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    とびうお

    @Tobiui_S

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    とびうお

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    昨日のシチカルの作業進捗第二弾。
    今日書けた分なので短め



    「やっと帰った…」

    ボスンと倒れ込むようにベッドへと落ちた。
    結局バラムはあれから二時間、俺の家にいた。
    最初は泊まるだなんだと騒いだが、流石に嫌だと言い聞かせてやっと帰って行った。マスク越しでもわかる不貞腐れ顔がまた浮かぶ。

    「……案外悪くはなかったか」

    最初こそは苛立ちの方が目立ち、言い合いもしたが、二人で魔茶を飲むようになってからは心地のいい時間が流れた。ウジウジとしていつも泣きそうで俺が嫌いとする奴と思っていたが、ちゃんと話してみればそうでもなかった。
    自分の意見はハッキリとしているし、俺にも結構強気で来る。だからと言って嫌味な言い方ではないそれに許している俺がいた。
    なるほど記憶を無くす前の俺がバビルスからつるんでいる訳だ。話を聞けば俺たちは結構な確率で二人で一緒にいたらしい。

    「バビルスねぇ」

    言われて学生時代のことを思い出してみる。
    あの嫌な元黒髪の奴は思い出すが、どうやら過去のことは中々に朧気だ。バラムとの記憶がないせいなのか、はたまた別の理由でか、バラム以外のことでも記憶が曖昧なことが多い。
    それだけ彼に関わっていたからなのかもしれない。

    「…何をどうしたんだ。俺は」

    ささっと風呂に入ってまずは体を休めよう。今日の本来の目的はそうなのだから。
    ん"ーと体を伸ばしては立ち上がるとふと誰かに頭を撫でられた気がした。周りを見渡しても誰もいない。

    「ただの隙間風か?」

    それは大きくて優しい手、そんな気がした。

    『ーーー』

    風呂に入り体を洗い、朧気の中浮かぶのは優しくいつも微笑みかけてきた悪魔。俺はそいつの一挙一動を見逃さないようにと目に焼き付けていた。そんな事をしていても今はその悪魔が誰かすら思い出せない。
    湯船に深く浸かりながら何度も頭を巡らせてもその悪魔のシルエットすら思い出せない。無くしたのはバラムだけだと思っていたがどうやらそうではないらしい。学生時代、名も姿もわからぬ悪魔、そしてバラム、俺の記憶の半分と言っていいのではと錯覚するほど頭の中はぼんやりとしていた。
    記憶を巡らせて少しだけわかったのは、名もわからぬ悪魔に俺は特別な感情を抱いていたのではないかということだ。バラムに撫でられた時は少し嫌悪感があったが、その悪魔にも同じように俺は頭をよく撫でられていた。その時は胸が張り裂けそうなくらいに高まっていたのを覚えている。

    「__会ってみたいな」

    少しその顔すらわからぬ悪魔を思い浮かべただけで俺は感情が高ぶった。幸せな気分になり思わず頬が緩む。

    「…バラムに聞いてみるか」

    もしかしたらわかるかもしれない。奴は俺の事をよく知っていると胸を張ったのだ。もしかしたらその悪魔のことも知っているのかもしれない。
    あぁそうだ記憶の中の悪魔ならきっと今の俺を見てすごく心配をしてくれるだろう。俺は案外元気だと早く伝えたい。
    風呂の熱気のせいなのかその悪魔を思い浮かべた熱のせいなのか体中の血液が騒ぐほど熱い。このままではのぼせてしまうと早々に俺は風呂から出た。

    ________________

    「相変わらずバラム先生のことは思い出せないかんじ?」
    「えぇまぁ。けど問題ありません」
    「確かにお仕事に支障は全く出てないし…一応彼とは上手くコミュニケーションも取れてるから大丈夫なんだけど。…大丈夫なのかなぁ」

    うーんと似つかわしくない顔でダリ先生が本当に心配をした顔をしている。本当に珍しく。

    「彼だけではありませんよ。意外と色んなところが抜けてしまっているようです」
    「え!それヤバいじゃないですか」
    「生活する分にも仕事する分にも問題はないので」
    「問題大アリでしょ〜」
    「では昼食取ってきますので失礼します」

