大学生と高校生①───おにいちゃんって本当に宝石みたいにキラキラしていて、まるで王子様みたい。アオイの自慢のおにいちゃんだよ!
そう、穢れなく真っ直ぐな瞳でぼくを見つめる小さい女の子。本当に昔は可愛かったなぁ。
…ん? 昔?
意識が朦朧とする中、バンッ! と大きな音が全身に響いた。
「グルーシャ! 可愛いアオイちゃんが来たぞ! そして見よ、この可憐な制服姿!」
耳馴染みのある大きな声の方を向くと、そこには4つ年下の幼馴染が居た。
何度言ってもノックせず勝手に部屋に入ってくる幼馴染。
…原因は小さい頃に可愛いあまって甘やかし過ぎたぼくにあるんだけど。
「…今日だっけ、入学式。おめでとう」
朝からの騒動にすっかり目が冴えて、ぼくはベッドから身体を起こした。
「…他にいう事は?」
「……可愛い可愛い」
散々言わされているこの言葉をぼくが放つと、フフンとアオイは甚く満足そうな顔になる。
受験前、毎日のようにアオイに夜食の要求をされ、律儀に用意したぼくは偉いと思う。
その後おばさんにバレ、アオイは大層怒られ、ぼくには多めにお金を包んでくれたのはおばさんに対して申し訳なかったけれど。
「よし、私は入学式に向かおうではないか」
「はいはい、いってらっしゃい」
そしてアオイはドアを開けたまま、ぼくの部屋を出て行った。
「…だから、ドアも閉めて欲しい…」
深くため息を吐きながら静かにドアを閉めた。