君のいない世界で生きる「お前は生きてくれ。大丈夫、俺はいつでもお前の傍にいるから」
満身創痍の体を引きずって、同じくぼろぼろの体をして地に倒れ伏すガイアを抱き起こす。お互いの腹からはいまもなお血が流れ、放っておけば出血で死ぬのも時間の問題だなと、慌てるでもなくただそう思う。そうでなくとも酷使した体はじきに生命の終わりを迎えるはずだ。だのに、腕の中の男は生きろと平気で宣う。自分達がいまどういう状況なのか知ってて言っているのだろうか。人はどんなに抗えない状況でも一縷の望みをかけ言霊にのせるときがある。どうせ救われない、受け入れるしかないさだめだといままで諦めてきた男が、この期に及んでそんな悪あがきをするとは死ぬ間際でようやく欲を口に出せるようになったのかなんとも皮肉な話だ。
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