    ドアの隙間から銀髪が見えては、俺は丁寧に書類を纏めてその巨体に向かっていた。

    「…ホント大丈夫なのかなぁ」



    「今日のお昼なにかなぁ〜」
    「堂々と食えばいいものを…隠れるようにして準備室で食わなくても良いだろうが」
    「だって僕の食べ方あんまり綺麗じゃないしね。それにキミと二人で食べるのも案外楽しいよ?」
    「案外とはなんだ」
    「嘘。すっごく楽しい」
    「ふんッ」

    バラムが家に突撃してから二日経った。次の日からは一緒に昼食を取るようにした。どうやらずっとこうしていたらしい。俺はバラムの言っていることを信じては素直に食事をしている。
    この記憶が抜け落ちた体になって初めて入った生物学問準備室に俺は目が少し開いた。なにせ私物化されすぎていたからだ。奥の部屋には仮眠室というには少し豪華なベッドもあれば給湯室には家かとツッコミたくなるほど調味料が並んでいた。
    いくら非常勤講師だからといってこの有様とはと頬を引き攣らせた。

    「今日のごはんも美味しそうだねぇ」
    「あぁそうだな」

    ここに運んできた定食を見てバラムはニコニコと微笑みナイフとフォークを持った。
    昨日初めて食べた時に知ったのだがどうやらコイツは俺と同じ階級(ランク)らしい。メニューが同じだった時は流石に驚いた。なるほど俺のあの時の威嚇が効かない訳だと一人頷いた。

    「学校疲れてない?何か問題とか出てないかな」
    「あぁ問題ない」
    「昨日ちゃんとお夕飯食べた?」
    「私は貴様のガキか」
    「だって心配なんだもん。カルエゴくん少食だからなぁ」
    「貴様が食いすぎなんだ」
    「えーそうかなぁ」

    フフとバラムは笑う。
    その姿を見て俺は心の中で拳を握った。よし、聞くなら今だ

    「なぁバラム、お前に聞きたいことがある」
    「なに?あ、カルエゴくんが好きなお肉屋さんはねえ…」
    「そっちではない。…思い出せない人物がいてな」
    「………」

    ピタリとあからさまにバラムの動きが止まる。なんだ何がマズイことを言ったのかと俺も思わず体に力を入れた。無言が続くのかと思ったがバラムがゆっくり口を開く。

    「……もしかして、あの時言ってた"アイツ"の事かな」
    「ああそうだ。顔も覚えてすらいないが会いたいと思ってな」
    「ごめん、僕もわかんない」
    「…そうか」

    ふいと態とらしくバラムは目線を逸らした。
    なんだまた怒ったのかと俺はそれをさほど気にせず話を続けた。

    「よく一緒にいたんだと思うが、私の周りにいた悪魔とか覚えないか?」
    「ない…と思う。昼食は僕と取ってたし、他の休憩時間はお互い自由にしてたから…」
    「知らないか」
    「うん」

    俺の事は知らないことはないと言っておきながらそんなものなのかとため息が出る。

    「……早く会いたいな」

    そう俺が漏らすとバラムは明かさまに眉間に皺を寄せた。大きく動かしていた口は、どんどんと小さくなる。何をそんなに嫌がるのか俺は首を軽く傾げた。

    「お前…やっぱり知ってるんじゃないか」
    「知らないよ」
    「ならなぜそんな顔をする」
    「__だって…」
    「だってなんだ」

    牙を何度か鳴らすと掠れた声でバラムは言った。

    「……僕の知らない悪魔のこと話すキミは嫌いだ」
    「はぁ…?」
    「ねぇこの話やめない?他の事ならきっと僕答えられるよ」

    これ美味しいよと大袈裟に料理を勧めてくる。押し付けられた皿を俺は押し返した。

    「今一番知りたいことだ」
    「………」
    「アイツはどこにいる?些細なことでも良い、情報をくれ」
    「__本当に僕は知らないんだ。キミに触れられるような悪魔はきっと高階級(ハイランク)だし、それにカルエゴくんはあまりそういう事を許す人じゃないでしょ?それをキミ自身が許しているなんて僕は…知らない」

    バラムのように俺は嘘を見抜く能力はない。けれど今のコイツの顔を見れば嘘ではないことはわかった。何かに怯えるように目線を逸らし、強く牙を噛み締めては拳を握っている。視線は逸らされるが、瞳が揺れていない。嘘はついていないが、完全にこの会話に嫌悪感を抱いている。

