酒は飲んでも蝕まれるな「しんれー……空いてる……」
空になった盃にまた一杯注ぎこまれる。
「あぁ……すまん……」
ふわ、ふわ、と意識の周りが柔らかいもので包み込まれ、顔の周りが熱い。
……これは、酔っている
そう自覚しつつ、飲む速度を落とすことは考えなかった。なぜならここから自分達が前に進む段階の際だったからだ。酔って、何もかもわからないうちに前に進んでしまいたい。そんな何ともふしだらな考えに飲み込まれていく。
「……うまい…………」
思っている以上にふにゃりとした声が出てしまった。飲むのに用意したつまみはわずかに残っているが、それを口にするのはもはやもどかしい。それと一緒にまともに酒を飲むのは理性を飛ばす酩酊から離れていくからだ。
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