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    rani_noab

    @rani_noab
    夢と腐混ざってます

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    rani_noab

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    さぶの先生な男主リバ夢。続き。モブがでます。

    琉嘉は璃月港で生活をしており、当然のことながら璃月港で生活するための買い物をしている。そのことは分かっているのだが、実際見かけたことに鍾離は驚いていた。璃月の街並みに馴染んだ服装にフードを被っているが、鍾離が記憶している彼の肩や体つきですぐに琉嘉だと分かった。
    買い出しをしているのか、手提げ袋から購入した野菜が覗いている。声をかけてみようと足を踏み出したところで、先に琉嘉が声をかけられているのに足を止めた。
    「琉嘉先生」
    意図せずにその声が聞こえる。振り返った琉嘉とは顔なじみらしく、ああ、と琉嘉が返事をした。
    琉嘉に声をかけたのは30代半ばの物静かそうな男だった。
    「こんにちは。琉嘉先生。いつもながら、徹底してますね」
    「街中で私に会いたくない方はいらっしゃいますから」
    何のことかと思えば、琉嘉の返事に、彼のフードは彼の契約者への心遣いだと分かって鍾離は感心した。仕事を日常に持ち込むことは、凡人には難しいことだと知っている。
    「同業者として見習わなくてはならないなあ。とは思うんですけどね。送仙儀式を終えて、今若者に岩王帝君風のフードが流行っているようで、この年ですからちょっと気恥ずかしさがありまして。まあ琉嘉先生ならお若いですし、問題はなさそうですね」
    つい立ち去るタイミングを逃してしまった。せっかくなので話しかけようと思いながらも、話はなかなか途切れない。
    そもそも店に人の姿はないとはいえ、璃月の往来でダイナミクスの話をするのは珍しいことだ。璃月の人間はダイナミクスは身内以外には隠すべきもので、行為についても隠しがちだ。
    「私の場合、流行の前からこの格好だから馴染みの店の方にはもうなんとも思われていないようですけれどね」
    「琉嘉先生は、あまり社交を好まれませんね。こうしてお話しさせていただいたり、仕事柄、会話や対人が苦手のようには思えませんが……」
    「確かに、苦手ではありませんよ。ただ仕事が忙しくて中々プライベートに手が回らないだけです」
    「なら、やはり今度私の友人たちと食事でもどうですか?」
    「それは……」
    琉嘉はさほど表情を変えていないが、鍾離には嫌がっているように思えた。口ぶりからして、誘いを受けるのは今回が初めてではなさそうだ。
    鍾離は足を踏み出す。近寄るとすぐに琉嘉が気づいたようだった。その目が僅かに見張られるのに、驚いたのだと察した。
    「琉嘉。奇遇だな」
    「鍾離先生」
    「鍾離先生?」
    琉嘉の声に顔を上げた男が、鍾離をまじまじと見やってからもしや、と口を開く。
    「往生堂の客卿の?いやはや、噂に聞く知識人とお知り合いとは、琉嘉先生はどのように人脈を得ているのですか?」
    「人脈などありません。鍾離先生とはよく食事をする友人と介して知り合ったんですよ」
    「ほお。その友人の方もさぞかしすばらしい方なのでしょうな」
    どうにも、男の言葉には含みがあるように感じる。どういう知り合いなのかと考えながら、鍾離は口を開いた。
    「街中で琉嘉を見かけることが珍しいと声をかけたが、邪魔をしてしまったようだ」
    助け船のつもりはないが、鍾離は今まで見ていたことは口にはしなかった。
    「ああ、確かにその気持ちは分かりますよ。私も物珍しくて琉嘉先生に声をかけましたから。申し遅れました。私は洙承と申します。琉嘉先生とは仕事で知り合ったのです」
    「洙承殿、こちらこそ俺の名を知られているようで光栄だ」
    仕事、となると調心屋関係だろうが、男のダイナミクスは分からない。大抵の大人はダイナミクスを表に出さないように生活をしているので、当然と言えば当然だ。だが、長く人間を見てきた鍾離には、振る舞いがDomのもののように思えた。ダイナミクスにより人間の振る舞いに傾向があるのを鍾離は知っている。性別によるものであるので、当然と言えば当然だろう。
