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    saku2442

    pdl 荒新の字書き
    幸せな推しの妄想をするのが日課です

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    saku2442

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    大学生荒新でクリスマス
    遠距離恋愛だとこういうクリスマスもあるよね。

     お疲れ様でした。店内にもう一度声をかけ、バイト先を後にする。ぐるぐると首に巻いたマフラーに顔を半分まで埋め、ポケットに手を突っ込み歩く。
     キラキラと輝く街並みで、すれ違う人達はみなどこか楽しそう。腕を組みぴったりと寄り添うカップルは、寒さなんて感じないんだろうな。ちょっと羨ましいとか思ってしまうのは、今日という日に恋人に会えない寂しさからだろうか。
    「おまえさァ、大晦日からこっち来る気ねェ?」
     それはいつものように、他愛ない話をしていた最中の急すぎる話題転換だった。
    「え?」
    「いや、そのさァ……オレ面倒くせェから実家帰んのヤメたんだヨ」
    「うん」
    「だから、なんつーか……おまえが、もし実家帰んなくて大丈夫なら、こっちで一緒に年越しとか――」
    「行く!」
    「は? ちょ、待て。簡単に決めんな」
    「なんだよ、靖友から誘ったんだろ」
    「そーだけどォ……マジで大丈夫なのか?」
    「大丈夫」
    「あー、なら待ってる」
    「うん! 靖友、楽しみだな」
     この会話をしたのが二週間前。一緒に年越しのワードに、浮かれに浮かれたオレはすっかり忘れていた。
     そう、クリスマスイブという、恋人達の最大イベントの存在を。
     さすがに今日も靖友の所へ押し掛ける、という暴挙には出られなかった。あと一週間もしたらしばらく一緒にいられるし、ここは我慢するしかないよな。そう考えこの時期特有の浮かれた雰囲気にあてられないよう、バイトまで入れたのに結局は会いたくなっている。
     ポケットから取り出したスマホには、なんのメッセージもきていない。靖友は今日がクリスマスイブだって気づいてる? そう尋ねたくなる。自分の誕生日すら気に止めない靖友のことだから、なんとも感じていない可能性の方が高い。別にこちらからメッセージを入れればいいだけの話だとわかっているけれど、軽くあしらわれたら悲しくなってしまう。
     ふぅと息を吐き出し、柔らかく光を放つイルミネーションを見つめる。いつも靖友の優しさを独り占めしているくせに……オレって我儘だよな。このままだと気分がどんどん落ちていく、なんとか立て直さないとダメだ。そうだ、あっちに行ったら何するか考えよう。
     思考を切り替えようとした瞬間、ポケットの中で握りしめていたスマホが軽快な音を奏でた。取り出し画面を覗くと、そこには荒北靖友の文字。慌てて通話ボタンをタップして、耳元へあてる。
    「靖友」
    「おう、バイト終わったか?」
     すぐそばで聞こえ声に、本物じゃないとわかっていても胸がきゅんとした。
    「うん、靖友こそバイト中じゃないの?」
     そう連絡を入れることを躊躇してしまった一番の理由がこれだ。靖友が今日バイトだということは、昨日のメッセージのやり取りで知っていた。
    「いま休憩」
    「え、なんか急用でもあった?」
     靖友が休憩中にわざわざメッセージじゃなく電話してくるなんて、よほどの理由じゃなきゃたいはずだ。もしかして、年末はやっぱり実家に帰るとか言わないよな。
    「用がなきゃ電話しちゃダメなのかヨ」
    「……ダメじゃないけど、バイト中にかけてきたことないだろ?」
    「それは、あれだよ!」
    「あれ?」
    「……っ、今日!」
    「ん?」
    「一緒にいてやれなくてわりィ」
     ボソボソと語尾を小さくしながら呟いた靖友の声は、それでもちゃんとオレの耳に届いた。
    「靖友、イブだって気づいてたんだ」
    「おまっ、バカにしてんじゃねェ!」
    「バカになんてしてないよ。……まって、靖友。ヤバいめちゃくちゃ嬉しいかも」
     スマホを持っていない方の手で、額をおさえても口許はどんどんニヤけていく。
    「ほんとは今日からずっと一緒にいれりゃいーんだろけどォ。現実はムリだかんな」
     もう靖友はスゴい! あんなに寂しくてしかたなかったのに、いまはこんなに心は満たされている。
    「靖友、ありがとう! 最高のクリスマスプレゼントだぜ」
    「ア? ……なんもしてねェだろ」
    「電話、くれただろ。オレからのプレゼントは一週間後に持ってくから」
    「べつに、いらねェ」
    「なんで? もらってくんねぇの?」
    「……おまえでいーんだつーの! わかれヨ」
     柔らかく囁くように聞こえた声に、またひとつ心臓が跳ねた。
    「ふふっ、じゃあ最高のプレゼントお届けするぜ」
    「おう、まってる」
     電話越しに二人で笑い合い、またなと言って通話を終わらせる。こんなクリスマスだって幸せだと思えるのは、靖友とだからだよな。
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    Replies from the creator

    saku2442

    DOODLE大学生荒新
    お昼時にメッセージのやり取りをする荒新のお話。待宮さんも登場します。
    だって、君は特別。
     うどんを一口すすったところで、テーブルの上のスマホが震えた。すぐに止まったそれは、通知を知らせるためにピカピカ光る。箸を置き、代わりにそいつを手に持った。素早くロックを解除し、送り主を確認すると想像していたヤツからのメッセージ。
    『うまそうだろ!』
     その一言と共に送られてきた写真。そこには分厚いカツの乗ったカレーが写っていた。昼食にしては中々のボリュームだが、こいつなら平気で平らげるだろう。口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる姿を思い浮かべ自然と口元が緩む。
    『うまいからって早食いすんなよ』
     そう文字を打ち込んでから、テーブルへスマホを置き食事を再開させた。
     新開はこうして、自分の食べる物を撮ってよこすことがある。それ以外にも澄んだ青空、季節の花や路地裏の野良猫。何気ない日常を切り取ったようなそれらに、オレはいつも癒やされている。本音は恋人の写った写真の方がいい。けど自撮りが下手なこいつは、まともな写真をよこしたことがなかった。たまに福ちゃんが送ってくれる写真の方が、よっぽど上手く撮れている。
    2084

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