたが…何処に通うんだ」
    「イーストン魔法学校です」
    「高等部からの編入か?なら俺の後輩だな」
    「ワースくんの後輩とか遠巻きにされそうですね」
    「何だとコラァ生意気な後輩だなぁ!!悪い口はこれかぁ?」
    両頬を伸ばされマッシュが痛みを素直に訴えるが許されそうに無い。オーターはまた始まった子供達の遊びに、溜息を付くと再び軌道修正をするのに声を出すのだった。
    「はぁ……全くお前等は、イーストンて事は寮生活と言う事か」
    「そうですね」
    「………稀には逢いに行く」
    「え?イーストンて外部の人入れませんよね」
    「私は好きに出入り出来る立場だからな」
    マッシュがオーターの言葉にに少し目を張り、相変わらず変わらぬ表情で感激の声を洩らす。
    「実はオーターさんて凄い人?」
    「今更知ったのかよ。コイツはすげぇ立場だぞ」
    「ふん別にそこ迄では無い。少し権力を振り翳せるだけだ」
    マッシュは少し権力を振り翳すのは十分凄いのでは?と父を思い浮かべながらオーターを見たのだが、如何せん比較対象が父親の為に彼がどの立場な程に凄いのか分からない。その様な物なのかと、素直受け取ったが後にそれは大きな間違えだと知る事になる。
    それから少し話をし最後に触れるだけのキスを二人とし、名残惜しげに別れる事になった。マッシュはこの時自身の選んだ運命があれ程に大きく人生を変える等この時は思いもし依らなかったのだ。

    だからこそ帰り道縋ら一人寂しげに言ちる。

    「死にたくないな」

    と、それは夜空に広がる星へと消え、マッシュはその場から大きく空へ飛び上がると城へと戻るのだった。

    其れからマッシュはイーストン魔法学校へと入り、充実した日を暮らしていた。二日に一回はワースが逢いに来て、一週間に二回オーターも会いに来る。それはマッシュが友人のフィンやランス達と居る時に会いに来る時が多く、その他のアベルやレインと居る時等も稀にタイミング見ては現れ、まるで周りに威嚇し牽制する様に会いに来た。
    授業が終わり放課後フィン達と廊下を歩んで居る中で、偶然レインとも会いマッシュの監視役として話をしている時だった。オーターが現れたのは。
    「─────それで最近はどうだ」
    「まあまあです」
    「そうか」
    「兄様、兄様」
    「何だフィン今コイツと話して」
    「私が居ては悪い理由は有ると」
    突然廊下に響く革靴の音に聞こえて来た方にレインが振り返ると、コートを靡かせ歩み来る姿に面倒なのが来たと、レインが内心独り言ちるが顔には出ない。
    「オーターさん」
    「…オーターさんこの間振りですね。ちゃんと食べてますか?」
    「お前がいないと食事が味気ない」
    また始まった、と周りが睥睨する中始まった新婚夫婦の様な遣り取りに、レインは溜息を付く。自身がマッシュの監視役に着いたとオーターに会話の中で零した時から目の敵にする様に、マッシュと話してる所に現れた。実際レインはマッシュにその様な感情は抱いては居ないのにオーターは、マッシュの傍に誰かが居るのすら嫌らしい。それは弟のワース・マドルも同じで、レインやレアン寮の監督生アベルが話している時ですらワースは邪魔をして来る。お前の七魔牙の上司だろうがと思うが、伝わった事は無いのにレインは最近嫌気が指していた。
    話に夢中になる二人にレインは声を掛ける。
    「じゃあ俺は行く。ではオーターさん」
    「うす。またねレインくん」
    「私のマッシュを宜しくお願いしますね…レイン」
    "私"のと強調された言葉を聞きながら、今度こそレインは離れてから溜息をついたのだった。

    その遣り取りから二日後、マッシュは現在迷子になっていた。見た事ない所に来たと思い周りの景色を眺めていれば、前からアベルが歩いて来るのに声が掛かる。
    「おやまた迷子かい」
    「うす、ここ何処ですかね」
    「此処はレアン寮だよ」
    「また来ちゃいましたか」
    「そうだね。良かったら案内し​─────」
    「マッシュ偶然だなぁ!珍しいなレアンに居るの」
    「ワースくん久しぶりだね」
    「二日振りだな元気か?」
    アベルはでた、過保護その一と思うと遣り取りを見遣る。二日振りは久々なのかと疑問が残る中で、二人の会話を聞き所々おかしな所がありながらも、ワースがアベルに嫉妬して声を掛けて来るのは珍しく無い。周りに牽制する様に自分のオメガだと知らしめる様に、ワースがマッシュに濃いフェロモンを纏わせているのは学校のアルファの間では周知の事実だ。あのオーター・マドルすら彼に牽制する様にフェロモンを纏わせるのに、そういう気すら湧かない上にアベルはマッシュへその様な気は無い。度々無いと伝えるか、会う度威嚇される身にも慣れと思うがこの過保護な男には伝わないのだろうとアベルは思うと、馬に蹴られるのはごめんだと二人から離れる事にした。
    「ではワースに送って貰うと良い」
    「じゃあねアベルくん」
    「サヨナラアベル様、俺のマッシュを丁重に送り届けますわぁ」
    "俺"のと強調された言葉に今度こそアベルは離れ、母親に「困った奴だね母さん」と話しかけその場を離れるのだった。

