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    みけレオ小話
    時系列はたぶんズ!!のどこか 未読ストあり

    #みけレオ
    unidentifiedLeo

    Forever,Forever ふわふわと頭を撫でられたような気がした。優しく穏やかで、見知った手のひらの感触。そして、慣れたように自分の名前を呼ぶ声。
     夢かもしれない。いや、きっと夢だ。寮の同室相手でレオの頭を撫でてくれる人はいない。一人寝ならばもっとあり得ないだろう。
    「レオさん」
     ああ、いつまでも眠っていたい。惰眠を貪ることは自らの才能への冒涜だったが、反対に唯一の休息でもある。なぜなら、食事をしていても性欲に侵されても、メロディは待ってはくれないからだ。けれど、睡眠中だけは音楽の女神様も手出しの出来ない時間だった。
     だから、もう一眠りしよう。適当に理由をこじつけて、んん、と呻きながら布団を頭まで被った。
    「朝食が出来てるぞ。アメリカ風に、パンケーキにベーコンとメープルシロップを乗せてみたんだが。レオさんのぶんも、ママが食べてしまおうかなあ」
    「……んん?」
     夢にしては、やけにリアルなシチュエーションだ。被った布団から再び頭を出すと、重たい目蓋を開く。そこには、溌剌とした笑顔をふりまく斑がベッドに腰掛けていた。
    「おはよう! 蚤寝晏起、ネロさんはお寝坊さんだなあ!」
    「声でか……ママ、なんでおれの部屋にいんの……?」
    「なんだ、忘れたのかあ? それと、ここは俺の部屋だぞ」
     昨日から一緒じゃないか、と言われてようやく思い出した。アメリカのレコード会社に訪れた時に斑と偶然遭遇し、どうせなら夕飯を共にしようという話になったのだ。知人の不動産屋に二週間だけ借りたという斑のアパートに招待され、その後は気付けば朝までぐっすり、という次第だった。
    「ふわあ、ごめん……。ベッド占領してた?」
     見渡してもベッドは一つしかない。一緒に眠ったのだろうが、大柄な斑には窮屈だっただろう。欠伸を噛み殺しながら謝罪するも、斑は大らかに笑うだけだった。
    「まったく問題なかったぞお、レオさんは細いからなあ!」
     最後の言葉は余計だった。身長体格の話は男としての沽券に関わるのだ。むすりと唇を尖らせるが、斑は「彊食自愛、いっぱい食べて大きくなろう!」なんて気休めの台詞を吐くだけだった。


     斑と連れ立ってリビングに入ると、甘い匂いが鼻腔をくすぐった。皿に並べられていたのは、シロップがたっぷり沁み込んだほかほかのパンケーキに、こんがりと焼き目の付いたベーコン。鮮やかな彩りのサラダと、芳しいブラックコーヒーまで添えてある。ホテルで出されるような、まさしくアメリカン・モーニングだ。
    「うわ、美味しそ〜! ありがとうママ! いただきます!」
    「こらこら、先に顔を洗ってきなさい」
     空っぽの胃袋を満たすために早速席に着こうとするも、ぴしゃりと注意される。この叱り方は既視感があった。まるで実家に居るようだ。
    「ママ、なんかお母さんみたいだ……」
    「褒め言葉かあ? 有り難く受け取っておこう!」
    「今のは褒めてないって!」
     けど確かにお行儀は悪かった、と反省して洗面所に向かう。適当に水で顔を洗うと、ぴょんぴょんと跳ねている髪の毛は一つにしばって誤魔化した。小走りでリビングへ戻ると、斑はもう椅子に座って待っていた。
     普段よりリラックスしているように見えるのは、髪型をセットしていないからだろうか。無造作なままでも様になる。それに、やはり外国という地がよく似合っていた。
    「おまたせ」
    「一分も待ってないさ」
     冷めないうちにどうぞ、と言われて、レオも頷いた。手を合わせて「いただきます」と感謝する。斑も自然に同じ動作をした。どれだけ日本から遠く離れた場所に来ても、身体に染み付いた習慣はなかなか変わらなかった。

     レオは明日日本へ飛び立つ予定である。
     今日はインターバル。仕事量次第では勝手に休みを作れるから、自営業はこういう時だけ便利だ。
     せっかく斑と会えたのだし、すぐに帰国してはもったいない。
     ──だから今日は、親友と二人で過ごす、久しぶりの休日だった。



