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    sakura__cha

    @sakura__cha

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    sakura__cha

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    さはんOOCの開催おめでとうございます、そしてありがとうございます!
    せっかくなのでイベント合わせで新作展示したいなと思って書きました。
    漠尚書くの初めてなので果たして解釈が合っているのか少し不安なところではありますが、ノリがひどいギャグなので勢いで読んでください……!
    漠尚のタイトルはよくあるTL小説風味。色々ひどい。

    ##SVSSS##冰秋##漠尚
    ##人渣反派自救系统

    ★新作★【冰秋+漠尚】俺(たち)の恋人がこんなに○○なわけがない!「やっほー瓜兄、お邪魔しまーす」
    「おおよく来たな、すぐ帰れ」

    返事も待たず勢いよく竹舎の主室へ入ってきた尚清華へ沈清秋は間髪入れず事務的な微笑みで言い放った。
    着いて早々出鼻をくじかれた尚清華は不満そうに頬を膨らませ、勝手に卓の向かい側に座るとまだ手つかずだったこの部屋の主の茶を勝手に飲み干す。
    「はー美味し、やっぱ清静峰の弟子ってお茶の淹れ方上手いよね、安定峰ももうちょっと上達してくんないかなあ。いまいち淹れ方がよくないっていうか後味が渋いんだよね」
    「……それ、冰河が淹れた茶だぞ。うちのは皆結構お茶淹れるの上手いけど、冰河はやっぱり別格」
    「へー、さすが俺の息子じゃーん。パパは鼻が高いよ! まあそれはそうと、さっきの言葉は何さ。せっかく親友が遊びに来てやったってのにいきなりその態度はひどくない?」
    「お前と親友になった覚えはないぞ。つーかアポなしでいきなり訪ねてきといてよくそんな堂々と人の茶を奪えるな。俺が今飲もうと思ってたのに……そもそも座っていいとも言ってないんだが?」
    「えー同じ世界から来た転生仲間なんだから親友どころかむしろソウルメイトのレベルでしょ。なんだ、久しぶりに瓜兄が蒼穹山に戻ってきてるって聞いてわざわざ来てあげたのに」
    「明日は峰主会議だからな。わざわざ来たとか言ってるけど、お前だってどうせそれで帰って来てたんだろ。最近は魔界に行ってばっかで安定峰をしょっちゅう留守にしてるって聞いてるぞ」
    「へへへ、正解~。さすが瓜兄、よく分かってるぅ。ま、でもこっちに今日来たのは明日の会議の準備のためで、この後はまた大王のところに帰るけどね」
    「え、一旦帰って明日また来んの? 魔力でぱぱっと来られるからあんま問題ないのかもしれないけど、いちいち帰るの面倒くさくないか」
    「しょうがないでしょ、瓜兄んとこの冰河は元々清静峰の弟子だから蒼穹山にいても表立って文句言うの百戦峰の連中くらいだろうけど、うちの大王は魔族だし完全な部外者だからね。いくら安定峰峰主の付き添いだって言ったって長時間安定峰に置いとくわけにはいかないじゃん。かといって一晩俺が留守にするのも嫌だってわがまま言うから、仕方ないけど帰んの」
    「ほーん、愛されてるっつーか、お前も人の事言えず割と甘いよな。……それで? 用件は何だ。明日になりゃ会議で自然と顔を合わせるのにわざわざ清静峰を訪ねてきたってことは何か用事があるんだろ。困り事か?」
    「瓜兄ってなんだかんだ言って面倒見いいよね。いや、今日はそういうのじゃなくてただ純粋にプレゼントがあってさ」
    「プレゼント?」
    「そ。……あ、ちなみに俺の息子は今どこにいる?」
    「冰河のことか? あいつなら嬰嬰に呼ばれてちょっと席を外してるけど」
    「あーよかった、瓜兄とこうして仲良くお喋りしてるところ見られたらまたやばいことになるし。ってわけで、はい瓜兄。受け取って!」
    そう言って差し出されたのは、なにやら紙に包まれた平べったい長方形の物体だった。
    ぐいぐいと押しつけられて受け取りはしたものの、沈清秋は中身を開かないまましばしそれを見つめる。
    「どしたの? 開けてみてよ」
    「怪しくて開けたくない。お前が俺にプレゼントとか、どういう風の吹き回しだよ」
