季節なんて長さじゃなくて。過ごしやすい季節はあっという間で、日中外にいるとじんわりと汗を掻く。日が沈めば何か着込む物が欲しくなるのに。
砂漠か、月か。太陽のある無しに振り回されている。
「アイスが美味しい季節だね」
家までの帰り道、買い食いをした。いつだってアイスを買い求めるヒョンがたまに心配になる。でも今日は俺もアイスを買った。棒付きのスイカ味。シャクリと歯を当てて噛み砕くと、口いっぱいの甘さと冷たさ。
たそがれ時の、影が夜に飲み込まれる時間は暑いとも寒いとも言えず、つまりはちょうどよかった。
「アイスはいつだって美味しい」
溶け始めがゆっくりな今は美味しい季節というより、食べやすい季節だ。とは言わなかった。そもそも季節と呼べるほど期間は長くない。
だから、いつだって美味しい。
ヒョンも、少し前ならチョコのかかったバニラアイスだったけど、今日は同じ棒付きのスイカ味を食べている。俺が真似したんだけどね。これも言わない。
「毎日食べられるといいのに」
「前にお腹こわしてただろ」
「そうだっけ?忘れちゃった」
「…そうだよ」
覚えててよ。今年はじめ、布団の中で唸るヒョンに何も出来なかった俺をさ。
暗い気持ちをアイスに噛みついて気にしない振りをする。この気持ちをいないことにはしない。でも相手もしてやらない。
「一緒に食べるアイスが美味しいって」
「え?」
「俺と。一緒に食べるから、美味しいんだよ」
だから、いつだって、美味しいって。
「そっかあ。そうだなあ」
笑って。言って。
俺は、少し泣いた。
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