    日々は過ぎて行き、アベル達七魔牙を倒し少しした後マッシュは魔法不前者と魔法局に知られてしまい魔法局へと来ていた。神覚者ライオ・グランツから男前判定を貰い帰ろうとする中、足元に砂が絡まるのに目を張りまさかと思い彼との会話が脳裏を過ぎる。『少し権力を振り翳せるだけだ』まさかと思った所で大量の砂に襲われ腕で庇い、開けた景色を見ると聞き慣れた声が聞こえて来た。
    「何解決したみたいになってるんですか?」
    目の前に現れたのは自身の恋人であり番のオーター・マドルその人、マッシュは他には聞こえない声で呟くように言った。
    「…少し所では無いでしょ…僕とは正反対だな」
    マッシュへ態と睥睨する様な目を向けるが、執着が渦巻く瞳にのにマッシュは態度には出さずに悟る。あれ態とこの様な態度を取っているのかと。
    「規則とは一人一人違う立場の人間を束ねるものです」
    眼鏡の淵を上げる瞳がマッシュを捉える。その瞳は甘い執着に渦巻き、今か今かと喉元に噛み付く獅子の様にマッシュを捕え隠す気満々だった。その為マッシュは普段と変わらないオーターの為に、とても安心しながら話を聞いていたのだ。
    「しかも魔法不全と隠しイーストン校に通うなど、死を以て償って貰いましょう」
    想ってない癖に。死は僕の社会的な死でしょうとマッシュは内心一人呟いた。
    「これは神覚者全員の総意だと思ってもらって構いません」
    それを言った貴方が真っ先に否定する癖に、あまり言うとワース君に言うよ。弟に嫌われるの嫌な癖に、とマッシュはまた独り言ちる。
    暫くオーターと押し問答をし、オーターに砂で殺されそうになるがマッシュは余裕だった。だって彼が大切に執着するマッシュ(僕)を殺す訳が無い筈だからと、内心マッシュは余裕綽々に呟いた。
    その時ライオとオーターの遣り取りに、レインの剣が飛んで来たのを見た時マッシュは思う。面倒な事になりそうだと。
    「ウォールバーグさん貴方の意見は分かります。ですが認められない」
    この時点でレインはオーターの対応に驚くと共にこれ、本物のオーター・マドルか?と思っていた。本当に普段牽制する程にマッシュを溺愛するオーター・マドルかと思い話を聞き遣る。さては魔法不全者だと知ってたなと、レインは疑いながら話を聞いていると、オーターは其の儘話を続け聞き進める。
    ウォールバーグが隣で震えてるの等レインは見ていない。
    「規則は守るためにあります。魔法不全者は処分すべきです」
    いや一番処分したくないのアンタだろう。アンタが一番此奴殺すの嫌だろう。周りにバレて無いからって好き勝手だな。またレインは一人オーターにツッコミを入れマッシュを見た。彼は彼で恋人に殺されそうになる中余裕そうにファーンと話を聞いている。流石普段から愛される自覚がある奴は違うならとレインは感心した。
    ウォールバーグが必死に表情を保ちながら、笑いが溢れ無い為に震えてる等、見えないと言う様にレイン視線を逸らした。
    ウォールバーグが頭を下げるのにレインもマッシュを庇い膝を付く。オーターの額に皺が寄ったのに、嫉妬からの理不尽を感じながらレインは一言言いたいのを我慢し言葉を紡ぐ。ウォールバーグが震えるのが更に悲愴を誘うが、レインは知っている。ジジイは唯笑うのを我慢しているだけだと。普段からオーターの牽制を見て浴びている筆頭は違うな、とレインは自分を棚に上げ思うのだった。
    「考え直す必要などない。魔法不全者は処分すべきだ。貴方達は感情ばかりが優先して合理性に欠ける」
    普段一番感情で動いているのは誰だと、レインは言いたくなった。等々隣のウォールバーグが吹き出そうとして咳で誤魔化すのに、睨み付けると顔を引き締めさせる。理不尽にも思える問答は続き、無邪気な淵源としての手駒として神覚者候補選抜試験に出る事と引き換えに、猶予を与える言質をオーターから取った後で校長が爆弾発言を落とす。
    「彼と無邪気な淵源の関係は確立された訳じゃが。ワシから一つ言わせてもらえば、彼は最も無邪気な淵源に近しい者と言えよう」
    「ウォールバーグさんそれは一体、彼は何なんですか」
    「彼は無邪気な淵源の六人目の息子じゃ」
    ライオの言葉にウォールバーグ放つ。場が静まり返り、息を飲む声が響く中唯眼鏡を上げる音が場違いに響いた。それに気づいたライオが声を掛ける。
    「オーター知っていたのか」
    「えぇ、知ってました」
    「何故言わなかった!!」
    オーターはライオの方に向かい何事も無かったかの様に平然と告げた。
    「番に不利になる事を言うわけ無いでしょう」
    「「「「「番ぃ!?!?!?」」」」」
    「あぁ、だからウォールバーグさんとレインがさっきからおかしかったのか。成程」
    大声を上げる神覚者達に場違いにカルドが解決した様に呟く。ウォールバーグが漸く笑い声を上げるのに、レインは睥睨した様にオーターに悪態着いた。
    「………どの口が」
    「仕方ないでしょうあの場ではあの様に言わないと」
    「番!?え!待ってオーターに番が居るなんて知らなかったんだけど!?」
    「ライオさん、オーターさんのは番の予定です。まだです」
    「余計な事は言うなレインエイムズ」
    「本音を言ったまでだ」
    先程の場が一転騒ぎ出し収まらない神覚者達に、マッシュが一言呟く。
    「だから嫌な予感がしたんだ」
    「アンタそれだけなの!?!?この状況で!?てか知ってたの!?」
    カイセのツッコミがこの場に響き渡った。

