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    つーさん

    @minatose_t

    辺境で自分の好きな推しカプをマイペースに自給自足している民。
    カプは固定派だが、ジャンルは雑食。常に色んなジャンルが弱火で煮込まれてるタイプ。
    SS名刺のまとめとか、小咄とか、思いついたものをぽいぽいします。
    エアスケブもやってます。お気軽にどうぞ。

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    つーさん

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    雰囲気シリアス。うちのみけレオの解釈はこういうのですって感じの。
    互いに対して執着してて、双方向で支え合うことでどうにかなってる拗らせた感じの親友が性癖です。
    こう、守らせてくれてありがとう、みたいなママというか。

    #みけレオ
    unidentifiedLeo

    みけレオ小咄――レオさんは君のまま、君の愛する世界を生きれば良い。

     三毛縞斑は月永レオにそう告げる。どうか幸福でと。君を害する者は全て、自分が排除すると微笑んで。

    ――俺はもう大丈夫だよ。だからママも自分を大事にして。

     月永レオは三毛縞斑にそう告げる。誰かの為に己をすり減らし、人に寄り添えない怪物だと己を卑下しないでくれと。
     彼らの関係は端から見れば庇護者と被庇護者にしか見えないだろう。
     それは確かに間違っていない。何一つ間違ってはいなかった。感受性が強く傷つきやすい月永レオという天才を、三毛縞斑という怪物が大切に大切に守っている。それは紛れもない事実だ。
     けれど、それだけの関係ならば、彼らはこんな風に互いを唯一無二の存在として、身を寄せ合うことはなかっただろう。
     月永が最も弱っていた頃を、三毛縞は知っている。
     今にも壊れてしまいそうだった彼を真綿で包むように大切に保護して、慈しんで、愛して、今の屈託無く笑う無邪気な月永に戻したのは三毛縞だ。勿論、三毛縞一人の力で月永が救われたわけではない。だが、少なくとも、あの頃の月永を救ったのは三毛縞に他ならない。
     誰も、月永の心に寄り添えなかった。ズタズタに引き裂かれ、砕け散った心の破片を抱えたままで、外の世界の全てに怯えていた月永。その彼を外の世界に、彼がそれまで知らなかった、遠い遠い異国へ連れて行くことで外界へと触れさせたのは、紛れもなく三毛縞なのだ。
     三毛縞は、屈託なく笑う月永が好きだった。天才ゆえの無邪気さで、どんな痛みも哀しみも音楽へと変えることで昇華しようとしていた不器用な姿も、猫のように気まぐれに、自分の感情に素直に行動する幼い部分も。妹を慈しむ兄としての姿も、仲間を大切にしようとする優しさも。月永レオという存在の全てが、三毛縞には愛おしくて大切な、美しい光だった。
     だから、手を伸ばした。自分のような者が触れて良いのかどうか解らなかった。いや、解らなかったから、他の誰かに託そうとした。けれど、彼らでは月永を守れず、寄り添うことも出来ず、ただただ優しい王様を壊してしまったのだと知ったときに、それならば己が守ると心に決めたのだ。
     遅きに失したということぐらいは、解っていた。解っていて、それでも三毛縞は怯えて震える弱々しい月永を抱きしめて、その手を引いて、外の世界へと連れ出した。世界にはまだ美しいものが沢山あって、彼の存在を傷つけるもの達ばかりではないのだと教えるために。
     その手を、月永は取った。何も感じず、何も考えず、ただぼんやりと流されていただけなのかもしれない。それでも月永は三毛縞の手を取り、彼の導きで外の世界に触れ、再び音楽に向き合うことが出来るようになった。
     全く同じとは言わない。もう、あの頃の月永レオは戻らない。壊れた以上、同じ形には戻らない。
     それでも良かったのだ。三毛縞も、月永も。歌えなかった月永が、歌えるようになった。笑えなかった月永が、多くの人々と無邪気に笑うようになった。その事実だけが、彼らにとっての必要な世界だった。
     そして、月永は三毛縞にとってただ一人、どのような状況でも守らせてくれる相手でもあった。
     怪物と己を称するように、三毛縞には他人と寄り添うことが難しい。守るつもりが壊してしまう。大切にするつもりが恐れさせてしまう。彼は他者と生きるのが苦手な男だった。
     その本質が優しい男だとしても、強すぎる力は弱い人々を傷つけてしまう。生まれ育った環境で身につけた薄暗い価値観と相まって、三毛縞には他者を遠ざけてしまう性質があった。
     月永を守りたいと思ったとき、最初に彼を守る役目を他の誰かに託そうとしたのがその証明だ。三毛縞は己を知っていた。敵を倒すことは出来ても、誰かを振り回して壊すことは出来ても、道化の笑みで仮初めの愉悦を与えることは出来ても、癒やして守って救うのは、自分には難しいのだと。
     三毛縞を取り巻く世界は、ずっと、そんな風だった。どれだけ戯けて見せても、本質に染みついた何かは消えない。人々は、三毛縞が上手に隠した異質の気配を察して、どこかで彼との間に一線を引く。全力の彼を、受け止めてはくれない。 
     だが、月永はその中でただ一人、何があろうとも三毛縞から離れていかない希有な存在だった。だからこそ三毛縞は月永を慈しむ。どんなときも、何があろうとも、月永だけは守り抜くのだという気概があった。
     ……それは、彼が幼少時から知っている一人の少年を、別の少年に託したからかもしれない。《かみさま》を消した大罪人である三毛縞にとって、怪物と己を認識している三毛縞にとって、守らせてくれる存在というのはありがたかったのだ。
     役目を果たすことで人は存在を許される。己の役目、居場所を奪われた状態の三毛縞にとって、月永を守ることは己の居場所を守ることにも等しかった。
     月永の側にいるときに、彼の笑顔を向けられるときに、三毛縞は存在を許されている気になる。生きていても良いのだと思える。それは、己が孤独だと知っている怪物にとっての、常に凍えたように生きてきた異端者にとっての、唯一の陽だまりだった。
     守られているように見える月永が、居場所を失った三毛縞を守っているのだ。その構図は当事者二人以外にはわからず、……いや、当事者二人も、正しく理解はしていないのだろう。それでも本能で理解して、彼らは共に在るのだ。