    洙承は鍾離をそれとない様子で眺めたあと、友好的な表情で口を開く。
    「では、そろそろ私は帰るとしましょう。お二人とも、これで失礼いたします」
    挨拶をして去って行った男の背を見送り、鍾離は改めて琉嘉に向き直る。すると琉嘉は何かを考え込むように洙承が去って行った方を向いたままだった。
    「琉嘉先生と呼ばれていたな」
    「ああ。先生はやめてくれと再三言ったんだが……」
    琉嘉は首を横に振る。そのしぐさを見ると、あの洙承という男に何かしら困惑しているのは間違いなさそうだった。
    「彼も調心屋だ。調心屋が集まる会合があるんだが、その時に出会ってから妙に俺に関わってくる。どうにもライバル心を抱かれているみたいで、もしかすると知らないうちに契約者を取ってしまったのかもしれない」
    それから琉嘉はようやく微笑むと、フードを深くかぶる。視線は合わない。
    「話しかけてくれて助かった。鍾離先生はそのつもりだったんだろう?でも、あの男には気を付けた方が良い。あなたはまだ行為に不慣れだからな」
    「今のところ他の人間と行為をする予定はないな」
    鍾離の返事に、琉嘉はゆっくりと返事をする。
    「……そうかもしれないな。鍾離先生は武人でもあると旅人に聞いたし、それほど心配はいらないとは思うが、念のため」
    そこで武人の単語が出てくるのは、なにやら物騒な印象だった。まさか道端でGlareを仕掛けてくることなどないだろうが、忠告は素直に聞き入れておくことにする。
    「分かった。気を付けよう」
    琉嘉は頷く。ちょうど旅人の話題も出たことだし、気になっていたことを問いかけてみようとした鍾離よりも早く、琉嘉が言った。
    「じゃあまた一週間後に」
    「ああ」
    楽しみにしている、と付け加えようとして、その言葉の意味を考え直すために鍾離は口を閉じた。契約上の行為を楽しみにすることは、何か問題がないだろうか。その一瞬の逡巡に気づいた様子はなく、琉嘉はそのまま去っていく。
    聞きたいことがあったが、聞けそうな雰囲気でもなかった。
    いつ思い返しても、琉嘉の態度は丁寧で鍾離を尊重するものだ。
    その彼が意地悪と評される理由が気になった。
    彼がその本性を隠して、理想的なDomをしているのだったら?
    やはり、これは興味だ。鍾離は自分の内心をじっくりを眺め、そう結論付ける。
    だが、これは親しくなる期待とはまた別のもののように感じる。
    凡人の人間関係は奥深い。今の自分なら、ダイナミクスを得てその深みに足を踏み入れていける。これからまた、より多くを知ることが出来るだろう。
    凡人としての生を楽しむことに、自分のSub性が含まれつつある。
    上手く付き合っていけるのなら、より盤石な喜びが、この先にはあるだろう。
    琉嘉には支払うモラ以上に、感謝しなければならないと鍾離は思った。



    次の日から、待ちきれない感覚があった。
    彼に会いたい。褒めてほしい。自分の感覚を素直に言葉に表すと、そんな様子になる。そんな素直な欲求が自分に湧くことを興味深くも思ったが、仕事中、彼との行為をふと思い返す自分に驚いた。どうやら自分の周期として、2週間以上間を開けるのはドロップの可能性を高めるようだ。
    待ちに待った予約の日。不安が芽生える前だが、不安定さは感じていた。自分の状態を把握し直し、琉嘉に説明できるように頭の中で確認する。
    それから白駒逆旅を訪れると、扉を開けて真っ先に琉嘉と目があった。珍しく立ったまま窓の外を眺めていたらしい彼の振り返った姿。どきりと心臓が打つのを宥めるようにする。
    前回彼は、鍾離から行為を始めるようにしようと言っていた。
    つまり、目線での行為の始まりの条件付けを終わらせるということだと気づいていたが、なるほど、このタイミングなら自分の体も宥めやすい。
    琉嘉の向かいに座る。視線が合っているだけでじんわりと期待がもたげていくが、行為を始めた時のような高揚感までは至ってない。
