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    とびうお

    @Tobiui_S

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    とびうお

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    シチカル②(前回の続き)

    若干ヤンデレ風味になってるので注意。
    着地点早く見つけなくては





    目が覚めればそれ呆気なかった。幸せだった空間はなくなって、ただ僕が涙を流したという事実だけが残る。

    「…こんな思いするなら見たくなかったよ」

    どっと体だけが疲れる。まるで徹夜明けのダルさだ。体を丸めて脚を抱えた。消えたい。そう願ってしまう。

    「…食欲…ないや。飲み物だけ」

    あ、そうだとベッドから起き上がれば僕は思い出したようにノートを取り出した。

    「メモ忘れないように」

    疲れているけれど観察日記を怠るはよくない。重い体を動かして、あの植物の前に向かった。

    「あ、蕾膨らんでる」

    ふふ、早く大きくなってね。そう伝えながら僕は魔力を少量そこに注いだ。

    「…あ、れ…?」

    昨日と同じ量渡したはずだ。それなのに体が一気に辛くなる。一瞬頭痛がして頭を抱えるがそれはすぐに収まった。

    「あー…そっか。僕が回復してないだけだ。気を付けないとな…。今日は量を減らそう…あと違うのは…」

    瞼が重い状態で必死にノートに纏めた。早く花が咲かないか。それだけが今の楽しみだ。

    _________________

    「おい…お前昨日より顔色悪いぞ」
    「あ…カルエゴくん」

    珍しく午前中に生物学問準備室にやって来たカルエゴくんはやけに心配そうに眉を歪ました。

    「書類だ。お前のサインがいる。確認しておけ」
    「うんわかった。そこ置いといて」
    「…シチロウ本当に大丈夫か?」
    「あーうん、大丈夫。実はね、新しい植物を見つけてそれの観察してたら徹夜しちゃったんだ」
    「はァ?!おま…あー…いや今更俺の忠告を聞かないな。体壊さない程度にしておけよ」
    「うんわかった」

    溜息をつきながらカルエゴくんはすぐに出て行こうと僕に背中を向けた。

    「ッ!ま、待って!」
    「あ?」

    思わず力強く手首を掴んだことにカルエゴくんが睨みつけてきた。

    「なんだ。私用ならまた昼に聞くぞ。今は仕事中だ」
    「え、えーと…」
    「……いやいい。まだ時間はある。なんだ?」

    フッと力が抜けたようにカルエゴくんは息を漏らして僕に振り向いてくれた。どうしたと優しげに目元を緩ませて。

    「……シャンプー…」
    「は?シャンプー?」
    「…キミが使ってるシャンプー知りたいなって…」
    「は…?」
    「あ、い、いや!あの最近ね僕髪の縺れ酷くて…キミさらさらだから知りたいって…いうか…」
    「…っぷ…くく…」
    「わ、笑わないでよ!」
    「わ、悪い…クッ…あー、シャンプーだな。けど俺が使ってるのお前値段的に嫌がると思うぞ?」
    「な、名前だけ!」
    「そうか。じゃあ明日持ってきてやる。いつも箱買いしているし、たまには贈ってやるよ」
    「ホント!」
    「あぁ」

    じゃあなとカルエゴくんは手を振って外へと行ってしまった。廊下に出てその背中を僕は見えなくなるまで手を振った。

    「……うん…僕って最低だな」

    また夢の彼と彼を比べる。
    当たり前なのに、予想のできない言葉、表情が返ってくる。急に笑ったり、急に怒ったり、それがヒトだし、わからないことが生き物だ。
    わかっているのに、今の会話だけで僕はいつもより心が浮かれた。会話が返ってくるそんな当たり前のことに。

    「あーあ!!絵でも描こうかな」

    夢の彼は艶っぽく笑う。けれど現実の彼は下手くそで皺を寄せて笑うのだ。

    「…うん、やっぱり好きなのはこっちだな」

    ずっと見てきた笑顔がやっぱり大好きだ。
    色鉛筆を持って、僕はいつものように絵本を描き始めた。

    ________________

    「え、お見合い?」
    「あぁいつものやつだ」

    昼休み、今日は一緒に昼食をとることにした。二人っきりで食事をするのが僕の楽しみだ。けれどその楽しみはいつもすぐに絶望へと変わる。

    「今回も断るの?」
    「もちろんだ。…が無下にできん相手でな」
    「…」
    「食事を一度する流れではあるが、それで満足してくれれば助かるんだが」
    「…相変わらず大変だね」

    チッと大きくカルエゴくんは舌打ちをする。
    カルエゴくんの家柄的にこういう話は昔から来る。カルエゴくん曰くただの接待行為。
    けれどその接待がいつ"本気"になるなんてわからない。僕はまたその日をただ待って、次の日の彼の態度を怯えながら確認するのだ。それがまた来ただけのこと。
    湯のみを指で悪戯に撫でているとカルエゴくんはじっと僕を見つめてくる。

    「なに?」
    「していいのか?見合い」
    「え?したらいいんじゃない?」
    「いや、嫌がるかと思ってな」
    「?」
    「…ハッ、悪いな。お前に比べて"そういう話"多くて」
    「ムッカぁ…」

