Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    nai_9nnmni

    好き勝手になにかあげるかもしれない
    メモとか進捗

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    nai_9nnmni

    ☆quiet follow

    ガイアに呪いをかけられたディルックの話
    最初から死ネタだけど最後までふたりがでてきます(?)

    #ディルガイ
    luckae

    君のいない世界で生きる「お前は生きてくれ。大丈夫、俺はいつでもお前の傍にいるから」
     満身創痍の体を引きずって、同じくぼろぼろの体をして地に倒れ伏すガイアを抱き起こす。お互いの腹からはいまもなお血が流れ、放っておけば出血で死ぬのも時間の問題だなと、慌てるでもなくただそう思う。そうでなくとも酷使した体はじきに生命の終わりを迎えるはずだ。だのに、腕の中の男は生きろと平気で宣う。自分達がいまどういう状況なのか知ってて言っているのだろうか。人はどんなに抗えない状況でも一縷の望みをかけ言霊にのせるときがある。どうせ救われない、受け入れるしかないさだめだといままで諦めてきた男が、この期に及んでそんな悪あがきをするとは死ぬ間際でようやく欲を口に出せるようになったのかなんとも皮肉な話だ。
    「一緒に生きてくれとは言ってくれないのか?」
    「ははっ...!それはまた贅沢すぎる願いだなぁ。いいんだよ、俺はこれで。...嘘じゃないぜ?」
    「僕はこれからも君と共に生きていたいよ」
    「十分生きたさ、俺の存在を残しすぎたくらいにはな」
     だんだんとガイアの鼓動の音がゆっくりとしたものになっていく。こんなに近くでガイアの鼓動を聞くのはいつぶりか。もっと、穏やかなベッドの上で、この音を聴きたかった。
    「一緒に生きてくれ、ガイア」
     その言葉の返答を聞く前に視界は暗転した。


     目を覚ますと目の前にはとうに冷たくなったガイアの体があった。辛うじて僕は生き残ったらしい。
    「ガイア、ガイア...?モンドに帰ろう。君の好きな酒を、たくさん、作ってあげるからっ...!」
    ――どういう風の吹き回しだ?いつもは飲みすぎだとうるさいくせに...まぁお言葉に甘えてご馳走になってやろうじゃないか。
    ――ディルックの旦那、私には酒のサービスはないのかしら?
     いつかの酒場での会話が頭のなかに浮かんでは消えていく。あの時のような軽口が色の失った唇からでることはない。
    「は、傍にいるだと?...もっとましな嘘をつくんだな」
     抱き締めた体は固くて冷たくて、抱き締め返されることもない。どうして僕だけを置いていった。なんのためにこの世界を守ったと思っている。
     悲しみに嗚咽が漏れることはなく、何も言わなくなった亡骸を前にひとりただそれを眺め続けた。
     その後、みなが大戦の傷跡が残るテイワット全土の復興に尽力するなか、ひとり各地を周っては魔物の残滓を屠っていった。ワイナリーはエルザーが継ぎ、日常が戻ってきたことで傾いていた酒造業もかつてのようにとまではいかないが徐々にもとの地位を取り戻しているようだ。モンドの近くを通りかかっても帰る気は毛頭ない。――あそこにガイアはいないのだから。
     魔物の討伐を繰り返す生活を始めてから数年、ふと気づいたことがあった。それは体が歳をとっていないということ。怪我をして死にそうになっても痛みで意識は朦朧とするが決して死ぬことはない。そうして、これはガイアが僕にかけた呪いだと考えた。いつか死んで向こう側へ行ったとき、置いていかれた怒りをぶつけてやろうと思ったのにこれじゃあ永遠に会うことが叶わないと恨み言を連ねた。
     そんなとき、どこに向かうでもなくぼんやりと歩いていたら、暗闇のなか太陽の光に憧れを見た国へ辿り着いた。かつて多くの人々が必死に暮らしていた地は荒れ果て、ぼろぼろの柱が幾年の歳月が経ったことを物語る。この国を明るく照らした中央の巨大な塔はその役目を終え、再び使われる日を静かに待っていた。
    「あれ...?ディルック、さん?どうして、」
    「君は...」
     その声を聞いたのはほんとうに久しぶりだった。双子の片割れを取り戻しまたどこかの世界へと旅立っていった友。あの頃と変わらない容姿に皆で集まって笑いあった懐かしい日々が思い起こされる。
    「久しぶりだね。またこの世界を旅したくなったのか」
    「なんとなく寄ってみたんだ。思ったよりずいぶんと時間がたっててびっくりしちゃった」
    「あぁ、もうどの国も次へ歩みだしているだろうね」
    「ディルックさんは、その、...帰らないの?」
    「今更僕に帰るところなんてないよ」
    「...そんなことないと思うけどなぁ」
     旅人と仲間たちと共にモンドを、この世界を全力で守った。誰のために?生きてほしかった人たちは皆死に、帰ったところでだれ一人僕を迎える者はいない。大戦でぼろぼろになったモンドに昔の面影なんて残っちゃいない。モンドだけでなく他の国も新しく生まれ変わろうと生き残った人々が手を繋ぎ歩き続けた。今のモンドは、僕たちが生きた国ではないのだ。
    「旅人。君はいまこの世界をどう感じる?懐かしく思うか?」
    「...ねぇディルックさん。どんなに姿形が変わろうとね、そこであった思い出は消えないんだよ。俺たちが忘れない限りね。だから、みんなと歩いたこの世界をずーっと懐かしく愛おしく思うよ」
    「...」
    「大丈夫!ずっと傍にいるって言われたんでしょう?」
    「ッ!どうしてそれを、」
    「ふふっ、秘密だよ。...そろそろ次の世界へ行くんだ。久しぶりに会えて嬉しかった。あと、最後に伝言!たまにはモンドに帰ってお墓参りしろってさ!」
     そう言って、旅人は初めて会ったときと変わらない笑顔を見せて去っていった。
    ――大丈夫、俺はいつでもお前の傍にいるから。
     いままで聞いてきた嘘の中でこれほどまでにひどい嘘を聞いたことがないと思った。もう何を言っても返してこない男に向かって声が枯れるまで叫び続けた。嘘つきだと、ずっとこの数十年間恨み続けた言葉。
    「大丈夫、か。ははっ...旅人、相変わらず君のその自信には恐れ入るよ」
     久しぶりに会った栄誉騎士のお言葉だ、信じてみるのも悪くないかもしれない。
     