    「今回からは自分で行為に入るコントロールを始めよう。道端で急に行為をしているような状態にならないように。鍾離先生なら自制が効くからそれほど心配してないが、生活圏が重なることがこの前分かったからな」
    「貴殿が視線を合わせないでいたことは分かった。フードはもし途中で他の契約者と出会っても大丈夫なように、ということだろう?」
    「正解だ。俺は視線で誘導することも多いからな」
    行為に慣れた調子の発言に、彼には何人の契約者が居るのだろうと想像する。多忙さからは、数が多いということだけが分かるが、他のSubの気配が全くしないことから、それぞれの予約時間には十分な余裕を持たせているのだろうとも思った。
    「貴殿には契約者がたくさんいるんだな」
    ちょっと黙った琉嘉が自分の表情を眺めていることに気づいて、鍾離はその視線を見返した。妙なことを言ったつもりはないが、意図していない受け取り方をしたようだ。
    「貴殿は腕が良い。貴殿のような調心屋が増え、ダイナミクスについての正しい知識が浸透すれば、璃月の風土も変化していきそうだ」
    「確かに、璃月はダイナミクスを隠す傾向があるな。そしてSubの立場が弱く扱われている」
    琉嘉を璃月の人間だと思ったことはない。璃月由来の物の発音に揺れがある。稲妻から来た人間のものと似ているが、出身地かまでは分からない。琉嘉の出身地ではダイナミクスの扱いはどのようなものなのだろうか。少なくとも、DomとSubで単純な優位関係をつけがちな璃月よりはダイナミクスに関して開放的だろう。
    「その土地の風土は変化しにくい。誰かが努力したとして、十年単位のことにはなるだろうな」
    そこまで言って琉嘉はさて、と続けた。
    「そろそろ始めよう。雑談で延長料金を取るつもりはないが、重要なのはあなたの訓練だから」
    琉嘉の言葉に頷いて、鍾離はこの二週間の自分の状態について琉嘉に説明した。
    「今、乾きを感じているんだな。それなら丁度良い。今日は鍾離先生から俺を行為に誘う練習をしよう」
    「誘う練習?」
    「ああ、先ほども話したが、璃月の人間は行為に積極的になることを恥ずかしいこと、後めたいことと認識しがちだ。この傾向は稲妻にも見られるな。モンドはもっと自由な印象がある。誘うと言っても、いやらしい意味じゃない。自分の状態を相手に伝え、して欲しいことを考える練習だ」
    して欲しいこと。そう聞かれて真っ先に褒められたい、という欲求が思い浮かぶ。
    「それなら問題ない。今日は貴殿に褒められたいと思いながらここに来た」
    琉嘉が心配しているのは、羞恥や今までの未経験による躊躇だと察している。だが、鍾離には取り立てて羞恥のようなものは感じていない。戸惑いはあるが、琉嘉は鍾離が理解する限りケアについての信頼できるプロであり、身を預けることに不安はなかった。むしろ契約をし、モラを支払っておいて躊躇をする方が無礼だとも考えている。それに、鍾離自身が己の武力や、それだけではない力を信頼しているがゆえの安定でもあった。自分を害せる人間など早々いない。鍾離は琉嘉に近づくと目を合わせる。
    「俺に命令してくれないか。きっとお前を満足させられるだろう」
    すると琉嘉は笑う。
    「鍾離先生の、そういうふとした時に垣間見える自信家なところはいくら褒めても足りないくらいだ。俺はそれくらいの人の方がやりやすくていいよ」
    微笑んでいる琉嘉は、それからゆっくりと言った。
    「心の準備は?」
    いつも通りの問いかけに期待で心臓が一つ大きく打った。
    「とうに整っている」
    「セーフワードは?」
    「玖耀のままで変わりない」
    反応を待つ。視線は合ったままだ。
    「good《よく言えました》。今日もいっぱい褒めてあげるよ。鍾離先生」
    頬に優しく手を当てられた後、頭を撫でられる。
    途端にじんわりと喜びが胸を満たす。美味しい食事、酒に舌鼓を打つような感覚。
    「基本的なcommandを試していこうか。嫌だったら従わなくていい。無理をしないで」
    「ああ」
    返事をすると、琉嘉は鍾離から少し離れると、敷物が敷かれた床の上を指差した。
    「Kneel《座りなさい》」