    「やだなあ、友情の証だよ。怪しいものなんて渡すわけないじゃん。ほら、この無垢な笑顔を見て!」
    「その笑顔が胡散臭すぎるんだよ! ……いい、やっぱり返す」
    「ええ~、本当にいいの? この向天打飛機先生の久々の新作なのに?」
    「えっ」
    途端、沈清秋の瞳に輝きが宿った。
    死の直前あそこまで罵った相手だが、それでも課金してまで追ってきた作家だ。
    そんな相手からもう読めないと思っていた新作を手渡されれば、オタクのさがとしてどうしてもそわそわしてしまう。
    「え、新作って何。また書き始めたのか?」
    「まあね。やっぱ俺書くの好きだし、ちょっと前から書きたい欲がまた湧いてきてさ。で、瓜兄は俺の熱心な読者だったわけだし~やっぱりいちばんに見せてあげよっかなって思って」
    「ふうん……」
    平静を装っているが興奮は隠せない。
    ついさっきまで腫れ物のように扱っていた物の包装を急いでほどく。
    「一体どんな内容? 魔界で実際に見た魔物の話とか? それとも……」
    糸で綴り書物の形になってはいるが、まだ完成形ではないのか表紙にタイトルは書いていない。
    それでもわくわくしながら早速ページを開いた沈清秋は、読み進めるに従い徐々に怪訝そうに首を傾げ眉を寄せる。それからさらに半分ほど読み進めたところで顔を真っ赤に染めぶるぶると震えだした。
    「どうどう? 自分で言うのもなんだけど初めてのジャンルの割には結構上手く書けてると思うんだよね~。よくない?」
    ご機嫌な声で訊ねる尚清華をきっと睨み、沈清秋の手が本を握りつぶしかねない勢いで強く掴む。その表情に普段弟子たちへ見せる冷静な姿は微塵も残っていなかった。
    「……っんで久々の新作がBLなんだよ!」
    「あはは、新境地でしょ?」
    「そんな新境地はいらん! っつーか前半にせっかく魔物出てくると思ったらあっさり倒されて終わるじゃん! 中盤からもう濃厚なエロ描写にページ割くならもっとバトルシーンとか魔物自体の詳細な描写とか能力の説明とかを入れてくれよ! こんなさらっと流されたらわざわざここで魔物出てくる意味ないし、これじゃキャラの強さを示すためのただのご都合描写じゃん!」
    「うーん早口。そういや瓜兄のコメントもこんな感じだったかもな。え~、だってさあ、ぶっちゃけBLを読む読者はそういうの求めてなくない? ただの雑魚敵な魔物の描写長々やるよりキャラ同士のイチャイチャ見たいでしょ普通」
    「俺は魔物の方を求めてんの! そもそもこの主人公と相手の男! これ、これ――明らかに冰河と俺がモデルじゃん」
    「うん、そうだけど?」
    吼えるように叫んだ沈清秋に尚清華は悪びれもせず笑顔で頷く。
    「いや~、仮にも物書きのひとりとして柳宿眠花とか三聖母に負けてらんないでしょ。こう言っちゃなんだけど彼女たちが書いたのより俺のやつの方がリアリティあると思うんだよね。なにせ瓜兄から聞いたのろけを大分参考にさせてもらったから。読んでて既視感あったでしょ?」
    「っの、のろけてなんかない!」
    「えー、いつも“冰河のあれに困った”、“冰河がああしてこうしてどうのこうので嫌になる”って話してくれてたじゃん」
    「あれは俺の愚痴だろ!」
    「えっあれは愚痴を装ったのろけだったでしょ完全に。何、あれわざとじゃなかったんだ。ひゃー、瓜兄ってばマジで無意識だったんだね」
    「……」
    怒りを煽るようにからかわれ、沈清秋の額に青筋が浮かぶ。だがそれを気にする様子もなく尚清華は言葉を続けた。
    「ちなみにそれのタイトル、”我的徒弟不可能那麽可愛”って言うんだ~。俺の弟子がこんなに可愛いわけがない、なかなかキャッチーで読んでみたくなるタイトルでしょ?」
    「……なんかそれ生前似たようなの聞いたことあるぞ」
    「いいんだよ、この世界じゃ聞いたことあるの俺と瓜兄しかいなくて新鮮なんだから。まだ一巻分しか書けてないけど、続きも書けたら本格的に流通させてみよっかな~って」
    「しかも続巻なのかよ! 絶対やめろ! くそ、こんなの破り捨ててやる!」
    「ああっ、それ本当に最初に作った試作品の一冊目なんだから勘弁してよ~。まあ複製は自分の部屋にあるんですけど。へへっ」