     何十年ぶりかのモンドの地を踏みしめる。モンド城に行く前に少し遠回りをしてみようかとまずは奔狼領を訪れた。近くに差し掛かった時、ふわりと葡萄の甘い香りがして、それに誘われるようにワイナリーまでやってきた。眼前に広がる葡萄畑は僕がオーナーのときよりも敷地が広がっていて、瑞々しい葡萄が太陽に照らされきらきらと光っていた。
    「ねぇお父さん!ワイナリーの葡萄ジュースが飲みたいよ」
    「んん?まったく、仕方がないなぁ」
     通りすがりの親子からそんな話し声が聞こえてきた。
    ――葡萄ジュースをそのまま飲むなんてな。ロマンが分からん奴だ。
    「...フン、葡萄ジュースだって悪くないだろう」
     過去の幻影にひとりごちた声に、ばさりと鳥の羽ばたきが応えたような気がした。上空を一羽のフクロウがドラゴンスパインの方角へと飛んでいく。ワイナリーの屋敷にフクロウの置物を飾っていたが、いまも置いてあるのだろうかとふと思う。そして、その近くに飾ってあったセンスを疑う壺。
    「あの壺のセンスは今思い返してもひどいものだな」
     風立ちの地を超えて星拾いの崖まで歩いた。崖から見渡すモンドは広大でどこまでも美しく、遠くに小さく見える風車は変わらず風に吹かれ回っている。蒲公英のわたげが踊るように宙を舞いどこか遠くへ旅立っていく。それらを眺めていれば頬を生暖かいものがすべりおち、ぽたりと草地に吸い込まれていった。
     まったく知らない国になっていると思っていた。何を見ても面影のひとつや思い出せないだろうと。それがどうだ。優しい風に吹かれる草木も、香る葡萄も、自由に舞う蒲公英のわたげも、すべてが愛おしい。
     崖を下り、浜辺を目指す。小さな貝殻を見つけては思わず拾い上げた。貝殻拾いなんていまさらする歳じゃない。だけど、幼い頃一緒に拾いあげたように。うだる夏の日、不思議な島で手持ち無沙汰に一緒に拾いあげたように。ひとつひとつ貝殻を集めていった。

     意を決して門をくぐったモンド城は、僕が恐れていたほどさほど造りは変わっていなかった。今まで恐れていたことが途端馬鹿らしくなり、苦笑がもれる。石造りの階段を上り、大聖堂の裏手にある墓地を目指す。ガイアの亡骸はそこに埋葬されたはずだ。途中すれ違った妙齢の女性が赤い服の女性に手を引かれ歩いていくのを見た。記憶の中の容姿とは幾分変わっていた彼女たちだが、昔とかわらず強い意志をその瞳にたたえていた。

    「来たよ、ガイア」
     ”kaeya alberich”と書かれた墓の前に立ちそう告げる。墓には蒲公英の花とうさぎを模した人形が供えられていて、綺麗に保たれた墓の様子から彼女たちが頻繁にここに通っていたことがわかる。そして、ガイアの墓の隣にある墓にも同じように花と人形が供えられていることに気づいた。
    ――”diluc ragnvindr”
    「ッ!」
     その墓石に掘られていたのは、紛れもなく僕の名前だった。それを意識した瞬間、己の墓の前に立ち、こちらを見つめる青い髪の男が視界に映る。