    言われた瞬間、その単語の意味を理解する前に体が立ち上がる。commandとして扱われる単語は、command用に存在しているものも多くある。だが、必要なのはDomが何をさせるか、命令の意志を持って発言することだ。
    琉嘉の言葉に強制力は薄い。琉嘉が指差した床に膝をつく前に少し考える余裕があり、鍾離はそれでもすぐに床に膝をついた。嫌悪はなかった。琉嘉が自分を尊重しているのが伝わってきているからだろう。
    「good。鍾離先生は姿勢が良いね。上手に座れて良い子だ」
    軽く握った拳を膝の上に置いていた仕草を褒めてくれたらしい。
    「come《おいで》。褒めてあげる」
    立ち上がって琉嘉のすぐ前に行くと、ぎゅっと柔らかく抱きしめられる。
    「良く出来ました」
    心地いい感覚がゆっくりと溜まっていく。思考がゆっくりになっていき、安心が体を満たしていく。少し抗ってから鍾離は少し確かめてから俊敏な反応を手放した。ぼんやりとしていく。これは凡人の体で理解した眠気に似ている。
    それから琉嘉はまた少し離れると、今度はソファに座る。
    「sit《隣に座って》」
    立ち上がって琉嘉の横に座った。琉嘉は満足そうに微笑みながら鍾離の頬を撫でる。
    「good《良い子だ》」
    心地良さに目を細めると、琉嘉はくすくすと笑う。
    「これで良いのか?」
    「ああ。十分だよ。よく出来てる」
    鍾離としては、子供向けの指南書に書かれているようなcommandばかりを実践していることに戸惑いがある。commandは難しいほど達成感があると読んだことがある。もう少し難しいものを試して、その成果を確認してみたかった。
    鍾離の反応に琉嘉は首をわずかに傾ける。
    「そうだな。鍾離先生は行為中部屋の外に出られそう?」
    「部屋の外に?」
    「そう。受付で俺と鍾離先生の分のお茶を持ってくるよう伝えてこれるかな」
    少し考えてから頷いた。躊躇いはあるが、きちんと自制をかければいいことだ。
    「おそらく問題ない」
    顔に出てはいないだろう自覚がある。眠たそうには見えるかもしれないがそれくらいなら構わないだろう。
    「go《行っておいで》。難しかったらちゃんとお仕置きしてあげる」
    お仕置きの言葉に背筋が震えるような感覚があった。恐怖が中心の、その他は未知の感覚だ。分析をするまえに、鍾離は一度周囲に注意を払うことにした。廊下に他の宿泊客の姿は見えない。難なく受付まで行くと、部屋の番号と茶を持ってくるように伝える。琉嘉が喜ぶかもしれないとついでに茶に少し注文を付けた。その間、行為中なのが気づかれるのではないかという恐れと、隠し事がある時の感覚が共存して脈拍がいつもより早い。隠し事など、いつも一つ大きなものを抱えているが、それとはまた別の甘美さを持つ感覚。
    部屋に戻ると、琉嘉は本を開いて待っていた。視線が上がり自分を捕らえる。視線が合うとまだぞわりと心が湧きたつが、火をつけたようにはならない。
    「sit《向かいに座って》」
    言われた通りに向かいに座る。
    「stay《そのまま》」
    褒められるのかと思いきや、茶が来るまで焦らされるらしい。何かに耐えることはそれほど苦にならない性質だが、今回は気を抜くと琉嘉の傍に寄って行ってしまいそうだった。この後のご褒美を待つ感覚に、おもちゃ屋で会計を待つ子供のことを思い浮かべる。そういえば、耐えることはままあるが、欲求に対して我慢することはあまりなかった。耐えるというよりはこれは我慢だ。
    扉を叩く音がしたのに琉嘉をみると、琉嘉は頷いた。
    立ち上がって扉を開け、盆ごとお茶を受け取ると扉が閉まったことを確認してから琉嘉を振り返る。
    鍾離の顔を見て琉嘉は察したように零れるように笑う。逸る足を押さえてお茶をテーブルに置く。
    「おいで」
    言われて琉嘉の前に立つ。両手を伸ばされて、鍾離はその手を待つ前に膝をソファに乗り上げるようにして琉嘉に身を寄せた。
    「good《よく頑張りました》。良い子だ」
    抱きしめられながら頭を撫でられる。抱きしめ方も撫で方も優しく、それでいてぎゅっと鍾離を受け止めていて、琉嘉の心を感じた。たったこれだけの命令に従うことで、こんなにも満たされる。人との関係はモラでは量り切れないことは分かっているが、この十数分の価値は鍾離にとって非常に高いものだった。ひとときなのが惜しいくらいだが、ひとときであることが大切なのだとも分かっている。
