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    akaihonoga39391

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    センシティブチャレンジ2日目。
    キスすらしたことがないのに、ネイキッドチャレンジをしようとして失敗するアシュビリです。色々省いて書いちゃったので、また今度加筆入れます。

    目は口ほどに物を言う 裸なんて、着替えで見慣れている。
     そもそも男同士、服を脱ぐのも裸体を見られるのも、何ら恥ずかしいことはないだろう──そんなことを軽々しく思っていた自分が、今はまるで別人のように感じられた。ビリーは泣きたい気持ちにかられながら、目の前で動けなくなっている恋人の目から自身の体を隠すように両腕を掻き抱いた。



     ニューミリオンが誇る情報屋、ビリー・ワイズにはどうしても掴めない情報があった。上層部の汚職から、ヒーローたちの下着の色まで熟知しているビリーをもってしても掴めない情報──それは、恋人としてのアッシュの思考回路だった。
     付き合い始めてそこそこの月日が経ち、恋人らしい触れ合いは数多くしてきた。グローブなしで手を繋いだり、膝枕をしてもらいながら頭を撫でられたりと、順調に段階を踏んでいると思う。
     しかし、問題はここからだった。いい雰囲気の中抱きしめられ、熱い眼差しに囚われたとしても、いつだってその先はないのだ。体を重ねることはおろか、キスの一つもないときている。
    「……もしかして、オイラに魅力が足りない?」
     脱衣所に備え付けられた鏡の中、もう一人の自分が不安げに眉を下げていた。長年見慣れた自身の裸体をしげしげと眺めながら、ビリーはうーんと首を傾げる。ヒーロー業務や日々のトレーニングの成果もあって、以前よりもだいぶ筋肉はついてきた。縦に割れていただけの腹筋だって、よく見ればうっすらと横の筋も見えてきている。貧相さはないと自負しているが、やはりアッシュからすれば物足りないと感じられてしまうのだろうか。
     それとも、とビリーは自身の手を見つめた。シャワーを浴び終えたばかりのため外されているものの、普段は肌身離さず身につけているグローブ。アッシュとは何度か素肌のままで手を繋いだことはあるものの、元来の気質のことで気を遣わせているのかもしれない。横暴なようでいて、細やかな気遣いができる恋人のしかめ面を思い出しビリーはグッと拳を握った。
     キスをされないのであれば、自分からすればいい。単純なことだと分かっている。それでも、ビリーは自分が本当にアッシュから愛されているのか不安だった。環境にも容姿にも能力にも恵まれていてもなお、決して努力を怠らない。硬派な姿勢に憧れたり、好意を抱いたりする人間は少なくない。選ぶ側か選ばれる側かと言われれば、アッシュは完全に前者だった。だからこそ、ビリーはアッシュから求めて欲しかったのだ。キスも、体も。
     らしくもなく考え込んでしまったビリーは、ドライヤーで髪を乾かしながらスマホをタップした。情報収集を兼ねていくつかのSNSを流し見し終えると、息抜きがてら短い動画を投稿できるアプリを開いた。意外な人物同士の繋がりを見つけたり、情報の足がかりが散りばめられたりと侮れないのだ。
     適当な動画をいくつか漁るために、検索欄のおすすめタブを開く。すると、最初に表示されたサムネイルにはシンプルな背景に文字のみが記載されていた。
    「ネイキッドチャレンジ?」
     動画の投稿主は女性だった。サムネイルが切り替わり、動画の概要が簡単に三行程度で書かれている。ネイキッドチャレンジとは、動画の撮影主が衣服を身につけずに恋人の前へ姿を現し、相手の様子を撮影することのようだ。
     下着の有無までは書かれていないが、衣服を身につけずにスマホを構え恋人の前に出る──そんなことをして、果たして意味はあるのだろうか。ビリーはやや冷めた気持ちを抱えつつ動画を再生した。
     動画は扉を開くところから始まった。ドアの向こうには、ソファに座りゲームをしている男性の後ろ姿が見える。女性が「ダーリン」と呼びかけると、男性はゲームをしている手を止めて後ろを振り返った。気だるげな仕草であったが、女性の姿を目にした途端、目を見開きすぐにその場から立ち上がった。