    「ディルック、ようやくこっちを見てくれたな?」
     憎たらしいほどの笑顔がディルックに向けられ、嫌でもその笑顔が彼のお得意の顔だと思い出される。
    「ガイア、なのか...?」
    「あぁ。久しぶりだなとでも言っておくか?まぁ、俺はずっといたんだが」
     その場から動くことができないディルックに代わり、ガイアが腕を伸ばしぎゅうとディルックを抱きしめる。その体は暖かく、決して冷たく固いものではなかった。
    「すまん、ディルック。俺がお前に生きてくれなんて言ったから、お前は俺の願いに応えようとずっと自分は生きていると錯覚し続けたんだ。俺の願いが、お前を縛ってた。......本当はあのとき俺たちは一緒に死んだんだよ」
    「は、」
    「どうにかして自分が死んだことに気づいてもらいたかったのに、なんでか俺の姿はお前に見えないわ、声も聞こえないわで...墓にも来てくれないし困ってたんだ。でも、お前があの国に行って旅人に会ってくれたおかげで助かったぜ。あいつ、俺の姿と声がはっきり聞こえていたみたいでなぁ、はっはっは」
    「......」
    「......悪かったよ、本当に。ずっと苦しかったろう?」
     もしいつかガイアに会ったらこれでもかと罵倒しようと思っていた。どうして僕を置いて行った。傍にいると言ったのに。嘘つき、また裏切るのか。だが、いざこうしてガイアの姿を目にしたらどの言葉も声にだすことはできなかった。彼はずっと傍にいてくれたのだと、それがとても嬉しかった。
    「散々君の願いに振り回されたんだ。今度は僕の願いを聞いてもらおうか」
    「だから悪かったって、」
    「ガイア」
    「...なんだよ」
    「僕と一緒に生きてくれ」
     前は答えを聞くことができなかったこの問いに、ようやく答えが返される。
    「はぁ、懲りない奴だなぁ」
    「返事は」
    「...生きるさ。ずっと、これからもな」
    「もっと早くその答えが聞きたかったよ」
    「せっかちな奴は嫌われるぜ...」
    「フン、嫌うことならとっくにできていただろう」
     それをせず、数十年間ガイアがディルックの傍にいつづけた理由。生きてくれの答えなんて今更聞くまでもなかった。




    君といた世界で生きる






    「おいディルック!引っ張るなって!」
    「君、いまあの服屋に入ろうとしただろう。この前大量に買ってきて父さんに怒られたのは誰だ?」
    「見るだけならいいだろう!!」
     赤と青のふたりが言い合いをしながら目の間を通り過ぎて行った。背格好は違うが、それはありし日と全く同じ光景で。
    「お兄ちゃん、何見てるの?」
    「あぁ、蛍。遅かったね。ふふっ何でもないよ」
     もう二度と掴むことは叶わない。遠い遠い、愛おしい日々たち。誰しもが忘れてしまったその世界では多くの物語が確かに紡がれた。いまは姿形が変わるどころかその存在すらも歴史の片隅へと葬りさられたが、いまも鮮やかに脳裏に甦る彼の人々との記憶。

    「だから言ったでしょう?大丈夫だって」








    終わり
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭❤❤❤💖😍💯❤😭😭😭💗😭😭😭👏👏👏❤❤❤😭😭😭😭💘❤❤❤❤💖💖💖😭💞☺👏😭😭😭👏👍🇴💕☺💕💕🇴🇴🇴🇴😭💖😭😭😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    のくたの諸々倉庫

    CAN’T MAKE※現パロ
    ディルガイ遊園地デート話

    兄弟喧嘩のその後的な。書きたいところだけ書きました!!!!!!!!!!!!!!
     ……視界がぐるぐる回っている。
    「ガイア、大丈夫か? 酷いようなら職員を呼ぼう」
     言われて顔を上げた先、さも心配そうに俺の背をさするのはディルックだ。大丈夫だとも離してくれとも言えず、呻く羽目になった原因は分かっている。
    「……何か、飲み物が欲しい。買ってきてくれるか」
     だからあえて、遠ざけるために笑顔を向けた。ほんの数秒迷ったようだったが、頷き駆けていく義兄を見送る。そうしてひとつ、深いため息をついた。
    「帰りたいなあ……」
     遊園地のペアチケットをもらった、一緒に行こうだなんてディルックが言い出したとき、俺はどんな顔をしていたのだろう。断りきれずに来てしまったが、俺の三半規管はジェットコースターを前に無力だった。
     別に吐きそうなほどひどいわけではないが、心は存外めちゃくちゃで。ああ俺にもまだ、こんなにも悩めるほど執着するものがあったのか、と。
     分かっている。あの義兄だ。
     それなりに長い間、すれ違って傷付け合った。それでもずっと抱えてきた恋心だけは、墓まで持っていくつもりなのに死んではくれない。俺のことはどうせ、チケットの期限が近くてもったいなかったから、勘違いなんかしそ 2662