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    卯咲うらり Rabyu_ut

    @rabyu_ut

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    POIPOI 16

    月は光を食み、陽は闇に蝕まれた
    暗黒の野を導くのはいったい誰なのか。

    2022/7/2開催、「OperationVR-EXTRA #4」の展示作品でした。

    #切ない
    painful
    #ハイファンタジー
    highFantasy
    #一次創作
    Original Creation
    #星
    #夜空
    nightSky
    #流れ星
    ShootingStar

    星が巡る夜空の話 灰が舞う。風にさらわれて、数多の命が空に還っていく。空を見上げれば、姿は見えずとも、そばにいる。そんな都合のいい物語を見出して人々は、大切なものを失った悲しみを和らげるのだ。
     でも、僕は欲張りだから。もっと身近にいて欲しいと願ってしまう。悲しみが募っていく胸は、張り裂けそうに引きつり痛むから、哀が零れないように天を仰ぐ。隣に在ったはずの確かな生身の感触に焦がれて、空に送った者が昇っていく煙に手を伸ばす。
     燻る煙は空虚だ。くねる白い線は指をすり抜けていくばかりで、一向に掴めない。どんどん広がって羽ばたき、僕から離れていってしまう。
     いかないで。どうか、戻ってきて。やっぱり引き返すという選択もできるんだ。どうか、どうか、僕を選んでまた、隣に居て欲しい。
     なんて虚しくて無意味な行為なんだろう。空に亡き者の面影を見出す祈りと何が違うのか。等しく意味のない、骨折り損なおとぎ話。そんな物語の終わりはいつだって悲しくなって、さらに傷が広がっていくだけだ。
     澄んでいた空を覆いつくしてしまう夜の闇が、さらに傷心に障る。視界まで黒く塗り潰されて、世界を区別していた色が影をかぶってみんな消えていく。前が見えない。先へ進めない。自分が目を開けているのか、閉じているのかさえ、分からない。
     不安に苛まれると一層、大切な者が隣に居ないという、大きな悲しみが押し寄せてきた。懐かしき思い出が巡って郷愁に浸る、心の暇なく、空いた穴に黒くてドロドロした気持ちが流れ込んでくる。
     またたきのない暗黒の空が、心の奥底まで押し入ってくる。どこもかしこも、ひどく"夜"を患っていた。
     暗闇に侵された野に、ぬっと黒い柱が立っている姿をふと認めた。闇に慣れた目が、突如現れた黒い柱は人だと認識していく。出で立ちからして、男だ。
     男は静かに、夜に染まった空を見上げていた。何かを待っているようだった。
     やがて、キラリとひと光。光線が一筋、弧を描いて、瞬く間に左から右へ流れて落ちていった。
    「星だ」
     僕の口がそう言ったらしい。
    「違う」
     でも、男は異を唱えた。僕は彼を見上げて、続きを待った。心のなぐさみになるかもしれない、と期待して。
    「あれは命の瞬き。空から還ってくる合図だ」
     また、"命は巡る"っていう作り話か。
    「俺たちも星だった」
    「"星"だった人には、また会えるってこと?」
    「会える。星は等しく廻り逢わせるから」
     男の話の結末はやはり悲しみを誘うものだった。途方もない、いつかなんて、ただただ大きすぎて不安が膨れるだけだ。
    「その人は、"太陽"だったんだ。たった一つの、大きな、大きな光だった」
     そうだ。彼の持つ光は大きすぎて、あるとき突然弾けて、彼ごと消し去ってしまったんだ。
    「そうか。太陽は月に会いに行ったのだろう」
     男は果てのない闇夜を指さす。変な解釈だ。消えていなくなった事実に変わりはないのに。
    「月の姿もないから」
     何も見えない真っ暗な夜空を星が流れていく。月も太陽の痕すら見当たらないのに、そこにたしかに在った過去の幻影だけがきらめいて、胸を巡った。不思議と、もう悲しくはなかった。
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