【杉尾】胡蝶の夢(2) 翌朝、旭川にむけて出立した。
ぶあつい砂ぼこりが足元にまとわりつく、乾燥しきった道路、風のうなり、くちも耳も胃も肺もざらざらする。咽喉にしこりができたように鈴川ははげしく咳きこんだ。気管が蠕動する。吐きだすばかりじゃ呼吸がたりない。
「ヒィ、ヒィ、俺も、馬に、乗せてくれっ」
連中は一顧だにしない。倒れて大声でごねてやろうか、のたうちまわってやろうか、それよりあとじさりしてやろう。このままトンズラだ。しかたがない俺は落伍してしまったのだ。
「ハアッ、もう歩けない……。うん、歩けないな~」
しかし鈴川は後方をあるく尾形に捕まった。
「根性がたりん。首に紐くくって轡とりしてやろうか」
尾形はすずしい顔で笑う。
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