    その日の夜マッシュは夜空を見ていると後ろから気配を感じ振り返る。
    「来ると思いましたよ」
    そこにはオーターが無表情に何処か悲しげな表情で立っていた。マッシュはその姿に薄く笑いオーターを見詰める。
    「……昼間はすまなかった」
    「全て知っていたんですね」
    「あぁ…あの後ワースと会う機会があり、少ない会話の中でマッシュの名前が出た時にお互い確かめ、そしてお前の事を徹底的に調べ上げた。表の戸籍には名前が無かったからな、なら裏社会の人間だと洗ったら辿り着いたんだ」
    オーターの答えにマッシュは幸せそうに笑い呟く。その言葉にオーターは目を見張った。
    「僕は幸せものだ。魔法不全者だと知っても殺されなかったのだから」
    「お前を知ったのならそんな事は出来ないだろう」
    オーターがマッシュが抱きしめる。何時の間にか鳴り響く靴音も加わり、マッシュは手を伸ばし二人の頭を撫でた。
    「ワースくんも話聞いてください?」
    「おう、兄貴の情けねぇ話聞かせろよ」
    「まて何時からあの場を見ていた」
    「俺は話は聞いてねぇ。唯外から見てただけだ」
    マッシュがあの時の状況の話をする頃には、腹を抱え笑うワースが出来上がっていた。オーターが無表情で眼鏡を上げる。
    「あーっはっはっは!!!!兄貴が!!あの兄貴が!!」
    大声で波を流し笑うワースに、オーターが耳を染め視線を下に落とす。マッシュは幸せそうに何時もの表情でその光景を見詰めていた。どうかこの光景を失いたくない、なら矢張り父を倒すしか道は無いのだと胸に決意を秘める。
    「……死にたくないな」
    マッシュの小さく呟いた言葉に、二人が一気に振り返る。マッシュに向き合う二人の瞳が座り出したのに、地雷を踏んだと気づいたマッシュは壁に一歩後退った。
    一歩ずつ詰められる足に震えるのを耐えながら、等々壁に足が当たってしまう。瞬間両脇を塞ぐ様にオーターとワースの片手がマッシュの顔の横に付き、目の前には憤慨な表情を浮かべる二人が顔や首筋に血管を浮かばせ立っていた。
    「……死にたくないとはどういうことだ」
    「…詳しく言えるよなぁ?」
    マッシュは諦めた様に斜め下を向くと、視線を下に向け語り出した事に二人は静かに聞いた。
    「僕はお父様が不老不死になる為に作られた子供です。造体禁忌魔法、血の繋がる者の心臓を六個集め身体に取り込むと不老不死になる魔法です。僕はお父様の為に造られた心臓を育てる媒介と言われ育って来ました。
    だけど愛されていたのは実感してます。
    任務には出た事は無いしそれは魔法不全者だから役に経たないと思われたのか、他の要因か分からないですけどね。
    オメガだからと性処理紛いの行為を妊娠しない様に薬盛ってされていたけど、それでも愛は合ったんだろうなて思うんです。
    それにじいちゃんが居たから僕は生きて来られた。赤ん坊の時逃げ出してじいちゃんと共に連れ戻され、城で僕を育て常識や知識を与えてくれた養祖父が居たから僕は生きて来られた。じいちゃんの為に生きようと思ったんです。
    オーターさんとワースくんに出会ってから、僕は少しだけ思うようになりました。死にたくないなって。覚悟が足りなかったのは僕の方だ」
    マッシュが全て語る頃には声も下がり、話終わり目の前を見ると、オーターとワースの怒気に満ちた顔が目に入りマッシュは真っ直ぐ見詰めた。
    「…………マッシュ今直ぐ決めろ。私達と生きるか」
    「父親を殺すかをなぁ…………」
    マッシュは恐怖もあるが、同時に生きて良いのかとも思った。父を倒す決意はした筈だった、だが彼等と離れるのが、番と離れる事がこんなにも辛い事だとは思わず死ぬ覚悟はしていたのは、生きて行く覚悟を決めなかったのはマッシュの方だったのかも知れない。
    「………僕生きて良いんですか」
    「お前が生きなければ私達が死ぬだけだ」
    「お前の掌に俺達の命が乗ってんだぞ」
    マッシュは眦に浮かべた涙を静かに流しながら呟いた。
    「………僕生きます。二人と生きる為に、僕の番の為に生きます」
    涙を静かに流すマッシュをオーターとワースが抱きしめる。そして再び二人は決意を固めたのだった。絶対に何があろうと命寄り大切なマッシュ(運命の番)を死なせるかと、胸に堅く決意をその胸に秘めマッシュを強く抱きしめた。

