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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    来週の【GEGO DIG】に展示予定の色にまつわる両片想いの短編集から。
    【天色】 夕立  傑視点 呪専 
    雨にまつわるお話で一度は書きたいサビですね!かわいらしいふたりです😊

    #夏五
    GeGo

    【天色】 夕立 朝は澄んだ空に水平線には入道雲まで添える上天気だったのに、あれよあれよという間に山間から黒雲が湧き立つ。冷たい突風がひと吹きすれば、バケツをひっくり返したような豪雨が校舎を覆い、すっかり雨に閉じ込められたようだ。さっさと寮に帰りたいけれど、僅かな距離でもパンツの中までびしょ濡れになるのは目に見えている。
     まあいいか、帰ってすぐシャワー浴びて、洗濯機回そう。
     そう思い直して、昇降口で上履きを仕舞って大きくひと息付いたところで、背後からどすんっと大きな塊に伸し掛かられた。
    「悟」
     こんなことをするのは、ひとりしかいない。
     少ない同級生のひとりにして、生意気なクソガキから昇格というよりは、そこに新たに友だちという肩書が追加された、長身のお坊ちゃんだ。
    「傑、帰る」
    「嫌だけど、まあ、びしょ濡れになるさ」
    「水も滴るイイ男って言うんだろ」
    「自分では言わないけどね、そーいうこと」
    「俺よりは劣るけど、そこそこ好い男の分類だろ、タラシくん」
     こんなにきれいな顔も、若干細すぎるとは言え、バランスのいい体つきも見たことはなく、君以上に好い男なんて、そうそういないだろ、と溜息をついて返した。
    「えっ、なに、褒めてくれるの、珍しくない?」
     浮かれた様子に、綺麗なだけじゃなく、かわいいも追加されるのかと思って、思ったことに戸惑う。こんなデカくて生意気な男とかわいいは、結びつかないだろ。そう自問自答したとて、ここ最近ふとした瞬間に、かわいいが顔を覗かせるのは自覚している。
    「普通に褒めてるだろ」
    「そう? 傑、あんまり褒めないじゃん」
     小学生のような物言いでも、ご機嫌なままで、褒められて伸びるタイプかな、なんて、それすらも微笑ましくて、普段つんとすました姿と、他愛もないことで喧嘩をして夜蛾先生に怒られる姿とのギャップに、気が付くと口元が緩んでいるのは、何なんだろう。
    「じゃあ、今度から、わかりやすく盛大に褒めてあげるよ」
    「ふ~ん。それじゃ褒めてくれたお礼に傘になってやるよ」
    「傘って、悟が持ってるってコト」
     意味がわからずにきょとんとした顔になっているのだろうが、既に何度となく悟相手に晒している間抜け面だ。恥ずかしかったのは始めの数回で、今はすっかり慣れた。慣れたけれど、かっこいいと言ってくれるなら、常にそう思われていたい。
    「違うって。まあいいから、外に出ればわかるって」
     得意満面で告げる姿は、曇天模様の上にいるお日さまのようで、ただ綺麗なだけでなく、眩しいぐらいに惹き付けられる。頓にそう感じられるのは、なんだろう。
     先に立って歩き始めた悟が軒下で半身を捻って振り返る。驟雨を背後に背負っても、薄暗い校内に比べれば随分明るい。光の中に立つようにして、差し伸べた手と、喜色を浮かべたその顔に、とくんっと心が跳ねた。
     綺麗だ。
    「傑」
    「なに」
     上擦った掠れた声に、頬に熱が集まるのが感じられる。
    「手、貸して」
    「んっ、どーいうこと」
    「手、つないで」
     差し出した手は私の胸元に向かって伸ばされる。鈴の音のような悟の声が、激しい雨音にあっても、耳の奥まで、胸の奥まで違うことなく届く。
     ゆるゆると手を重ね合わせると、きゅっと力を込めて握られた。
    「今まで無下限張って、自分から人に触れることなんて、殆どなかったから新鮮。なんか、いいな、手を繋ぐのも」
     ああ、そうか。
     悟は、今まで殆ど、ひとの体温なんて触れずに、知らずに、生きてきたのか。
     とくんと跳ねた心臓が、とくとくと勢いを増して動き始める。雨音のかわりに心音が絶え間なく降り注ぐ。
    「せーのっ! で外出るからな。ぜったい、手、離すなよっ」
     並んでと促されて横に立つと、それじゃあ、と耳元で内緒話をするように悟に声を掛けた。悪だくみをするノリのつもりが、耳元で囁くようになってしまい、自分で仕掛けたのに、妙に気恥ずかしくなってくる。顎を引いてすぐ横は見られなくて、真正面を向いたまま、指を絡めて手を繋ぎ直した。ぴくりっと驚いたように指先も肩も微かに揺れた。重なり合った指先も、頬も熱くて、でも、振り解けなくて、一層力を込めた。
    「準備はいいよ」
    「それじゃ。せーのっ!」
     弾むような掛け声で、二人三脚のように足を雨の中に出す。
    「えっっ。悟っっ――。なんでっっ」
     体に当たるはずの雨水は、膜を張ったように弾かれて、私までは届かない。目を見開いてすぐ横を振りむけば、大輪の花が綻ぶように、満開の笑顔を浮かべた悟がいた。
    「すごいだろっっ」
    「すごいっっ! すごいっ」
     語彙がなくなるとはこのことだ。天空を仰ぎ見れば、透明な膜を纏ったように雨粒を、弾いて、飛んで、零れて、煌めく滴が幾重にも重なり、きらきらとスターダストのように輝き続けている。
    「今まで、やったことなかったけど」
     強い雨音の中にあって、誇らしげな悟の声だけは、確かに届く。もう一度高揚した表情のまま顔をあわせた。にかっと歯を見せて笑った顔が可愛くて、見惚れそうになりながら、告げられた言葉は。

    「おまえは特別だから」

     えっっ。
     一瞬にして上がった体温に染まる顔色は、はにかみながら朱色に染まった悟と同じだ。

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    Replies from the creator

    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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    高専の校舎内を歩いていると、この世で一番面倒臭い先輩に絡まれた。
    「なー七海ぃー。七海はさぁ、世界一強くて顔も良くて器量もあって実家も太くて逆に何がないの?って聞かれるくらい唯一無二の最高の恋人に食べさせてもらうなら、ショートケーキとチョコレートケーキのどっちがいい?」
    「…………もしかしてですけど、それ自分のこと言ってるんですか?」
    だとしたら自己肯定感がエベレスト並みの先輩だ。しかし、それらの賛辞の言葉は、彼にとってはあながち過分ではないから困る。
    「いや勿論そうだけど。てか何だよ七海、なんでそんな嫌そうなカオしてんの。街中でアンケートにご協力くださいって言われて立ち止まったら宗教勧誘だった時みたいな顔じゃん」
    「いえ、まだそっちの方が対処しようがあるのでそれほど嫌とは思わないです。逃げるか警察呼ぶかすればいいんですから。でも五条さんは質問に答えるまで永遠に付き纏ってきそうですよね。口裂け女の怪異の類ですか?」
    「それは傑の任務先の呪霊のやつだろ。はーっ、ホントかわいくねーなぁ七海。時代の流行りとはいえツンデレも大概にしろよ?そんなんじゃ、いつか灰原 4228