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    支部に置く一歩手前の作品、自主練、進捗、報告等々。

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    掲載OKになったので以前寄稿させていただいた低体温師受けアンソロ(https://www.pixiv.net/artworks/88175039)より冬にぴったりな原作軸のティキ師を。

    SWEETDREAMS…  夜中。寝つけずに幾度目かの寝返りをうつ。

     いつもならば酒場で出会った女や各地にいる愛人と共に夜を過ごしているのだが、様々な要因が重なりクロス・マリアンともあろう男がここ数日は独り寝だ。
     体温が低く冷え症なクロスには独りのベッドは冷たくて温まりも悪い。冷えたベッドは寝つきにくく、眠りも浅くなる。
     最後に見た時の時刻は午前一時過ぎ。あれから少なくとも一時間近くはこうしていつやってくるかも分からない睡魔を探すように寝返りをうち続けていた。
     もう諦めて今夜も朝まで起きてしまおうか。そんなことを考えながら夜明けはまだ遠いぞと告げてくる窓の外に背を向けるようにまた寝返りをうったその時。
    「寝れねぇの?」
     自分ひとりだけだったはずの部屋に響く自分以外の声。こんな夜中にクロスの元に断りもなくやってくる奴なんて誰だか聞かずとも分かっている。
    「寝てる。」
    「起きてんじゃん」
     コツコツと皮靴の足音を響かせ気配が近づいてくる。
    「寝れねぇなら添い寝してやろうか?」
     ギシリと音を立てて沈み込むベッドの端。香ってきたのは自分のものとは違う煙草と香水。
    「結構だ」
     無遠慮に夜這いしてくるよう変態ノアの誘いを拒むように布団の中へ深く潜る。
    「まぁそう遠慮しないで…… ッ!冷たっ!」
     足の方で布団越しにかけられた僅かな重さは溶けるように布団を通過し、素肌に辿りついたもののクロスの足のあまりの冷たさにすぐに離れてしまう。
     ほんの一瞬の接触だったが、ティキの手は火傷しそうなほど熱く感じた。
    「あー……  アンタ体温低いもんね」
     独り言のように呟いて再び侵入してきた手がクロスの足に触れる。
    「こんなに冷えてっからなかなか寝れねェんだろ」
     触れた足は本当に生きた人間の足なのかと疑いたくなる氷のような冷たさで、触れあう面からティキの体温を奪っていく。
    「触るな。お前には関係ないことだろうが」
     その手から逃れるように足をもぞもぞと動かしてみるが出ていかず、代わりに足を動かしたことで浮いた布団の裾から温まりかけてた空気が出ていってしまう。
    「そんなに寝たいんならさ…… 身体温めつつ疲れて寝ちゃう作戦なんてのはどうよ?」
     その言葉に逃げる動きを止めた足を幾度かさするように往復をしたのち、するするとふくらはぎを滑るように撫でて太ももの方へと進み出す。
    「なぁ、どうする… ?」
     熱を孕んだ声。ついに手が内股に回り込んだ瞬間、クロスは布団を蹴り上げそのままティキの顔面を狙って回し蹴りを繰り出す。
    「最初からそれが目的だろ」
    「否定はしない」
     すんでのところで蹴りを躱されてしまい、布団もベッドから落ちてしまったことで僅かな温もりすらも逃げてしまった。
    「でもアンタの顔見たらその予定はまた今度にさせてもらうわ」
     布団で隠されていたクロスの顔は連日の寝つきの悪さと眠りの浅さから酷くやつれていた。
    ベッドの下に落ちてしまった布団を拾い上げたティキはこちらを警戒するクロスに返そうとそっとベッドに近づく。
    「変なことはしねぇから今夜はこのまま寝ようぜ」
     な?、とクロスの返事を聞く前にいつの間にコートを脱いだのかラフな格好になったティキがするりと布団と共にベッドに上がりこみクロスを抱きこんでしまった。
    「そういえばこうして一緒に寝るの初めてじゃない?」
     いつもヤることヤったら即さよならな自分たち。甘いピロートークなんて吐き気がして想像することすら頭が拒否してくる。
    「当然だろう。野郎に添い寝される趣味はねぇんだよ」
     このノアは自分より年上のデカい野郎に抱き込んでなにが楽しいのだろうか。腕から抜け出そうと藻掻いてみるがなかなか離れない。
     それどこか逃がさないとばかりにますます抱き締められてしまう。
    「オレのことはデカい湯たんぽでも思ってさ、目ェ閉じとくだけでも休めるから瞑ってな」
     先程触れらた時から気づいてはいたが、明らかにティキの体温はクロスよりも高い。実際、自分一人ではなかなか温まらなかった布団の中はあっという間に温まってしまった。愛人たちと寝たときよりも温かいような気がする。
     ただ、さっきからポンポンと子どもをあやすように寝かしつけてくるのはいかがなものか。
    「ガキ扱いするな」
    「はいはい」
     寝かしつけるような手つきは止み今度は背中を摩られる。
    「おい」
    「ん?子守唄をご所望?」
    「…… はぁ」
     こいつの相手をして疲れた。このまま抜け出そうとやり取りを続けても離してはくれないだろうと諦めて好きなようにさせることにした。
    「随分ゴツイ湯たんぽだな」
    「そこは勘弁して」
     柔らかな肉付きもなければ甘い香りもしないけれど、トクトクと聞こえる心音とじわじわと伝わってくる体温。
     慣れない寝心地の悪さに次々と文句は思い浮かんでくるのに、とろりとした微睡みに邪魔されて口に出てこない。
     程なくしてティキの胸元で寝息が聞こえだす。
    「やっと寝れたか」
     起こさないようにそっと布団を掛け直すと自らも寝ようと目を閉じる。
    「おやすみ、クロス」
     せめて今夜はよい夢を。


    【Fin】


    ◆◇◆◇◆◇◆◇


    制作裏話。

     毎度のことながらタイトルが決まらず悩んでいたのですが、そんな時に英訳版6巻読んで「これでいいじゃん。タイトルにしちゃお😊(少年に言ったセリフそのまま師匠にも言っちゃれ~~~~!)」としたあの時の私はどうかしてた。今でもそう思う。
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