時刻は十八時半。闇に紛れるような黒いレインコートを着た俺は、人混みを避けながら足早に目的地へと向かっていた。
ああくそ。
悪態が口を衝いて出る。当直明けの日勤をようやく終え、今は別件の仕事に当たっている最中だ。人目を憚る為の格好とはいえ、まだまだ蒸し暑い季節にビニールの服はきつい。暑さと疲れから、休む間もなく依頼人の為に動いている現状を思うとだんだん苛立ちが込み上げてきた。全ては自分が選んだ道とはいえ、依頼人の呑気な顔を思うとどうも腹立たしい。
依頼人──ドブが指定したコインパーキングに向かう途中、よく見知った顔を見つけた。
白縁の眼鏡をかけた、自分と瓜二つの顔。双子の弟だ。
ああくそ。二度目の悪態をつく。
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