     *

     斑お手製の朝食は見た目以上に美味で、ボリュームのあるパンケーキを朝からぺろりと平らげてしまった。日本に帰ってもおねだりしたい程の腕前に、思わず滞在期間を伸ばそうかと考えたくらいだ。
     食後は映画館に赴き、適当な映画を鑑賞することになった。斑に見たい映画はないのかと聞けば「レオさんと一緒なら何でも楽しいさ」と口説き文句が返ってきたから、反対にどれを選ぶべきか悩んでしまった。結局、無難なアクション映画のチケットを買ったのだが。
     じっとしているのは苦手だけれど、映画館はどっぷり世界観に浸れるぶん、家で鑑賞するよりインスピレーションの糧となりやすい。ところどころ英語が聞き取れなかったが、派手な演出は戦隊ヒーローのようで格好良かった。脳内で完成した曲は、帰国したら流星隊の誰かにプレゼントするのもいいかもしれない。‪Knights‬は敵側をイメージした曲の方が似合う気がする。レオ流の手土産だ。
     その後は散歩がてら近くのスーパーまで歩いて行った。途中、露店で買ったホットドッグを斑と半分こしてみたのだが、それだけで一人で食べるより美味しい気がした。
    「良い空だ。今日は雲ひとつないなあ」
    「うん」
     斑が眩しそうに空を見上げる。天気は快晴だ。こうして二人で母国ではない地を眺めていると、どこか懐かしい気持ちになる。
     砂漠を渡り、草原の空気を感じ、果てのない星空を見上げたあの頃。ちっぽけな自分と、広すぎる世界を知った。レオが自分らしく呼吸できるようになったのは、斑が手を引いて海へ飛び出してくれたからだ。
     何となく、また手を繋ぎたくなった。もう二十歳が近いのに。けれど、以前男女のカップルに間違われたことを思い出して──外国ではレオもベビーフェイスらしい──とりあえず、今回は止めておくことにした。
     二人並んで思うままにメロディを口遊みながら歩いていれば、あっという間にスーパーまで辿り着いた。ドームのように巨大なスーパーで、夕飯の材料と、二人で食べきれないくらいビッグサイズのケーキを買った。斑が言うには、余ったぶんは冷凍しておけるとか。特に記念日というわけでもないけれど、たまの贅沢も素晴らしい。
     
