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    rani_noab

    @rani_noab
    夢と腐混ざってます

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    rani_noab

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    ぽめがばーすのゼンと女主の話。
    ポメゼンはずっとスンッ……としてます。可愛いのかこれ…………??????

    ここしばらく、スメールでは雨の日が続いている。
    季節により雨量が変わるのはスメールらしい気候だけど、くたくたになって帰る中での本降りは、余計に足を重くさせる。
    ここがシティじゃなかったら、もっと酷い目に遭ってただろうな、と思いながら、運よくシティに住みつけた幸運に感謝する元気も今はない。
    この雨の中、道端には人気はなく、歩いているのは私だけだ。
    早く帰ってあったまろ……と思った瞬間、どこからかくしゃみが聞こえた。
    思わず足を止める。
    ちょっと聞いただけでは、泣き声のように聞こえるその音は、私にはちゃんとくしゃみに聞こえた。
    わんちゃんだ!わんちゃんがこの近くにいる!
    それもこの雨の中くしゃみをしてる……!
    一大事だと疲れも吹っ飛ばし私は積み上がっている木箱や、屋台の影を覗いてまわり、全然見つかんないけど!?と思いながら必死の捜索の上、ぱっと気付けないような、木箱の外れかけた板の隙間を覗き込んで、ようやく見つけた。
    奥で雨宿りしている小さい影。
    小さな体にくりくりのお目目。ぴんとたった三角の可愛い耳。ちいさな顔は愛らしさしか呼び起こさない。
    こ、これは……!!ポメちゃん!!
    びっくりさせないように心の中でクソでかボイスの叫びをあげる。
    ふわふわだっただろう毛がぺっとりとはりついていて、雨の中の哀れな姿にとても胸が締め付けられる。
    このポメちゃんは、ポメラニアンにはあまり見かけない銀鼠色の毛をしていた。
    暗い中で座っているポメちゃんは、鳴き声も上げずにじっと私を見つめている。
    警戒をしているというより、観察しているような様子は、小型犬とは思えない落ち着きがあった。
    動かないので怪我をしているかも分からない。
    しゃがみこんだまま、私はじっとポメちゃんと見つめ合ってから、そっと手のひらを上に向けて少しだけ前に出す。
    「風邪ひいちゃうよ」
    声をかけても反応する気配はない。
    スンッ……とした雰囲気すらある。放っておいてほしいのかもしれない。
    でもさっきのくしゃみはきっとこの子がしたものだ。
    「今日だけでもいいから、うちにおいで」
    じっと手のひらを差し出したまま待っていると、ポメちゃんは立った。短い足をちょこちょこと動かして近寄ってくる様子が可愛すぎて震えそうになる。
    それから少し私の手のひらを見下ろし、私を見上げるポメちゃんは、これまた珍しく綺麗な緑色の目をしている。
    それからぽん、と短い前あしを私の手のひらの上に……おいた……。
    おお神よ……!この子を世界に産み落としてくれてありがとう……!
    あまりの愛らしさに天を仰ぎ、限界突破しそうになった萌えをなんとか抑え込む。まるで私の反応を不思議に思うかのように、首をちょっと傾げているポメちゃんに、驚かせないようにそっともう片方の手を伸ばし、ポメちゃんを抱き上げると、その体は小さく震えていた。
    寒がってる……!!
    慌てて私は自分の腕と体の間に潰さないように抱き抱えた。濡れた毛が私の体温を奪っていくのに、ポメちゃんはどんなに寒かっただろうと歯を噛み締める。
    小さな体はすっぽりとおさまってしまって、なおも震えているのがとてもかわいそうだった。
    こんなところで一人で雨宿りしてたなんて、心細かったんじゃないだろうか。
    急ぎ足で雨の中を踏み出した。一刻も早くこのポメちゃんをあっためてあげなくては……!
    腕の中で鳴き声ひとつも上げず、静かなポメちゃんを心配しながら、私はこれまでの人生で一番早く歩きで家へと帰りついた。
    自分も水を滴らせているけど、ポメちゃんの方が先だ。
    冷え切ったポメちゃんを早く温めてあげないと。
    毛の長いポメちゃんがいたくないように、ひとまず丁寧にタオルで包むと、風呂にお湯がポメちゃんに必要な分が溜まるまで待った。
    水嫌がるかな……と心配しながら短い足が沈む高さのお湯にそっと下ろすと、嫌がる素振りはない。
    ほっとして泥だらけの足を洗ってあげると、それから毛が引っかからないように洗おうとすると、泥で毛先が絡まっているところがあった。
    私はこんなこともあろうかと(絶対ないと思ってたのに本当にあった)、ねこちゃんわんちゃん用のシャンプーを取り出すと、温まるようにお湯をかけながらそっと洗う。
    洗い流したあと、水を切るためにぶるぶるっと身を震わせたポメちゃんに、また私がびっしょりになってしまって、思わず笑った。
    ポメちゃんは自分の行動にびっくりしたような顔をしていて、それが可愛くて笑いながら、新しいタオルでポメちゃんを包み込む。
    ドライヤーかけたらびっくりしちゃうかな……どうかな……。
    小さなコアを嵌めてドライヤーのスイッチを入れても、ポメちゃんは微動だにしなかった。
    このポメちゃん……強いね……?
    それならそれでやりやすい、と熱くなりすぎないように乾かしていくうちに、どんどんもふもふになっていくポメちゃんに笑顔が隠せない。
    短い足も毛に埋もれてもっと短くなる。毛が絡まないようにそっと梳かしてあげながら、ポメちゃんへの内心での拍手喝采を抑えきれない!
    あんなに細くて小さかった体が……!今やもふもふのふわふわ!温かい体に心なしか瞳もさっきよりもきらりとしている。
    か、かわいすぎる……!抱きしめたい……!
    でもそんなことをしたらポメちゃんにびっくりされちゃうかもしれないし、何より私がまだびしょ濡れだった。
    ドライヤーを左手、櫛を右手に持ち、ふわふわのもふもふで立派なポメラニアンちゃんがしっかりと立って私を見上げるのに、私はこれまでの人生の中で一番充実した瞬間は今だと確信する。
    このポメちゃん、最高に可愛い。天才。優勝!
    「ポメちゃんお腹空いてない?」
    話しかけると、ポメちゃんは怪訝な顔をした。
    表情は変わっていないというか可愛いポメちゃんなのに、どうしてか怪訝な顔をしているような気がする。
    「もしかして名前ポメちゃんじゃ嫌かな……」
    黙っているポメちゃんが何を考えているのかはよく分からない。でも考えてみたらこの子は誰かのポメちゃんかもしれない。となると別の名前があるのだろう。
    「とりあえず仮にポメちゃんで良い?」
    すると仕方ない、とでもいうようにポメちゃんはソファに座って落ち着いた。うーん、美ポメちゃんだ。
    瞳の中に赤い虹彩があって、もしかして高貴なポメちゃんだろうか?なんて考える。
    手を伸ばして撫でても嫌がらないのが嬉しかった。ちょっと面倒そうな顔をしている気はする。
    「よしよし、君はあんな雨の中、耐えててえらかったね」
    うりうりとほおをぎゅっと包むと、流石にふい、と顔を背けられてしまって私は素直に手を離す。ご褒美は終わりのようだ。
    私がいた世界ではこんな色合いのポメちゃんはいないけど、テイワットなら珍しくないのかもしれない。
    何食べるんだろう。と言っても今この家には桃しかない。頂き物の美味しい桃。
    わんちゃんに桃は大丈夫だったはず!とキッチンで桃を小さく切って、お皿に乗せてポメちゃんの元へと運ぶ。前にお皿を置くと、ポメちゃんは私を見上げ、桃を見下ろして、それから小さな口で食べ始めた。
    待ってほしい可愛すぎる。
    あまりの可愛さに胸を抑えて苦しみそうになるのを、ポメちゃんがびっくりするかもという理由で耐えた。
    ちゃんとご飯も食べられるし、元気みたいだ。
    そう思った途端にほっとして、同時にどっと疲れが出てくるのを感じた。これはまずい。寝落ちる予感がする。
    なんとか服だけでも着替えようと、体と髪を拭いて、かろうじて下着とキャミソールを新しいものに着替える。
    その間に食べ終わったらしく、おとなしく座っているポメちゃんに、もしかして声が出せないポメちゃんなのだろうか、と思いながら、私はベッドへと倒れ込む。
    すると心配してくれたのか、ポメちゃんが枕元に飛び乗ってくる。
    「きゅん」
    鳴いたーーー!!!!
    初めて鳴き声を聞いた!あっ、でもさっきくしゃみしてたから声は出せるんだろう。めちゃくちゃおとなしいポメちゃんというだけだったみたいだ。
    嬉しさにへらりと笑みを浮かべながらも、頭を撫でる。
    「ごめんポメちゃん……もうスタミナゼロで……。明日ちゃんと返してあげるから……」
    その興奮すら眠気に勝てなかった。
    急速に思考が鈍くなっていく中で、無意識にふわふわの塊を抱き寄せる。あったかくてふわふわで幸せだ。何かが吠えてる声がしたような気がしたが、気にすることも出来ずに眠りに落ちていった。