    「へへっ、じゃない! マジでこれ以上書くな、名誉棄損で訴えるぞ」
    「明確に瓜兄たちの名前は出してないじゃん、ちゃんと別名にしてるし。っていうかそれ言うなら世間で出回ってるあんたらのナマモノ本なんてがっつり名前出てるけど」
    「うぐ……っ」
    「まあまあ、そう怒らずに。読み物として楽しんでよ。っつっても瓜兄は私生活からしてBLだけどね~」
    「お前~~……っ」
    ぎり、と歯噛みして沈清秋はしばらくものすごい顔で尚清華を睨みつけていたが、突然ふと表情を変えるとにやりと意味深に笑った。
    「……そうだ。尚師弟、私もそなたに贈り物があったのを忘れていた」
    「えっ。なんで急に沈清秋の言葉遣いになるの……なんか怖いんですけど」
    怯える尚清華を無視し、沈清秋が近くの棚からとある本を取り出す。そのままにこやかな笑顔で有無を言わさず受け取らされ、訝しみながら表紙を見た尚清華は驚愕に大きく目を見開いた。
    「はっ⁉ な、何これ!」
    「先日出向いた街で見つけてな。尚師弟が見たら喜ぶだろうと思い買い求めておいたのだ」
    「え、見つけたって……これが街で売ってたの⁉ だってこの表紙、どう見ても俺と大王じゃない⁉」
    その言葉に沈清秋はなんとも邪悪な微笑みを浮かべて頷く。尚清華の指摘通り、薄い本の表紙に描かれていたのは雄みの強い冷たい表情をした長身の男と、まあまあ整った顔立ちではあるものの隣の男と比べるとどうにも平凡に見えてしまう小柄な男の抱き合う姿だった。
    そのタイトルは“冷酷と評判の魔王に生贄として捧げられたら何故か運命の花嫁として溺愛されました~無垢な体は秘蜜の夜に暴かれる~”となんとも長ったらしいものだ。
    「ちょ、何なのこれ! 生贄って何、花嫁って何⁉ 秘蜜の夜ってどういう意味ー⁉」
    「そういや昔、妹が言ってた気もするわ。イケメンが二人でいるのもいいけど、平凡受けでしか得られない栄養もある……ってな」
    「それ暗に俺が平凡って言ってるよね。まあ尚清華のキャラ設定がそうなのは否定しないけど……じゃなくて、誰がこんなの書いてんの⁉」
    「噂に聞いた話じゃ、安定峰の弟子のひとりがたまたま自分とこの峰主殿と北方の魔王が一緒にいるところを見かけてインスピレーションを受けた結果筆をとったとかなんとか」
    「よりによってうちの人間かよぉお!」
    「はっはっ、まあ中をちらっと見たけど名前は違ってたし。読み物として楽しめばいいんだろ?」
    「うう~……!」
    さっき自分で言ったばかりの言葉が早々にブーメランとなって返ってきて、尚清華は呻くしかできない。
    「もー、なんでこんなの出回っちゃうの。明日の峰主会議でこれも禁書にしてもらわなきゃ。大体こんな話、どうせ大王のこと何も知らないんだからキャラ崩壊が著しいに決まってるよ。ほら、大王はこんな甘ーいセリフ言ってくれないし、優しく頭ポンポンなんて滅多にしてくれないし、ここも……」
    「ぶつぶつ文句言う割にはしっかり目ぇ通すんだな」
    「ここだって大王ならもっと酷い言い方するし、……あ、でもこのセリフは前に似たようなこと言ってたかも。このプレイは……もうちょい激しめの描写があれば記憶がないわけでもない。え、っていうかうわっ……意外とえげつないプレイもしてるな……ここまでのことは俺もさすがに書けなかったわ……ひえぇ、こんなんされたら大事な部分が壊れちゃう」
    本に素早く目を通しながらぶつぶつと口から洩れる尚清華の呟きを聞くに、どうやら全部が全部現実とかけ離れているわけでもないらしい。
    ただからかうだけのつもりが思いがけず真剣な顔をされてしまい沈清秋が途方に暮れていると、竹舎の外から気配が近づいてくる。
    そのまま音もなく主室へ入ってきたのは冰河だった。
    「師尊、ただいま戻りました。……おや、尚――師叔。何故こちらへ?」
    「ひぇっ!」
    本に夢中になって冰河の帰宅に気付いていなかった尚清華は、振り向くや否や射殺されそうな視線を向けられ引きつった笑みを浮かべる。
    「あ、あー……いえその、ちょっと届け物をしにきただけで。もう帰ります。お邪魔しました~!」
    取る物も取り敢えず脱兎のごとく逃げ出す。そのため手にまだあの本を掴んだままだったことに尚清華が気付く暇はなかった。

