黒猫専用マタタビのお届け物です「半田、顔色が悪いぞ。残りは私たちがやるから少し寝てきたらどうだ」
パチパチとキーボードに指を走らせる。青い液晶画面に躍る文字の羅列が目を通して頭を埋め尽くす。霞む視界。鉛を注ぎ込んだ様に重く痛む頭に顔をしかめながら、半田は心ここにあらずな声で「……ああ」とだけ返した。
「ああ、って、本当に分かっているのか? さっきからそう言っている割にちっとも休んでいないじゃないか」
「そうですよ先輩。ほら、資料なら僕が預かりますから」
年下の上司と、親しい後輩の声は鼓膜を震わせたものの単なる音声として処理され、半田の意識を素通りしていた。彼はデスクの上に必要な資料を几帳面に並べ、猛烈な勢いでブラインドタッチしながら気の無い声を漏らした。
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