    「ママは本当に、いつでもどこでも俺に甘いなぁ」
    「んんー?俺はただ、レオさんが大好きなだけだぞぉ」
    「ママはこんなに優しいのに、どうして誰もわからないんだろう?」
    「ははは。俺を優しいと言うのはレオさんぐらいだな」

     小首を傾げて呟く月永に、三毛縞は声を上げて笑った。その笑顔は朗らかで、人好きのするものでしかない。怪物と己を称する男には不似合いな笑顔。
     だが、月永は知っている。この笑顔も三毛縞という男の《本当》なのだと。人間は多面性を持つイキモノで、相手に合わせて見せる面を変えることで上手に生きながらえているのだ。月永には難しいそれを三毛縞は容易くやってのける。
     だから、月永が告げる言葉は、優しく、柔らかで、三毛縞の心にするりと滑り込む。

    「優しいママを、もっと沢山の人が知ってくれれば良いのにな」
    「俺は皆のママになりたいと思っているが、別にそんなに優しくないからなぁ。レオさんが俺を優しいと思ってくれているなら、それは嬉しいけれど」
    「ママは優しいよ。大好きだ。ママは絶対に俺を傷つけないし、裏切らないから」

     にこにこと笑う月永に、三毛縞も笑みを浮かべた。レオさんがそう言うならそうなんだろうなぁと嘯く三毛縞に、月永は何も言わなかった。偽悪的、露悪的に振る舞う三毛縞を月永は知っている。
     ママは大抵の相手に嫌われてるからなぁ、と月永はのんびりと告げる。普通にヒドい発言だった。けれどそれを、三毛縞は何でだろうなぁと笑って聞き流す。その言葉に続く、月永の「俺はママが大好きだぞ!」を知っているからこそ。
     屈託無く誰の元へもぐいぐいと首を突っ込みながら、その巨体と大声で振り回しながら、その実は相手との距離を取っているのが三毛縞という男だ。彼は本心を滅多に見せない。見せることを苦手としていた。
     それでも、月永の前では比較的素の自分をさらけ出している。月永はそれを知っている。だから、三毛縞が不器用に生きていても、まぁ良いかと思うのだ。自分もそれほど器用に生きているわけではないので。



     歪と歪が肩を寄せ合う彼らの生き方を、きっと人は共依存と呼ぶのだろう。



    FIN
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