     興奮した様子を隠せず、満面の笑みを浮かべながら女性の名前を呼んでいる。そして、両手を広げながら女性に近づくと、そのまま力一杯抱きしめたのだろう。画面はフェードアウトして終わった。
    「……」
     一瞬、ビリーの頭をよぎったのはネイキッドチャレンジに挑む自分の姿だった。この体を見て、アッシュは興奮するのだろうか。
    「いやいやいや」
     それはない、とビリーは頭を振った。お互いの裸なんて着替えのときに見慣れているのだから、珍しいことなんて何もない。多分、いや絶対。
     しかし、ふとビリーの中にはもやりとした感覚が芽生えた。仮にも恋人である自分の裸を見て本当にアッシュが反応しないとしたら、それはそれで怒ってもいいのではないだろうか、と。微妙な反応を返されたら、茶化して「こんなにかわいい恋人の勇気を返して!」と怒ってやればいい。もしそれなりの反応をしてくれたのであれば、その勢いに乗じて強請ればいいのだ。
     そうと決まれば、ビリーの行動は早かった。今週のイーストセクターのメンバーの予定を把握し、上手く二人きりの時間を取れる日を確認し段取りを整えるのだった。



     そうして迎えたのが今日だった。ジェイは出張で外泊をしており、グレイはオフのため実家に帰っている。だから、今日は完全に二人きりが約束されているのだ。
     初めこそ、アッシュがどんな反応を示してくれるのかと楽しみだった。そのはずが、今はシャツのボタンを外す手が完全に止まっている。冷静に考えると、自分が今からしようとしている行為は、合理的でも理論的でもない。恋人を誘惑するためだけに、生まれたままの姿を見せに行こうとしているのだ。着替えを見られるのとはわけが違う。
     今からキスして抱いて欲しい、と。遠回しに強請るようなアプローチをかけるために、自ら服を脱いでいる。その浅はかさやはしたなさに気がついた瞬間、ビリーはどうしようもないほどの羞恥心にかられたのだ。
     ビリーの段取りでは、会議を終えたアッシュがイーストの部屋に戻ってきたところを裸で出迎える予定だった。もちろん動画を投稿する予定はないので、撮影はなしだ。しかし、このままでは中途半端な格好のままアッシュの前に出ることになりそうだ。
     リビングのソファの上で震える指をなんとか動かしていると、ようやく制服のシャツのボタンを外し終えた。その時だった。入り口の開く音と、よく聞き慣れた足音が聞こえてくる。予定よりも早い帰宅に、ビリーは慌ててソファから立ち上がった。
     しかし、ベルトも中途半端に外していたせいでズボンがずり落ち、足がもつれその場に倒れ込んだ。突然の大きな音に驚いたのかアッシュが「なんだ?」と声をかけながらリビングへと入ってくる。
    「あ、アッシュパイセン……」
    「⁉︎」
     当然、アッシュは驚いたように目を見開いた。
     年下の恋人が中途半端に衣服が乱れた状態で、涙目になりながらソファの前で蹲っているのだ。心配しない方がおかしいというものだろう。アッシュは無言でビリーの横に膝をつくと、ソファにかけてあったブランケットをビリーの肩にかけた。
    「──誰にやられた」
    「え」
     尋ねられた言葉の意味が取れず、ビリーはキョトンと首を傾げた。しかし、アッシュの表情は真剣そのものだ。
    「誰に襲われたんだ」
    「……」
     勘違いされた、とようやくビリーは思い至る。ビリーの身を心配するように伸ばされかけた手は、怖がらせないためか、すんでのところで引かれてしまった。本気で心配しながら凄むアッシュの瞳に、ビリーの良心はとうとう限界を迎える。
    「……パイセン、ごめんね」
     申し訳なさから、ますます視界が歪みそうになる。そんなビリーの様子に、アッシュはますます視線を鋭くした。
    「何謝ってんだよ。何があった」
    「何もないんだよ……というか、これから起こる予定だったというか」
    「は?」
    「パイセンを、誘惑しようと思って」
    「……」
     もっと他に言いようはあったはずなのに、焦った末に選んだ言葉は最悪のチョイスだった。アッシュの視線が一気に困惑で染まる。恥ずかしさから、ビリーは両腕をクロスして自身の体を抱きしめるようにしてアッシュの視線から体を隠した。
    「服は自分で脱ごうとしてたんだけど、恥ずかしくなってきて……そしたらパイセンが帰ってきて、焦って転んじゃったんダ」
    「……へえ?」