    それから色々ありマッシュは父、無邪気な淵源を倒し国に平和が訪れた。不老不死に拘らず会心した父はその後獄中で兄弟と静かに過ごし、マッシュも顔見せに行き話をしたのだ。後に神覚者の従属になる父と兄弟達に、神覚者に選ばれたマッシュはその後無邪気な淵源と兄弟達にオーターとワースを紹介しに行った。その時獄中が大変な事になり、淡やヘカテリス監獄崩壊一歩手間になった事を此処に記とく。

    その日はマッシュの周りに珍しく友人達が用事があり皆居なく、迷子になりながらも廊下を歩るいていた時だった。背後から付け回す様な気配を先程から感じ曲がり道で撒こうとするが、目の前に人が待ち伏せていたのにやられたと悟る。目の前に立つ男が語り出す。どうやらマッシュを気に入らない者達らしいと言葉から悟った。
    「お前神覚者に選ばれたからって調子のってんだろ。魔法不全者でイノセントゼロの息子の癖に、お前なんて居ない方が世の為だ!」
    「お前オメガなんだろ?なら今からここで乱交しても文句は言えないよなァ?」
    男達の下卑た嘲笑いが廊下に響き渡り、マッシュは力加減を傷付けない為に乗り切るにはどうしたらと考える。魔法が放たれ避けるが、次々と放れる魔法に避けるのも限界が来て一つ当たってしまう。顬から流れる血に目の前の生徒を見ると、全員で捨て身で掛かってくる者達がいた。受け流していたが、軈て押し倒されそうになり手を掴みどうにか耐えるが、足や腹を抑えられ体制を崩されそうになる。目の前から拳が頬を目掛けて飛んで来るのに、内心ワースとオーターの名を思い浮かべた。
    『ワースくん…オーターさん……たすけて……』
    瞬間目の前に立つ見覚えのある背中と、背後に感じる温もりにマッシュはやっと安心した様にその体を預けたのだ。
    「貴様ら誰のものに手を出したのか分かっているのか」
    マッシュが今まで聞いた事無いほどに、低く氷の様に鋭いオーターの声が辺に響き渡る。背後からマッシュを守る様に低くワースのドスの効いた声が響く。マッシュは安心し身を委ねると共に重苦しい二人のフェロモンに、強制的に発情状態に陥っていた。
    「俺達の番に手を出したんだ…覚悟は出来てんだろうな?あ"ぁ"!?」
    身体が暑く荒くなるマッシュの呼吸に、オーターとワースは気付くも先ずは制裁が先だと魔法を放つ。砂の魔法を出し男達の足や掌を刺していく。逃げ回りだが砂の壁が立ち塞がり、魔法も効かない攻撃に何度も指される腕や足全体は血に染まり絶叫が響き渡る。
    「マッドロス」
    ワースも次々泥人形で攻撃しては、泥溜まりに来る生徒を串刺しにし辺りは忽ち阿鼻叫喚へと化した。此の儘では先生が来てワースとオーターに疑いが掛けられてしまう。重い身体を動かしマッシュは荒い息を吐きながら二人のズボンを握った。
    「もう辞めてください。これ以上は死んじゃう…!」
    瞬間怒りに満ちたオーターとワースがマッシュの方を向き、その様な怒りをマッシュ自身に向けられた事が無い為に肩が跳ねるが負けじと見詰め返す。
    「これ以上は死んじゃいます」
    「お前はこんな下衆を庇うのか」
    「いくらお前の頼みでも引けない時があるんだわ」

