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    saku2442

    pdl 荒新の字書き
    幸せな推しの妄想をするのが日課です

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    saku2442

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    荒新でハッピーホワイトデー!
    バレンタインと対にしたかったんだけど、あまり関係ない感じになってしまいました。

     まん丸な瓶の中に、これまたまん丸なピンクがいっぱい詰まっている。たまにトゲトゲした水色、黄緑、黄色にオレンジも入ってた。そしてまったく同じ形の瓶に、こちらには水色がいっぱい詰まった物を隣に一緒に並べる。
     靖友がホワイトデーのお返しにくれたのは、瓶詰めの可愛いあめ玉。なぜかふたつもあったそれに首を傾げたら、ひとつじゃ足んねェだろって、からかうように言われた。
     そんなことはないのに。靖友にもらった物は、なんだって大切にしたい。だからこれも、一日に食べるのは一粒ずつって決めていた。右手を伸ばして、ピンクが詰まった瓶の蓋を開ける。こっちの味はイチゴソーダ、それを一粒摘まんで口の中へと放り込む。すぐに広がる甘さとイチゴの香りに、心も顔も綻んでしまう。
     それにしても、靖友はこんなに可愛い物をどこで見つけてくるのだろう。自分が可愛い物をもらうのは嫌がるくせに、オレには可愛い物を結構くれるんだよな。妹が二人もいると、可愛い物を選ぶのが普通になるんだろうか。
     コロコロと口の中であめ玉を転がしながら、じっと目の前の瓶を見つめた。柔らかな水色とピンク、これを靖友はどんな顔をして買ったんだろう。仏頂面? それとも少し照れてたのかな? あー、無表情ってのもありだな。
     どれを想像しても、可愛くて愛おしい。
     靖友がオレのために考えて、悩んで、選んでくれた。こうして口にする度に、堪らなく嬉しい気持ちを一緒に味わえるんだから、やっぱりもったいなくて一気になんて食べられない。
     イチゴソーダのあめ玉は、だいぶ前に口の中からなくなってしまった。また手を伸ばして、今度は水色の瓶を持ち上げる。さっきと同じように一粒摘まんで口に入れた瞬間、扉をノックする音が響いた。
    「しんかーい、いるかァ」
     声の主は、今あめ玉ひとつでオレを幸せな気分にさせてくれていたその人。
    「いるよ。入ってきていいよ」
     返事してすぐに開いた扉から入ってきた靖友は、オレを見て怪訝そうな顔をした。
    「なァに、へらへらしてんだヨ」
     寄ってきた靖友に、持っていた雑誌で軽く頭を叩かれる。叩かれた場所に手を置いて、靖友を見上げるとその顔がふっと緩む。
    「これ、返しにきた。で、何ニヤけてんだつーの」
     雑誌をテーブルの上に置いて、靖友は側に座った。そしてオレの頬を片方摘まみながら、顔を覗いてくる。
    「やすとも、いて~よ」
    「はっ、んな強くしてねェだろ」
     オレの訴えに指を離した靖友が、鼻をスンと鳴らしてからテーブルの上の瓶へ目をやった。
    「それ、食ってんの?」
     こくりと頷くと、目を細めた靖友がうまい? って柔らかく訊いてくる。その優しい表情はオレの大好きな顔で、オレしか知らない顔。
    「すっげーうまいぜ! 靖友も食う?」
     もう何もかも全部が嬉しくて、自然と笑顔になってしまう。すっと伸びてきた手が、やんわりと頭に置かれた。
    「おまえにやったもんなんだから、おまえが全部食え」
     ぐしゃぐしゃと混ぜるようにオレの頭を撫でた靖友の顔は、どこか嬉しそうに見える。これをひとりで全部食べるってことは、靖友の気持ちも独り占めしていいって、言われてるみたいだ。でも、やっぱり美味しい物は靖友と共有したい。
     しばらく考えてから、思いついたまま行動してみることにした。じっと靖友を見つめると、小さく首を傾げられる。その仕草が可愛くて、また口許は緩んでしまう。
    「なんだヨ」
     今度は眉間にシワを寄せて少し面白くなさそうな顔をした靖友の、肩に手を乗せてそっと唇を寄せた。は? の形に開いた靖友の唇に自分のそれを重ねる。口の中で転がっていたあめ玉を、舌の上に乗せて靖友の咥内へと移してからゆっくりと唇離した。
    「な、靖友うまいだろ?」
     へらりとしながら問いかけても、靖友はポカンと口を開けたまま動かない。おーい、ともう一度声をかけると、次には勢いよく下を向いて、両手で頭を掻き出した。
    「うまくなかった?」
     もしかして、イチゴソーダのが良かったのかな? ピンクの瓶へ手を伸ばそうとしたとこで、バッと靖友が顔を上げる。
    「おまえなァ、ただじゃ済ませねェからな」
     ガリガリと、奥歯であめ玉を噛み砕いた靖友の瞳がギラリと光った。
     あれ? なんか靖友スイッチ入ってねぇ? 
     気づけば床に押し倒されていて、目の前にはニヤリと口角を上げた靖友いる。
    「いや、あの、オレはあめがうまいかどーか訊きたいんだけど……その、この体勢はなんだろう?」
    「アー、うまいんじゃね。でもォ、オレはいまからもっと甘くてうまいもん食うから……覚悟しろよな」
     噛みつくように唇を塞がれて、靖友の舌がすぐにオレの舌へと絡んでくる。咥内で暴れまわる靖友の舌は、ほんのりとクリームソーダの味がしていた。
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    saku2442

    DOODLE大学生荒新
    お昼時にメッセージのやり取りをする荒新のお話。待宮さんも登場します。
    だって、君は特別。
     うどんを一口すすったところで、テーブルの上のスマホが震えた。すぐに止まったそれは、通知を知らせるためにピカピカ光る。箸を置き、代わりにそいつを手に持った。素早くロックを解除し、送り主を確認すると想像していたヤツからのメッセージ。
    『うまそうだろ!』
     その一言と共に送られてきた写真。そこには分厚いカツの乗ったカレーが写っていた。昼食にしては中々のボリュームだが、こいつなら平気で平らげるだろう。口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる姿を思い浮かべ自然と口元が緩む。
    『うまいからって早食いすんなよ』
     そう文字を打ち込んでから、テーブルへスマホを置き食事を再開させた。
     新開はこうして、自分の食べる物を撮ってよこすことがある。それ以外にも澄んだ青空、季節の花や路地裏の野良猫。何気ない日常を切り取ったようなそれらに、オレはいつも癒やされている。本音は恋人の写った写真の方がいい。けど自撮りが下手なこいつは、まともな写真をよこしたことがなかった。たまに福ちゃんが送ってくれる写真の方が、よっぽど上手く撮れている。
    2084

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