1陽が暑くなってきた。
受けていれば、あっという間に顔に浮かびそうな汗に早々に室内へ引っ込んだ。
「暑い………」
畳にごろりと横になり、自堕落に伸ばした手でようやく掴んだ団扇をばたばたと顔の前で振るが、涼は満足出来るほどには取れなかった。
「……暇だな………」
激務の間に取れたようやくの休みだというのにそれを完全に持て余している。
全く休みを有効活用していない、そんな罪悪感に囚われながらもやるべきことは実は特には思い当たらなかった。
あれこれと考えているうちに甘い眠気が瞼を重く縫い止めてくる。
「……ねむい………寝る………」
そう何気なく呟いたその直後に吹き出した。
口に出した言葉はこの前またしても里から姿を消した奴とまるで同じだった。
完全に感化されている。
そう思った瞬間もはや笑うしかなかった。
……こちらはこんなにお前に引っ張られているのに、きっとお前はまるで俺に影響されてはいないのだろうな。
早く帰ってこい。お前に似た俺を見せてやろう。
誰もいない部屋で思い人だけに向かって笑った。