    「違う!!!」

    マッシュの珍しい大声にオーターとワースは驚き、聞く体勢へと入る。マッシュの前に膝を着き彼の頬にオーターとワースは片方ずつ手を伸ばし、安心する様に撫でながら俯くマッシュの話を聞く。
    「相手が死んだりしたら、オーターさんとワースくんが捕まっちゃう。捕まったら会えなくなっちゃう!僕は二人と会えないのは嫌だ!」
    マッシュにしては珍しく昂り叫ぶ様に言った言葉に、オーターとワースの目が覚める。この恋人(番)の為にした事で自身が捕まっては意味が無いでは無いか。オーターはマッシュを姫抱きに抱き上げると、攻撃を止め男達へと言葉を放った。
    「お前らの所業は魔法局が決める。覚悟するんだな」
    突然止んだ攻撃と、その場から魔法で消えた三人に男の一人がヘタリ込むと足音が聞こえて来る音に教師が飛び込んで来る。
    「先生!こっちに神覚者の英雄様が囲まれて!」
    「貴方達何をしているのですか!!……これはどういうことで?」
    その場には血塗れの男達だけが残されており、疑問に思う生徒と教師に、魔法鏡で全てを見ていたウォールバーグはどうする事かと頭を悩ませるのだった。

    瞬間、着いた所はマッシュが見慣れた寝室で二人が靴を投げ捨てる様に脱ぐと、オーターとワースがマッシュがマッシュの靴も脱がし投げ捨てベッドへと乱雑に上がり押し倒す。
    発情状態に入ったマッシュに、ラット状態に陥るオーターとワースが荒い息を吐き出しマッシュを見詰める。
    「アイツ等に触られた場所教えろ!」
    ワースがマッシュに問い掛ける言葉に、マッシュは呟くように返した。
    「頬と足と腕です……」
    困惑に染まる表情のマッシュのロープを荒々しく脱がし、ワースが広いベッドに投げ捨てると、オーターが背後からシャツの釦を荒々しく脱がしネクタイを振りほどくと、ワースがスラックスのベルトを音を立て解き投げ捨てる。
    産まれたての姿になったマッシュの腕や足に痕を付けていき、顔中にキスの雨を降らせる二人にマッシュは嫉妬かと思うと同時に声に出ていた。
    「もしや嫉妬ですか?」
    二人の手が止まり溜息を吐くオーターが額に手を当て、ワースが呆れた様に呟く。マッシュはその二人の反応が分からずに疑問に思うと、オーターとワースが呆れた様に言葉を返した。
    「お前さぁ今それ言うか?」
    「ムードという物があるだろう」
    「ムードなんて僕分かりませんもん」
    溜息を吐いてマッシュの言葉に少し落ち着いた二人は、マッシュに向き合い不安そうに問いかける。
    「お前が今回の様に悪意に晒されないとも限らない。だからお前を今回番にしたいのだが…良いか」
    「お前が嫌ならしない。まだ待つことにするよ」
    二人の瞳が不安げに揺れるのに、マッシュは手を伸ばし頬を撫でる。安心する様に薄く笑うと、このマッシュに対して何処までも過保護な二人に自身の素直に思っている事を言った。
    「僕は二人のです。

    ​─────だから僕を噛んで二人のものにして下さい」
    マッシュの言葉に理性の切れたオーターとワースが、マッシュに噛み付く様なキスをし怠惰な行為が始まりを告げる。これからは大人の時間である。マッシュも子供から大人になろう。
    ベッドで乱れ合う三人は睦み会い閨を重ねる。眠るのにはまだ早い外はまだ明るいのだから。