    「……嵐のように来て嵐のように去っていったな」
    素早い動きで走り去っていった背中を見送り、沈清秋はふうと小さく息をつく。消えた男の背中をしばし強い視線で睨みつけていた洛冰河は沈清秋に視線を戻すとすぐに蜜のように甘い微笑みを浮かべた。
    「彼はいつ頃来たのですか? 師尊とはどのくらいの時間、どのようなお話を?」
    「別にそこまで質問せずともほんの短い間だけだ。話だってただの世間話程度で大した話はしてはいない」
    「そう……ですか」
    「なんだ、いまいち信じていない様子だな。何か気になることでも?」
    「いえ……師尊は尚――師叔がいらっしゃるといつも少し楽しそうに見えますので」
    「別にそんなことはない。それより新しい茶を淹れてくれないか。自分で淹れてもいいのだが、そなたが淹れてくれる茶がいちばん美味い」
    「私がいちばん……はい、もちろんです! すぐお持ちしますね」
    湯を沸かしに行こうと再び部屋を出かけた洛冰河は、ふと棚が少し乱れてしまっていることに気づき足を止めた。どうやら荷物の間に無造作に本が突っ込まれているらしい。
    お茶を淹れに行く前に整えてしまおうとその本を手に取り、何の気なしに開く。そうしてぱらぱらとページをめくり、一気に体を強張らせた。
    黙って文面を読み、それから沈黙のまま、牀榻に腰掛けくつろぐ沈清秋に視線を向ける。
    「……師尊」
    「ん、どうした冰河? 早くお茶……」
    「この本は――どうなさったのですか?」
    「あ……っ!」
    洛冰河の手にある本を目にして、沈清秋の顔色が一気に悪くなる。
    それは先ほど尚清華に押し付けられ、あとでこっそり焚書してしまおうと思っていたあの弟子×師匠のBL本だ!
    「いや、あの。それはだな……」
    「もしや師尊がお買い求めに? 私もそれなりの数に目を通しておりますが、これは初めて読むものです……」
    「ん? 今それなりの数に目を通してると言ったか? こら冰河、それは“何”をそれなりの数なんだ。師にきちんと教えなさい」
    「文章は稚拙なところもありますが、描写はなかなかコツを押さえている……。それにこの登場人物の性格や言動にはとても好感が持てますね。しかもここ、序盤から拘束具と緊縛描写を入れるとはこの作者はなかなかの趣味……」
    「冰河、師の話を聞いているか? ……こら。なんだ、何故そんな目で私を見る。ちょ、な、何故近づいてくるのだ。お茶はどうした、お茶を早く――」
    「すぐにお淹れします。ですが師尊……その前に、ほんの少しの間で結構ですので弟子と一緒にこの本に目を通してはいただけませんか?」
    「ひ……っ」
    ぎらついた目に見据えられ思わず後ずさったが、逃げる前に牀榻に押し倒されてしまった。
    ――少しの間なんて絶対に嘘だ!
    そう確信しながら、沈清秋は冷や汗を流し自分にのしかかる男を見つめた。

