肉食獣は小動物を喰らう光が注ぐ朝君と歩む毎日は美しく幸せで、絶対ゴールを決めると競い合う毎日が刺激的で、そして君と人生を歩むと決めた日最高の日を、一生忘れないだろう。
海外の大学に通う潔は、専攻講義を聞きながら後半の練習の事を考えていた。今日は何をやったら良いだろうと、練習メニューを組み立てていると講義が終わり部屋を出る。大学の人気の無いベンチで手作りの弁当を食べていると、影が出来て彼が来た事を知った。
「凪!」
潔の声に何時もの無表情で凪は隣に座ると、潔の髪を梳き撫で応える。
「潔終わったよ」
凪の講義も終わり、潔の作った弁当を食べ始める凪に潔は優越感を感じると、凪が美味しそうに食べるのに潔も嬉しい気持ちで箸を進めて行く。凪とのご飯は美味しく、食べ終わると自然とサッカーの話しになるのは、お互いサッカーを本気でしているからだろうなと思いながら、凪といる心地の良い時間に浸る。
潔は凪といると気持ちが楽になり、気分が上がるのに潔は気づかない。だが凪はそれに気づき潔に深く重い執着を抱いているのを潔は知らない。
一日が終わり潔と凪は練習の疲れに浸りながら帰る。隣同士の部屋に凪と潔は別々に部屋に入り、潔が夕飯を作っていると、後ろから抱きしめるいつもの感覚に凪が来たのだと気づく。
今日は天ぷらを作り、上がった人参の掻揚げを息を繰り返し吹き冷ますと、凪の口元へと持って行き、凪はパクリと食べたそれに感想を返す。
「美味いよ」
ゴクリと飲み込み返されたその答えに、潔が嬉しそうに笑うのに、凪は胸に広がるふわふわとした幸せな気分と、独占欲を隠しながら潔の髪を撫でる。凪は潔を可愛い小動物のように感じている節がある。小動物は生きるために知恵を使い進化し、だが大きな肉食獣も顔負けの敵が来たら立ち向かい威嚇する姿に、時には肉食獣にも勝つ姿が、ストライカーの潔のエゴイズムだと思っている。舐めて掛かる無かれ、彼が世界一のストライカーだと凪は確信している。昨年ゴールデンブーツを取った潔は、世界に名を知られ注目され、凪も次世代のストライカーとして名を広めていた。潔の隣に立つのが目標の凪にとって、同チームになるのは幸せな事である。
だが凪にとって邪魔な存在は威嚇し、けん制し時には消す事が凪のエゴイズムでもある。潔に近づく物は潔が気づく前に排除する。凪は潔が恋愛の意味で好きでずっと片思いしているのだ。
出来た天ぷらを食べ終わり、2人でテレビを眺めていると眠くなってきた潔に凪は声をかける。
「眠い潔」
「うぅん……まだ…ねない……」
「眠いねベットに行こう」
凪は潔をベットに寝かせると、自分も入り後ろから抱きしめ眠る。暗い部屋の中直ぐに聞こえる寝息に、凪は潔を見つめたまま落ちる瞼に身を任せた。
その日は快晴で日差しが気持ち良い日だった。
練習が休みで大学の校内に残りながら、凪が潔を後ろから抱きしめる。芝の上に座り凪が抱きしめる体制に潔は雲を眺めていると、凪が声をかけてきた。その声は悲しそうにまるで泣いてる子供のような声だった。
「潔……」
「どうした凪?」
凪の声はどこか悲しそうで、いつもより低いその声に潔は凪の方に向き頬に手を伸ばす。下がる凪の眉に皺を寄せ、凪が絞り出すように出す声に潔は胸が締め付けられるようだった。
「俺のこの気持ちはどうしたら良いの?」
凪の下がる目に潔はどうすることも出来なく、凪の意図が分からないが何故か高鳴る胸に、凪の顔を見てると頬が熱くなる。意味が分からない状態に凪に抱きしめられている所が異様に熱を持つ。この熱はなんだ、なんだこの感情は、何も分からない潔の感覚に潔の辞書は答えを知らない。
凪に触れられる所が熱い。
凪はふにゃりと優しげな顔で笑うと潔の頭を撫で応える。
「潔は可愛いね」
潔の顔は林檎のように真っ赤に染まっていた。