    行為は進み息を荒く吐きマッシュを前後から囲い進める二人が、マッシュの喉元と項を舐める。マッシュはその痺れる様な甘い感覚に二人の頭に手を伸ばすと、意を決した様にオーターとワースが同時に噛み付いた。血が滲む程に強く噛み付き、身体が描き変わる様にマッシュの中に二人の情報が刻まれる。その甘い多幸感が頭に湧き上がる様な痺れに、あぁ等々二人のものになれたのだとマッシュは思い幸福感が身体を満たしたのだ。
    そんなマッシュの様子を見たオーターとワースは、マッシュが自分達のものになったのに独占欲を募らせていた。重く常人なら耐えられない様な執着を向け、ああこの手にやっと手に入って来たと仄暗い感情が湧き上がる。もう誰に取られると心配する事は要らない、だって死んでも手放さないのだから。輪廻転生どこに居ようと、例え世界が違おうと見つけ出してやると決意を秘めマッシュの喉元と項をゆっくりと舐めるのだった。

    その後番になったマッシュは周りに報告すると、泣いて喜ばれた。特にフィンには号泣され、ランスやドットも安心した様子に、フィンが「もうあの牽制に晒されなくてすむね!」とフィンが何か良く分からない事を言っていたが、マッシュは気にせずに流していた。
    次にアベルやレインにも会った時に言うと、安心した様に息を吐く。アベルには「良かったね」と言葉を貰い、レインには頭を撫でられマッシュは表情は変わる事は無いが喜んだ。アベルとレインは思った。是で少しは牽制が止めば良いけどと、唯無くならない所か更に酷くなる予感がするのを感じた二人は、未来の自分に任せ考えるのをやめたのだ。
    オーターも神覚者に知られ、ライオには酒を貰いか、カルドには揶揄われるも高級蜂蜜を貰うと、あのレナトスからも祝辞を貰うった。余り一人になる時間が無かったのだが、偶にはこの様な時間も良いなと体感し、それもこれもマッシュが居たからだと珈琲を飲んだのだった。
    ワースも七魔牙の仲間から祝われ、アベルから高級な好物のフルーツポンチを貰い、アビスからは泣いて喜ばれマッシュを泣かしたら切り刻むからなた宣言を受け取る。何やかんやそんな時間も過ぎ、一人部屋に居た時マッシュと合わなければこんな時は無かったのだと思うと、笑みが溢れ外を眺めるのだ。


    10年後​───────
    トントンとリズム良く俎板で包丁を切る音が響く。グツグツと鍋の煮る音も響き、スープを味見すると火を止めた。手を洗い徐々帰って来るだろう人物を思い盛り付けを進めると、玄関の開いた音にエプロンをしていた人物、マッシュはパタパタと玄関へと走り向かう。
    「はぁーただいま」
    「…………マッシュ」
    「おかえりなさいワースくんオーターさん。鞄とコート預かりますね」
    ネクタイを弛めるワースと、多忙の過労からマッシュを抱きしめ息を吸い込むオーターのコートを取りコート掛けにかけると、ワースのコートも受け取り掛ける。暫くしオーターが満足したのか離れ、居住まいを正した所でバタバタと足音が聞こえて来たのに目を向けた。
    「父様ーーー!!!」
    「お父さ〜ん!!」
    「父さん!!」
    笑みを浮かべるオーターとワースが子供達を受け止めると優しげに声を掛ける。マッシュは子供達の頭を撫でた。
    「ただいま」
    「良い子にしてたかぁ」
    「うん!してたよ!」
    「今日ね!先生とお歌歌ったんだよ!」
    「魔法の授業でね!」
    勢い良く話し出す子供達にマッシュは諭す様に問い掛ける。
    「お父さん達が帰って来たら言うことがあるでしょ」
    マッシュの言葉に子供達は満面の笑みを浮かべ大きな声で笑う。
    「「「おかえりなさい!!!」」」
    そんな幸せなマドル家の日常が此処には広がっていた。