       ***

    「ただいま帰りましたぁ!」
    竹舎を飛び出した勢いのまま漠北君の居城へ帰りつくと、不機嫌な顔の主が冷たく尚清華を見やった。
    「遅い」
    「えー、遅くないですよぅ。まだ外も明るいですし、ちゃんと早く帰って来ましたよ?」
    だが唇を尖らせて言い訳する尚清華に、漠北君はますます不満そうに鼻を鳴らす。
    「もっと早く帰ってこい。そもそも明日の会議の準備などわざわざお前が出向かなくてもいいだろう」
    「いや大王、そうは言いますけどね。一応これでも私、安定峰の峰主なんですよ? さすがに大事なお役目を弟子たちに任せきりってのは外聞も悪いですし」
    「お前の外聞など知ったことか。……ん、その手に持っているのはなんだ?」
    「えっ? あ、これ……」
    指摘されて尚清華はようやく自分があの本を持って帰ってきてしまったことに気付く。
    思わず後ろ手に隠してしまい、漠北君の眉が訝し気に寄った。
    「何故隠す」
    「いやー、そのお……これは何といいますか、大王のお目汚しになってしまうので……」
    「見せろ」
    「いやっ、だめですだめです! 大王はこんなの見ちゃだめです!」
    「そこまで隠されると余計気になるだろう。いいから見せろ」
    「ああっ、だめですってばぁ!」
    どんなに抵抗したところで漠北君に本気で動きを押さえられてしまっては尚清華になすすべはない。
    大股で近づいてきた彼にいとも簡単に腕を掴まれ、そのまま悠々と本を奪われる。
    「あ、ああ~……」
    「面倒をかけるな、大人しく見せろ。――……っ⁉」
    尚清華を見下ろしていた漠北君の視線が本の表紙に向かい、そして――彼には珍しく呆気に取られた表情を浮かべた。
    「ああ、だから言ったのに……。でもこんな表情の大王見られるなんてレアかも」
    自分の理想を詰め込んだ男はどんな表情をしていても格好いい――もっとも、その見惚れるほど顔がいい男が今手にしているものはなんとも狂ったタイトルの本なのだが。
    「いやあ、実はですね。それ、さっき蒼穹山で――」
    「……近頃お前が妙に集中して書いていたのはこれか?」
    「へっ?」
    「俺との時間を削ってまで書いていたのはこの話なのかと聞いている」
    「いや、えっと……」
    大王落ち着いて。そんな話、俺が書くはずありませんよね?
    しかしその言葉は、先ほどまでの不機嫌さからにわかに明るくなった漠北君の視線に出てこなくなる。
    「なるほど……つまりお前は本にしたためる形で、俺への要望を伝えようとしていたということか。雑な性格に似合わず迂遠なやり方をするんだな。まあいいだろう、たまにはお前の希望も叶えてやる」
    「だ、大王? あのですね、何か誤解がありますよ。これは私が書いたものじゃ……」
    「話の続きは牀榻の上で聞く。来い」
    「えっ! あ、あの、大王! 大王、違うんですってばぁ!」
    どれだけ叫んでも漠北君の足は止まらず、尚清華の体はずるずると引きずられていく。
    焦りとパニックでいっぱいになった尚清華の脳内に、ふと清静峰で自分が口にした言葉がよみがえった。
    ――うわっ……意外とえげつないプレイもしてるな……ここまでのことは俺もさすがに書けなかったわ……ひえぇ、こんなんされたら大事な部分が壊れちゃう。
    (こっ、壊れちゃうぅ!)
     顔を真っ青にしてどうにか足を踏ん張ろうとしたが、残念ながら些細な足止めにすらなりはしなかった。