    「_そうかわかった」

    俺はそう言うことしかできなかった。
    これ以上この会話を続けても無駄だ。ゆっくりナイフを動かし肉を小さく切っては口に運んだ。

    「……さっき、私の好きな肉屋を知っているって言っていたな」
    「え、うん」
    「いつも取り寄せていたはずだがそれとは違うのか」

    話を戻してみるとパァとバラムは表情を変えた。

    「よく二人で食べに行ってたお店なんだ!最近テイクアウトができるようになって、キミが記憶を無くす少し前にも食べたんだ」
    「ほう」
    「…今日よかったら食べに行かない?」
    「お前他人に食事風景を見られるの嫌じゃなかったか?」
    「そこはね個室なんだ。キミが僕のために見つけてきてくれたお店で…だからお店の雰囲気も今のカルエゴくんは気に入ると思うよ!」
    「気に入るって…私が選んだんだから気に入って当たり前だろ」
    「そ、そうなんだけど…」
    「まぁいい。私自身が選んだんなら間違いないな。いいぞ」
    「!!うん!行こう!!」

    ニッコリとバラムは笑った。俺の顔を見るなり、慌てて食事に戻った。

    「(_…さっきの顔よりはいいな)」
    「カルエゴくん?」
    「_いやなんでもない。早く食べるぞ。時間が無い」

    バラムにはもう聞くのはよそう。コイツがアホ面でいられないのならそれがいい。
    早く会いたいと焦りすぎた。そんなに慌てる必要はない。ゆっくり探せばいい。

    「『カルエゴくん』」
    「ーーッ!」
    「次外の授業だったよね?」
    「え、あ、あぁ」
    「遠くから見ててもいい?」

    なんだ…?今、声が聞こえた。"アイツの声"だ。

    「…いいわけないだろ」
    「えー」

    いや気の所為だと頭を横に振る。幻聴が聞こえてしまうほどに俺はアイツに焦がれてしまっている。声なんて覚えてないのに。名前をもう一度、今すぐ呼ばれたいと願ってしまう。

    「…なぁもうひとつ聞いていいか」
    「…いいよ」
    「私はお前をなんと呼んでいた?今の呼び方でいいのか」
    「___」
    「おいバラム?」

    大きな手が震えながら俺の前髪に近づいて、それは触れらることなくゆっくりと戻される。

    「…シチロウ。キミは僕をそう呼んでたよ」
    「そうか。なら__」

    むにゅっと小さく千切られたパンを口に当てられる。ニッコリと食べてと言いながらバラムは笑った。

    「んぐ…おい、バ…し…ち」
    「いいよ。今は呼ばなくて」

    テーブルにバラムは伏せた。顔を腕に隠して見えない。俺の手がバラムに伸びようとした時消えそうな声でバラムは言った。

    「だから早くまた僕を優しい声で呼んでよ。カルエゴくん」
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    Replies from the creator

    とびうお

    PROGRESSシチカル小説できたとこまで。
    結末も何も相変わらず決めてない。
    書き上げれるかもわからない。
    需要あるかしららら〜
    未定好き嫌い好き。そんな子供騙しな占いをした事は何度もあった。いつかそれが"嫌い"だと変わらないかと願った。けれどそれは変わることなどなかった。自分の心に嘘がないのなんてわかってる。自分の心を騙せないのなんてそんなの遠に知っている。いつか来る未来に怯えて、いつか来る未来を恨んで、そんな事をいつもキミの隣で考える。キミの抗う姿を見上げていた。頑張る姿をずっと隣で見ていた。一緒に笑って、一緒に泣き言を言って、一緒にボロボロになった。
    キミと身長を並べる頃からそんな視線は熱のあるものへと変わっていった。少し抜かした頃にはそれは明確なモノへ名前が付けられるものへと変化をして、そこからは真っ直ぐキミを見れなくなっていた。好きになった罪悪感、手に入れられないと分かていた絶望感、そして彼を手に入れることができる幸福な名前も知らない架空の悪魔に嫉妬する日々。常に一緒にいながらも、その幸福な相手はどいつだと頭を悩ました。そんな子供ならではの葛藤が過ぎた頃、僕達は同じ職場で働くことになった。
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