    夜寝支度を済ませ、オーターとワースに挟まれ間に居るマッシュが腹を撫でベッドに入ろうとしない様子に二人が声を掛ける。
    「どうした寝ないのか」
    「早く入らないと風邪引くぞ」
    マッシュが撫でていた手を止め口を開く。
    「できました」
    「は?」
    「え」
    「だから四人目できたんです」
    マッシュの言葉に絶句に口を開ける二人に、一人話を進めるマッシュがいた。
    「今度はどっちでしょうね」
    「おいおいちょっと待て」
    「四人目とは今回のヒートでか?」
    「お医者さんの様子ではそうみたいですよ」
    オーターとワースは深く息を吐くと、マッシュの撫でる手の上からオーターも手を重ね、ワースは腰を支える様に手を添える。
    「どっちに似ても可愛いだろうな」
    「今度はマッシュに似てるのがいいなぁ」
    「私もだ」
    「もうどっちに似てるとか話してる…」
    マッシュも布団に入り、オーターがベッドサイドのランプを消すと小声で語り出す。
    「暫く負担の無いようにしなくてはな」
    「俺達の家事も増やすわ」
    「これ以上負担出来ませんよ」
    「お前の身体のが大切だ」
    「そうだ俺達に任せろ」
    オーターとワースの言葉を子守唄にマッシュの瞼が段々下がっていく。
    「……じゃあそうします」
    「…あぁそうしろ」
    「…もう眠れよな」
    マッシュの瞼が下がり最後の言葉を絞り出す様に言葉を紡ぐ。
    「僕…幸せです」
    そう呟き眠るマッシュの言葉にオーターとワースは幸せそうに笑い答えた。
    「……それは私達の言葉だ」
    「…お前がこんな夢みたいな幸せを見せたんだ」
    そう呟いたオーターとワースはマッシュを見詰め目を瞑る。
    もう、手放す事無い大切な運命の番の手を取りながら、この幸せを噛み締め眠りにつくのだった。

    その日マッシュは夢に一人の子供が出てきた。
    草原が広がる場所に自身に似た子供が立っている。少し癖っけの顔は自身の生き写しの様に似た子供は、マッシュの目の前に来ると一言呟いた。
    「僕魔法が無いんだ。お母さんも無いの?」
    「なんと僕も無いです」
    「そうなんだ、魔法が無いとこの世界は大変かな?」
    「そうですね。けれどお母さんもお父さんも頑張ってそんな世界を変えました」
    マッシュがそう言うと子供は幸せそうに笑い告げる。
    「僕お母さんの所に生まれて良かった」
    マッシュはその言葉を聞き意識が覚醒に導かれゆっくりと起き上がった。記憶にある夢を思い出し、隣に眠るオーターとワースに問い掛ける。
    「今回は僕に似た前途多難そうな子でしたよ」
    そう幸せそうに呟きオーターとワースの頬を一つ撫でると、もう一眠りするのにベッドに入るのだった。
    『早くこの世界においで愛しい子、オーターさんもワースくんも僕も皆君が生まれるのを祝福してるからね』
    マッシュはそう思いまた眠りへと着く。
    鳥の声が窓から聞こえて来る。休日の気持ちの良い朝だった。


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    AKtyan5560

    DONEイノゼロifマシュ
    運命の番のワスとマシュとオタは出会うい愛を育み軈てオタとワスが告白し番になる約束をする。マシュを気に入らないモブが悪意を企てそれに怒りに満ちるオタとワスがモブを制裁し番になり、祝福され軈て子供が出来るまで

    ※マシュとオタとワスの子供出ます
    ※モブがマシュを襲おうとしますが未遂です
    ※イノ0や兄弟にマシュが抱かれる表現あります
    ※マシュが二人と番になれるオメガです
    ウインティーに誓う雲が優雅に泳ぐ青空を眺め街を歩く青年が一人マーケット通りを歩いていた。青年は人気店のゴブリンシュークリームの新作を並んで買うと、その場から離れ空を眺め食べ始める。平和な街の姿に平穏を謳歌する事に、城に居ては体験出来ない日常に満足し歩いていると、前から歩いて来た人に当たってしまう。視線を上げると顔を顰めるサングラスをした青年が、マッシュを訝しげに見ている。
    「おいテメェ何処見てんだ!」
    「すみません空見てました。あ、シュークリームついてる。すみません弁償します」
    青年は目の前のマッシュルームヘアーがそんなに悪い者には見えずに、溜息をひとつ付くとハンカチを出し服を軽く拭い呆れ声で答える。
    「はぁ……別に怪我したわけじゃねぇしもう良いわ」
    16861

    AKtyan5560

    DONEイノ0マッシュがイーストンに潜入で入学す事になる。魔法不全者と隠し平和に暮らすマッシュは、毎週休日遊ぶオーターという相手がいた。身分を偽るマッシュはオーターに恋をし、オーターも恋をする。だがマッシュは生きる事を諦めており、色々あり全てがバレてオーターはマッシュを救う決意をする