    意識が目覚める感覚に、瞼を震わせてから私はまだ目を開けたくないと体から力を抜く。
    なんだかあったかくて大きいものに抱きついているけど、そういえば昨日ポメちゃんを拾って……。
    ……デカくない?
    ぱっと目を開けた瞬間、鮮烈な緑の瞳と目が合って、私は息をのむ。
    「ようやく起きてくれたか。そろそろ腕を離してもらえるとありがたいんだが」
    低い男の人の声が耳に届いて、私は弾かれるようにベッドから飛び退いた。
    「え、え?ポメちゃんは……!?」
    身を起こしたその男の人が思っていた以上にさらに身長が高くて、私は肩を強張らせる。
    「いくつかの説明は必要だが、最初にその問いに答えよう。俺がその、君が言うポメちゃんだ」
    真面目な顔からでたポメちゃんの単語に固まる。
    そういえば、髪の色と目の色が全く同じだ。
    「わ、わたしのポメちゃんがこんなでっかい男に……」
    衝撃を隠せない私に、男の人はベッドから毛布を持ち上げると、私の肩にかける。
    「そしてその前に、できればシャワーを浴びて服を着た方がいい。昨夜の君は俺のことばかりを気にしていたが、風邪を引く可能性が高いのは君の方だ」
    「え、あ……」
    そういえば、と見下ろした自分は裾の長いキャミソールに下着一枚。
    う、わ………あ…………。
    腕を組んだ男の人は気を遣ってくれているのか視線を逸らしている。
    「ちょっと……失礼してきます……」
    「ああ」
    なんでこの人こんなに落ち着いてるんだ!?と思いながら、私は毛布を引っ被ってばたばたとバスルームへと逃げ込んだ。
    見られたことよりも、あの可愛いポメちゃんがあんなでっかいイケメンだったことがショックだ。
    あんなに可愛かったのに…………。
    唇を噛み締めて、私はこの世の不条理をひとしきり嘆いたのだった。




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