     おおよそのことが理解できてきたのか、アッシュの瞳からは完全に心配の色が消えた。その代わりに浮かんでいるのは、怒りと呆れだ。
    「それで?」
    「え」
    「テメェの計画では、どうやって俺を落とすつもりだったんだ?」
    「えーっと……」
     ビリーが控えめに視線をあげると、意地の悪い笑みを浮かべたアッシュと目があった。
    「つうか、何が目的だったんだ?」
    「……」
    「ちゃんと言葉にして、それが欲しいって言えば俺はお前になんでも与えてやる気はある」
    「え」
     その言葉に、ビリーは思わず反応した。その様子に、アッシュは満足げに舌なめずりをする。
    「ほら、言ってみろよ。どうして欲しかったんだ?」
    「……アッシュパイセン、笑わない?」
    「さあな」
     ビリーは意を決してグローブを外し、アッシュの手をとった。無骨そうに見えるが、爪の先まで丁寧に整えられている綺麗な手だ。ところどころまめが潰れて硬くなったところや、節が目立つところもある。そんな努力を感じられる強い手を、ビリーは自身の頬へと誘いすり寄せた。
    「ねぇパイセン」
    「なんだよ」
    「キスしたい」
     少し震えた声に、アッシュの目が見開かれた。
    「大丈夫なのか?」
    「うん。パイセンだから、触れて欲しい」
     ビリーはアッシュの手を掴んだまま、今度はそれを自身の心臓の上に置かせた。人に直接肌を触られるなんて、少し前の自分だったら考えられないほどの嫌悪感があっただろう。しかし、今は触れられるだけで胸が熱くなり鼓動は早まる。
     もっと触れて欲しい。強く抱きしめ、生身の肌を重ね、熱を感じてみたい。そんな欲求が膨れ上がることが心底不思議で、それと同時にくすぐったく幸せだった。
    「やめろって言っても、やめねぇからな」
    「こわ〜い」
     わざと茶化したようにビリーが笑えば、アッシュはコツンと額を合わせた。
    「前に震えてただろ」
    「え」
    「何回かキスしようとしたとき、震えてただろ。気づかれてねぇと思ってたのか?」
    「……そうなんだ」
     自覚がなかっただけに、ビリーは思わずそう呟いた。
    「怖いとか嫌だとか、そう思ってたわけじゃないよ」
    「……」
    「緊張、してただけって言うか……」
     至近距離で嘘を見抜こうとばかりに見つめてくるアッシュに、ビリーは堪らず目を閉じた。
    「もう!パイセン見過ぎだ──っ!」
     唇が重なったのは一瞬だった。
    「これまで我慢した分だ」
    「え、え?」
     二回目も触れるだけのキスだった。しかし、一度唇を離して三度目に落とされたキスはビリーの知らない感覚と刺激を与えた。少し硬いアッシュの唇が、ビリーの薄い下唇を柔らかく喰んだ。思わずビリーが目を開くと、猛々しい瞳をしたアッシュと目があった。
    「ちょ、ちょっと待って」
    「待てねぇ。もう十分待ってやっただろ」
    「!」
     はくはくと声にならない声で反抗しようと試みるものの、アッシュはビリーの口が開くタイミングを見計らっていたかのようにキスを再開した。まるで食べられてしまいそうな口付けに、ビリーの息は上がり目の端には先程までとは異なる生理的な涙がにじむ。それを親指の腹で拭ってやりながら、アッシュはニヤリと笑って見せた。
    「こんなんで、よく誘惑しようと思ってただなんて言えたな」
    「だって……」
    「とんだ変態だな」
    「パイセンだって、むっつりスケベ──んっ」
     ビリーが反論しようとすれば、アッシュはすかさずその唇をふさいだ。触れていい許容範囲を計り続けてきたその腕も、今はがっしりとビリーの背中に回されている。今にも体から力が抜け、崩れ落ちそうになっていたビリーにはその腕の支えが頼りになりつつあった。
     ──キスって、気持ちいい
     声には出さないものの、ビリーは初めてのキスの気持ちよさに酔いしれ始めていた。
     たくましい腕の中の温かさとキスの気持ち良さにビリーが安心感を覚え始めている一方で、恋人の晒されている上半身やらふにゃふにゃの表情を前に、そろそろ限界を迎えそうになっているアッシュがいたのはまた別の話──
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