    ※オーターの愛が重い
    ※イノ0マシュ
    ※イノ0マシュ愛され
    ※マシュ愛され多め
    胡蝶蘭が花開く「マッシュお前はイーストン校に潜入して来い」
    ある日父親から下された命令は、マッシュの運命を大きく揺るがす事になったのだ。魔法不全者なマッシュが、名門魔法学校イーストン校に入学する経緯は、ドミナがヴァルキスに入学が父親のシリルから下された時に、同時にイーストン校への監視も欲しかったとしてマッシュが抜擢された。幸いマッシュは任務が余り無く、神覚者に顔も知られて居ずに、何より鍛え抜かれ魔法不全者でも兄弟達を上回る力を示したマッシュが、魔法不全者だと知られずに通う事を条件に出されイーストン校へと行く事になった。
    その時にマッシュを愛する四人の兄弟達がマッシュを掴んで、抱きしめて離さず大変だったが自身で何とかし事なきを得地上へと、数年前に歳で降りていたレグロの元へと向かったのだ。
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    AKtyan5560

    DONE某殺人鬼の子孫のパロなんですが本編を知らなくても読めます。
    水木の家系には殺人鬼がいた。史上最悪の一人に数えられるその人物は水木を呪い人を殺せと囁く。村へ行く中で水木の中に湧き上がる殺人衝動が限界になり、ゲゲ郎へと話してしまう。ゲゲ郎はその殺人の真似事の行為を受け止めると言と水木に言った。
    ※水木の先祖に殺人鬼がいる
    ※水木に呪いがある
    ※水木が望んでない殺人衝があり
    ※父の首を水が絞める
    のろいあいむかしむかしある国で、四百人を殺した快楽殺人鬼がいた。その殺人鬼は二本の鎖を使い、長い鎖で吊し上げ動けなくし、もう一本の鎖で喉元をゆるりと絞めながら段々と強くしていき、最後には息が止まり死ぬ程の苦しみ藻掻く様を楽しんでいた。男は後の未来で映画にもなる程の最悪の殺人鬼の一人に数えられ、現代に語り継がれている。
    時は昭和三十一年血液銀行に勤める男がいた。
    男は兵隊上がりで祖国に帰ると国に絶望し、成り上がろうと野心を持ち今迄やって来た。そしてそれは彼の中に眠る"ある衝動"も強めて行った。
    世の中にはある能力を受け継いだ殺人鬼の子孫達が存在する。世間の人達は知らず、醜聞と言う組織に管理されたその子孫達にはある共通点があり、過去に名のある殺人鬼が居た事だ。
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    ※モブがマシュを襲おうとしますが未遂です
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    ※マシュが二人と番になれるオメガです
    ウインティーに誓う雲が優雅に泳ぐ青空を眺め街を歩く青年が一人マーケット通りを歩いていた。青年は人気店のゴブリンシュークリームの新作を並んで買うと、その場から離れ空を眺め食べ始める。平和な街の姿に平穏を謳歌する事に、城に居ては体験出来ない日常に満足し歩いていると、前から歩いて来た人に当たってしまう。視線を上げると顔を顰めるサングラスをした青年が、マッシュを訝しげに見ている。
    「おいテメェ何処見てんだ!」
    「すみません空見てました。あ、シュークリームついてる。すみません弁償します」
    青年は目の前のマッシュルームヘアーがそんなに悪い者には見えずに、溜息をひとつ付くとハンカチを出し服を軽く拭い呆れ声で答える。
    「はぁ……別に怪我したわけじゃねぇしもう良いわ」
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    DONEイノ0マッシュがイーストンに潜入で入学す事になる。魔法不全者と隠し平和に暮らすマッシュは、毎週休日遊ぶオーターという相手がいた。身分を偽るマッシュはオーターに恋をし、オーターも恋をする。だがマッシュは生きる事を諦めており、色々あり全てがバレてオーターはマッシュを救う決意をする

    ※オーターの愛が重い
    ※イノ0マシュ
    ※イノ0マシュ愛され
    ※マシュ愛され多め
    胡蝶蘭が花開く「マッシュお前はイーストン校に潜入して来い」
    ある日父親から下された命令は、マッシュの運命を大きく揺るがす事になったのだ。魔法不全者なマッシュが、名門魔法学校イーストン校に入学する経緯は、ドミナがヴァルキスに入学が父親のシリルから下された時に、同時にイーストン校への監視も欲しかったとしてマッシュが抜擢された。幸いマッシュは任務が余り無く、神覚者に顔も知られて居ずに、何より鍛え抜かれ魔法不全者でも兄弟達を上回る力を示したマッシュが、魔法不全者だと知られずに通う事を条件に出されイーストン校へと行く事になった。
    その時にマッシュを愛する四人の兄弟達がマッシュを掴んで、抱きしめて離さず大変だったが自身で何とかし事なきを得地上へと、数年前に歳で降りていたレグロの元へと向かったのだ。
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