    「今日はお菓子を用意してるんだ。一緒に食べよう。鍾離先生」
    隣に座り直すように言われて座り直す。
    「今日はお互い食べさせあってみようか。先生も世話を焼くのも好きなようだったから」
    琉嘉が出したのは、餡を皮で包んで焼いた月式という菓子だった。普通は何口かに分けないと食べられないものだが、一口サイズにされており、形も丸く可愛らしい。これは命令というよりは褒美に近く、甘やかされていると感じる。
    口元に持ってこられた月式で唇をつつかれ、鍾離は口を開ける。柔らかい皮の触感の後に、控えめな餡の甘さが口に広がる。
    「ハスの実の餡なんだよ」
    「好きなのか?」
    「取り立てて好きというわけじゃないが、この店の月式はこの餡が一番おいしい。甘いものはよく食べるんだ。リラックスをするのに丁度いい」
    月式を摘まんで琉嘉の口元に持っていくと、無防備な調子で口を開けるので喜んで押し込んでしまった。成程これは楽しい。触感から、水分が足りなくなるのではないかと先に琉嘉の湯呑に手を伸ばして反応を待つと、琉嘉が笑う。
    「可愛い人だな」
    「貴殿が世話を焼くのが好きだろうと当てたんだ」
    その表現を少し不満に思いながらも、誉め言葉の一種ではあるので気分を害すほどではない。
    「そうだけど、まじめそうな人がわくわくと俺に食べさせようとしているのは面白いよ」
    「琉嘉も楽しそうに見えたが、もしや餌付けは好きではないのか?パイモンから貴殿は意地悪だという話を聞いた」
    すると琉嘉は黙って鍾離を眺める。
    「大丈夫。ちゃんと好きだよ。鍾離先生は甘やかしすぎだと思っているかもしれないが、俺はこれが楽しいからな」
    「それならいい。貴殿にとって仕事だろうが、性格が合っていたほうがストレスは少ないだろう」
    「俺の心配?本当にいい子だね。もっと自分本位でも良いのに」
    「共に気持ちが良い方が、より満たされるだろう」
    すると琉嘉は笑った。
    「なるほど、どちらかというと効率重視か。大丈夫、俺も満足しているよ」
    その表情を眺めながら、はぐらかされたようにも感じていた。パイモンにそう言われる要因があるはずだからだ。それに旅人の反応からしても、それは間違いないだろう。とはいえ、それ以上踏み込む関係ではない。単なる契約上のパートナーでしかないのだ。琉嘉が言う気がないなら仕方ないと鍾離は追求しないことにした。
    もう二回ほど食べさせあって、腹も満足したところで琉嘉は今日はこの辺にしようか、と口にした。
    「二週間で少し寂しかったなら10日周期にしよう。次の予約を入れておくよ」
    「ああ。よろしく頼む」
    「それと、信頼関係が築けてきたところだし、次回はSubがDomに感じる恐怖について少し体験してみよう。少し怖い思いをするが、万全の対応はする。これからいろいろな人と行為をすることになるかもしれない。もしもの時、Subがどう対処をするのかトレーニングも必要だからな」
    つまりセーフワードやそれに絡むことなのだろう。
    「体調が良くなかったら始める前にちゃんと俺に言ってくれ。それにもしやりたくなかったら、」
    「問題ない。貴殿を信頼している」
    「……先生はちょっと素直すぎないか?良い生徒なのは良いことだが……」
    「貴殿が心配してることも問題ない。人を見る目はある。もし貴殿が腹に何かを抱えており、それを隠していたとしても問題ない。俺は人より少し丈夫だからな」
    丈夫、の意味はおそらく琉嘉が想像するものと少し違うだろうが、本当のことだ。琉嘉はじっと鍾離を見返した後に、頷いた。
    「分かってるなら良い。DomもSubも、契約したパートナーに入れ込みがちになる。依頼者の望む行為を与えてもらえるからだ。鍾離先生なら確かに問題はないだろうな」
    微笑んで琉嘉は立ち上がった。
    「それじゃあ10日後。待ってるよ。鍾離先生」
    見送る琉嘉と視線を交わして扉を開け、部屋の外に出る。
    日常に戻った感覚があった。
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