         ***

    ――翌日。
    峰主会議で顔を合わせた沈清秋と尚清華は揃って目の下に隈を作り疲れ切った顔をしていた。
    お互いにどことなく掠れた声と、それほど寒い時期ではないはずなのに主に首周りへ重点的に巻かれた襟巻きを見て昨夜何があったのかを察する。きっとその布の下には数えきれないほどの赤い痕が隠れていることだろう。
    「……瓜兄のせいだからね」
    「それはこっちのセリフだ。あんな本持ってきやがって」
    お互いに睨み合い、それから同時にため息をつく。
    「……お疲れさま」
    「……そっちもな」
    普段どんな関係であれ、牀榻の上で相手から翻弄される仲間ならば慰め合うのは当然だ。
    二人は視線だけで頷き合い、戦友のようにぽんとお互いの肩を叩き合った。
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    sakura__cha

    DONEさはんOOCの開催おめでとうございます、そしてありがとうございます!
    せっかくなのでイベント合わせで新作展示したいなと思って書きました。
    漠尚書くの初めてなので果たして解釈が合っているのか少し不安なところではありますが、ノリがひどいギャグなので勢いで読んでください……!
    漠尚のタイトルはよくあるTL小説風味。色々ひどい。
    ★新作★【冰秋+漠尚】俺(たち)の恋人がこんなに○○なわけがない!「やっほー瓜兄、お邪魔しまーす」
    「おおよく来たな、すぐ帰れ」

    返事も待たず勢いよく竹舎の主室へ入ってきた尚清華へ沈清秋は間髪入れず事務的な微笑みで言い放った。
    着いて早々出鼻をくじかれた尚清華は不満そうに頬を膨らませ、勝手に卓の向かい側に座るとまだ手つかずだったこの部屋の主の茶を勝手に飲み干す。
    「はー美味し、やっぱ清静峰の弟子ってお茶の淹れ方上手いよね、安定峰ももうちょっと上達してくんないかなあ。いまいち淹れ方がよくないっていうか後味が渋いんだよね」
    「……それ、冰河が淹れた茶だぞ。うちのは皆結構お茶淹れるの上手いけど、冰河はやっぱり別格」
    「へー、さすが俺の息子じゃーん。パパは鼻が高いよ! まあそれはそうと、さっきの言葉は何さ。せっかく親友が遊びに来てやったってのにいきなりその態度はひどくない?」
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    sakura__cha

    DONE我、攻が受の気付かないうちに自分に依存させるの大好き侍!
    本編終了後の時間軸のつもり。
    性癖なのでどのジャンルでも大体書いてる。
    そして尚清華が冰秋に関わると大抵ロクな目に合わない。
    【冰秋+尚清華】俺の生み出したキャラが闇深モンスターに成長していた件。 尚清華は後悔していた。
     毎日毎日山のようにこなさねばならない些細な業務の積み重ねに嫌気がさし、突発的に書類を届けるという名目で馴染みの人間の元にサボりに来たわけだったが、やはりこの場所を選んでしまったことは間違いだったかもしれない。
    「はあ……」
    「? なんだよ、ため息なんかついて。いきなりアポなしに人の家に訪ねてきといてその態度はないんじゃないか」
     思わず重いため息をついたこちらに、ここの家主たる沈清秋は眉を寄せて首を傾げた。まるで理由が分からないといった様子の彼にもう一度大きなため息をつき、じろりと視線を向ける。
    「いや、だってさあ……。こう言っちゃなんだけど瓜兄、冰河に何もかもやらせすぎじゃない? 今日だってそんなに長い時間見てたわけじゃないけど、家事も自分の世話もぜーんぶ冰河任せじゃん。原作者として、自分の生み出したキャラがこうも誰かに良いようにこき使われてるのを見るのってなんかさあ……」
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