    「ただいま〜」
    「おかえり、レオさん」
    「返事が返ってきた! ママもおかえり! いいな、我が家って感じで」
    「レオさんが気に入ったなら、この部屋、買っても良いかもなあ」
     玄関の鍵を掛けながら言う。あっさりとした口振りは冗談には聞こえず、放っておいたら本当に購入してしまいそうだ。
    「おれじゃなくて、ママの好みで決めないと後悔するぞ〜? でかい買い物だろ?」
    「ううん、それはどうかな」
     言葉を濁すと、斑は買い物袋をすべて手にして室内に入っていく。斑が何を言いたかったのか、レオにはいまいち分からなかった。
    「ケーキ、溶ける前に冷やしておこう」
    「そうだった。食べるのは夕飯の後にする?」
    「食後のデザートにしようか。レオさん、買った物は、空いたところに適当に入れてもらってもいいかあ?」
    「おっけ〜」
     食材を冷蔵庫に入れてリビングまで戻ると、一気に疲れが出てきた。ぼふん、と二人掛けのソファに座り込む。昨夜は九時には寝た筈だが、既に眠たい。たくさん歩いたからだろうか。
     斑は軽く夕食の仕込みをすると言ってキッチンに行ってしまった。手伝いたい気持ちはあるが、下手に手を出しても迷惑だろう。斑の準備が終わるまで、映画を見て浮かんだメロディを楽譜に書き留めて眠気を紛らわすことにした。
     二十分程経って、斑も本を数冊手に持ってレオの隣へ座ると、ぱらぱらとページを捲り始める。エネルギッシュなお祭り男にしては、今日の彼は静かだった。散歩に映画、それから読書。
     ゆるい雰囲気、と云ったら聞こえはいいが、疲れているのではと心配になる。
     自分に出来ることはないか、と脳をぐるぐる回転させた。数秒頭を悩ませると、ふいにぴんと閃く。
    「ママ、ママ! こっち!」
    「ん?」
     名前を呼べば、斑は不思議そうに首を傾げた。それに構わず、催促するように己の膝を叩く。
    「なんだ? ……もしかして、膝枕かあ?」
    「そう! ほら、遠慮せずに」
    「でも、……ッとと、」
     ぐいぐいと斑の頭を引き寄せれば、斑も荒くは抵抗できないようだった。大人しく、されるがままにレオの膝に頭を乗せる。少々重いが、このくらいはなんてことない。
    「どうしたんだ、突然」
     少しばかり気恥ずかしそうに斑が尋ねる。することはあっても、されることはあまりないのだろうか。
    「ママ、疲れてるかなって。ヒーローにも休息は必要だろ?」
    「……そんなことはないぞ。俺はいつだって元気いっぱいだあ」
     ママにしてはわかりやすい強がりだ、とレオは目を細める。
     昨日、斑を快く思っていない事務所の役員にしつこく嫌味を言われていたのを、レオは目撃していた。そのことに気付いた斑は器用に会話を終わらせてレオの元へと駆けつけたが、斑は愚痴ひとつ言わなかったから、レオも口を出せなかった。斑の性格だと些細な嫌味は気にしないかもしれないが、気分の良いものでないのは確かで。
     だから、遠回しにでも斑を元気付けてやろうと思ったのだ。言うなればレオのエゴ、もとい自己満足だ。自分の膝枕で癒されるのかどうかは微妙にしても、人との触れ合いは大切だろう。
    「ほんとかなぁ。今日のママは、いつもよりお上品な気がするけど」
    「お上品だったら、レオさんが膝枕してくれるのかあ? それなら、たまにはお上品なふりをしてもいいなあ」
     戯けながら斑が言う。弱みは見せないつもりのようだ。
    「も〜……。じゃあ、これはおれがやりたいだけ! 今日はママな気分だから! 異論はミュージカル調に教えて!」
    「はっはっは、異論のレベルが高いなあ! それに膝枕だと、ママというより、恋人になった気分だ」
    「……じゃあ、そっちにする? 今日は、こいびとの気分」
     躊躇いもなく会話に乗った。レオから恋人なんて言葉を聞くとは思わなかったのか、斑は唖然としたように瞳をぱちくりさせる。
     どこまで自分を幼い子どもだと見做しているのか。二人きりだった旅の最中、夜も眠れない自分のために、その手で慰めてくれたことだってあったというのに。汚いことからはとことん遠ざけてくる。思えば、行為が最後までいったことも、斑が自身の欲に任せて触れることもなかった。この男は優しかった。レオにとっては、正義のヒーローでしかなかったのだ。
    「おれはいいけど。だってママだし」
     レオは自然と唇も綻んで、きつい印象を与えがちな目元も柔らかく伏せられた。‪Knights‬で仲間に恵まれてからは、慈しみというものを理解できた気がする。愛おしい、守りたい、たとえこの手が汚れようとも──そんな気持ちのひとつひとつを教わった。
     太ももに流れる茶髪を指で梳いていく。今日はまだ結われていないから、引っ掛かりのない指触りが心地良かった。だが、斑の方は居心地が悪そうだ。レオが大人のような顔をするといつも、嬉しそうな、けれど寂しそうな、複雑な表情をされる。斑に自覚はないかもしれない。
     指の腹で精悍な頬をなぞれば、ぱしりと手を掴まれた。ゆるりと指を絡め取られて、動かせなくなる。
    「そんなこと、軽々しく言うもんじゃないぞお。君には大切な人がいるだろう」
    「セナのこと? そりゃあ世界より大切だけど。でも、恋人とか、そういうのはあんまり考えたことないかも」
     レオに恋人はいない。だからといって、大好きな泉と恋仲になりたいかと言われたら、そうでもなかった。自分で提案したものの、斑と恋人になりたいかと問われても、首を傾げてしまう。
     斑は親友だ。ズっ友と称してもいい。いっそ関係の名前はなんだって構わなかった。彼を対等に支えられる場所なら、いつまでも切れぬ関係なら、何になろうとも。
    「うお!?」
     拘束されていない方の手を持ち上げ、突然わしゃわしゃと暴れさせた。乱された斑の髪が鳥の巣のように跳ね回っている。
    「よし、交代! 脚が疲れたから、次はママの番な!」
    「まったく」
     仕方ないな、と言葉に似合わぬ優しい顔で告げると、斑は起き上がった。レオが頭を乗せやすいように座り直すと、ぽんと膝を叩く。レオは腰に抱きつくように寝そべった。
    「わはは、硬い! 寝心地悪いな〜、ママの膝枕」
    「レオさんのお気に召さなかったか? 次は脚の筋肉を柔らかくするトレーニングを入れるかなあ」
    「おお、頑張れママ!」
     そこにごろごろと転がり、猫のように斑の脚に擦り寄る。幼く甘えるそぶりを見せれば、斑は安心したように笑みを浮かべた。
    「みけじママ」
    「なんだ?」
    「……なんでもないや」
     ──救われてばかりの青春だった。
     けれど、‪この溢れ出す音楽が。あの夏、ヒーローに教わった生きる術が。Knights‬で培った獰猛な牙が。どん底まで落ちて、這い上がったからこそ。
     きっと斑の力になれる未来がくる。
     レオは永遠に彼の味方であり、彼の敵を屠り続けるのだ。背負うものが多すぎる故に、雁字搦めになった彼を救うために。以前、レオのヒーローがそうしてくれたように。
     何年後になるかは分からなかった。その時を、レオは待たねばならない。甘えの奥に、猛獣を飼い慣らしながら。
     斑に甘えることに嘘はない。けれど、レオは少しだけ大人になったのだ。斑に守られるだけではなくなった。上手な愛の与え方も、多少は分かるようになった。
     世話を焼かれるだけの存在なんかくそくらえだ。世話を焼きたいという甘えを許容するか弱い生き物でもなくて、対等に甘えてもらえるような親友になりたい。それだけで足りないなら、いつかのように抱き合えばいい。
     だから、斑がレオの「あいしている」を正面から抱きしめてくれる日まで。彼の味方として辛抱強く待てるくらいには、強くなったのだと思いたいのだ。
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