エンドロール高杉の瞳に映るのは、いつも銀時であった。これは嘘ではない。高杉が左目を潰されたあの日、最後に映るは銀時の泣き顔であった。先生の首を刎ねる、あの顔。それが左目に映った最後の人物であった。そして右目が最後に瞑る前、つまり高杉が息絶える時に見ていたのは銀時である。恐らく、銀時は泣いていない。泣きそうな顔をしていたとは思う。両目に最後に映るのは必ず銀時であった。自分は映らない。高杉晋助の瞳には、自分の姿は焼き付かない。
銀時と高杉の関係を羨ましいと思ったことが何度もあった。お互いに一歩も譲らず、なんでも好きなことを言い合えるような、そんな仲が。自分と高杉は銀時の知る前から知り合いだったはずなのに、何故こんなにも視線が混じり合わないのだろうか。お互いに意地を張り、素直になれず銀時のようなスキンシップ等は取ったことが無かった。幼かったのに、自分達は大人ぶっていたのであった。自分の瞳も、高杉の瞳も、互いをハッキリと映したことなど、きっと無かった。少なくとも自分は無い。
いなくなってから後悔するなど、死んでも死にきれない。また会いたい。会って酒を飲み交わして、馬鹿みたいにはしゃいで、それから、それから……。ありもしない妄想を語る。もう貴様は生きていないのに。そんなこと、出来るはずなどないのに。高杉を思っては情けなくも涙が出てくる。肉親が亡くなってからこれ程泣くことなど殆ど無かったのに。自分の愚かさに笑いまでこみ上げる。これでは気がおかしくなってしまった人のようだ。
虚しい。愛おしい。貴様が亡くなったことなんて、信じたくない。お願いだ。嘘だと言ってくれ。蹲り膝を抱えては昔の思い出に浸る。そう言えばお前の笑顔なんて殆ど見ることは無かったなぁ、高杉。お前は、お前の人生は幸せだったか?聞かせて欲しかった。沢山話したいことはあったのに、後悔先に立たずとはこの事を指すんだろうな。今の俺を見て、お前は驚くだろうか。それとも呆れるだろうか。人は声から相手を忘れると言う。
日月が経ち、声が思い出せない。貴様の声が、一つも思い出せないんだ。切ない。この心の空白感は何で埋めればいい?教えてくれ。どうすればいい?誰に相談したらいい?どこに行けばいい?なにをしたら。
貴様に会えるんだろうな。