愛と視線のコンポート「貴様は本当に無茶ばかりしおって。少しは手当をする側の事を考えたらどうだ。」
攘夷戦争真っ只中、敵部隊へと突っ込み勝利を収めたものの大怪我をした高杉は、桂に手当をされていた。
「誰も手当してくれなんて頼んだ覚えはねェよ。」
憎まれ口を叩く高杉に、桂は思わず怪我の軽い部分をベシと叩いた。実際に手当について高杉から誰かに頼んだことは一度もない。自分で手当くらいは出来る上、人に頼ること自体高杉は好まなかった。大きな怪我をしても勿論自分で手当をしていた。だが、少しの怪我でも真っ先にバレる相手は桂であった。誰に何も言われていない。痛みなぞ顔に出した覚えもない。何故、こんなにも直ぐにバレるのか不思議で仕方が無かった。
高杉はまた怪我をした。戦争中だから怪我をするのは仕方がない。次こそは無駄に説教されまいと手当も済ませ、血も拭き、完璧に仕上げた。今回は背中に一つ、大きく刀で切られたのであった。仲間を庇ってしたことで、我ながらアホらしいとは思ったが浅くもなければ深くもない。
こんな傷、自分達の希望を助ける為ならかすり傷であった。手当は背中でやりずらいこともあり、鬼兵隊の仲間にさせた。もちろん口止めはしてある。銀時と辰馬に誘われ、酒を嗜んでいると桂が部屋に入ってきた。
「また酒を飲んでいるのか?飲みすぎるなよ。」
銀時と辰馬はハイハイと二つ返事をする。高杉も小さく返事をする。酒の続きを飲もうとした高杉の頭を叩いたのは桂であった。急な暴力に三人は驚いた顔をする。
「怪我人は酒を飲むな馬鹿者。傷が開くであろう。」そういう桂の言葉を聞いて二人は怪我してんの?と言わんばかりに高杉の身体を見る。どうしてわかる?鬼兵隊の誰にも話すなと言っておいた筈だ。そして桂は今日、鬼兵隊の奴らと話などする時間も無かったはず。
「…何で分かった。」
高杉は驚きのあまり桂に問う。桂ははぁとため息をついた。
「貴様それで隠しているつもりだったのか?…何年貴様を見てると思うんだ。良いから傷を見せろ。どうせ簡易的な手当しかしていないだろう。」
救急箱を持ってくるために桂は部屋を出る。後ろで全然怪我なんて気付かなかったなどとバカが話をしている。そんな話など高杉の耳には届いていなかった。
ヅラが、俺を見ている。そういう話ならば辻褄が合う。あの電波で鈍い奴が、気付くわけないだろうと思っていた。高杉は思わず耳まで赤く染まる。奴がこの部屋に戻ってきたら、この顔色をなんて説明したらいいのか。色んな感情がごちゃまぜになり、部屋を飛び出す。後ろから自分の名を呼ぶ桂の声が聞こえたが、振り向けはしたかった。