    ハハッと笑いながらカルエゴくんは魔茶を飲む。それをじっと僕はただ見つめた。

    「(_おかしな事を言うんだから…)」

    __僕にそれを止める権利なんてないじゃない。

    ただ笑って見送って、いつかそういう未来が来たら僕は一番仲がいい悪魔としてキミの隣にいるそう決まってる。いつもよりゆっくり動く手でお肉をナイフで切る。食べやすいように零れないように小さく切ってはそれを食べた。いつもより美味しくないそれを必死に咀嚼する。

    「…これキミの好きやつだったけ?」
    「あ?肉か?」
    「うん」
    「確かに好きだが、そこまでだな。どっちかというと昨日の奴の方が好みだ」
    「へぇそっか」
    「あー…それよりも食べ終わったらまた雑用だ」
    「え?また??ダリ先生?」
    「あぁ」
    「お、お疲れ様」
    「アイツいつか殺す」
    「怖い怖い」
    「あーそれから…」








    「ダリ先生に虐められて可哀想なカルエゴくん」
    「おいその言い方はやめろ」
    「ふふ、ごめんごめん」
    「ずっとお仕事だって?大丈夫?」
    「必要なことだとは思ってるから大丈夫だ。ムカつくことに変わりないからな」
    「キミらしくてカッコイイね」
    「それはどうも」
    「__これ美味しい?」
    「あぁ。好きなやつだ」
    「ふふ、これあっさりしてるもんねぇ」

    小さなテーブルで隣合って僕とカルエゴくんは座って、小さなお肉を食べていた。昨日食べた味をまた僕は夢で再現する。キミが好きだと言ったから。

    「食べさせてくれないのか?」
    「え?」

    ほらっとカルエゴくんが小さな口を開けて僕に向けてくる。その舌が見える隙間に鼓動が早くなった。

    「え、え、僕ってこういうことしたかったの?」
    「俺がしてるんだからそうなんじゃないか?」
    「えぇ…意外と子供っぽいんだね僕」

    目を強く瞑ってアワアワしながらも僕はその口に、更にお肉を小さく切って食べさせてあげると可愛く彼は美味いと告げた。

    「_まさか三日連続キミの夢を見れるなんてね」
    「嫌か?」
    「ううん、嫌じゃないよ。…あ、うん…今朝はもう見たくないって思ったけど…また夢のキミに会いたくなっちゃったから」

    じっとカルエゴくんは僕を見つめて来たあとにフッた優しく頬を染めて笑った。

    「俺はお前が一番だぞ」
    「うん僕もだよ。ありがと」
    「お前が望むなら、俺はお前に会い続けるぞ」
    「え?」

    頬を優しく包んでくれると彼はやけに艶っぽく舌を出した。

    「お前が"食べさせてくれる限りずっとだ"」
    「たべ…?」
    「あぁ。…けど残念だ。今朝はあまり食べさせてくれなかった。だからお前との時間はもう終いだ」

    チュッと僕の素肌にキスをしてきては、バイバイとカルエゴくんの声が聞こえず。ただその口の動きだけをぼーと見つめた。







    「…食べさせるって…何?」

    起き上がった瞬間僕は懸命に頭を動かした。食べさせる?夢のカルエゴくんが僕の意志とは関係なしのセリフを発したのはアレが初めてだ。まるで意思があるようなそんな。いやまさかと頭を振る。

    「今朝は少ない…今朝…あ!」

    ベッドから転ける勢いで飛び降りて、慌てて窓際まで走った。昨日の朝少なかったもの、それは一つしかない。

    「花が少し咲き始めてる…それから…」

    窓際に置いてる例の白い植物は更に大きさが成長していた。植木鉢の下には黄色い花粉が落ちている。それを指で撫でて取ると僕は匂いを嗅いだ。

    「…毒物性の匂いはしないか。…でも確実にこれを置いてから夢を見るようになった。やはり幻覚を見せる何か…?食べさせるはきっとこの植物の意思…?なら…」

    ならもっと多くこの植物に魔力を注げばあの夢は長く続くということ。
    ゴクリと唾液を飲み込む。それがイケナイことだと頭ではわかる。こんなことに魔力を使って僕の身になにかあればどうするだ。どうする…どうする。

    「…………一度だけ。確認するだけ」

    これは観察。なにも悪くない。そう自分に言い訳して僕は震える指でまたそれに触れた。

    _________________

    「シチロウ、今日お前の家行っていいか?」
    「え?」
    「呑み」

    放課後、仕事を終えたカルエゴくんがこっちにやってくると開口一番にそう言った。片付けをしている手が思わず止まる。

    「明日もお仕事なのに?まだ週の真ん中だよ??」
    「たまにはいいだろ。溜まってきたんだよイライラが」
    「僕はいいけど…ウチ何にもないよ今」
    「帰りに買って帰る」
    「…これは断れないやつだな?」
    「断れないやつだ」

    思わず枯れた笑いが出るとカルエゴくんはムスッと口を尖らせた。

    「なんだ嫌なのか」
    「嫌ではないよ。ただ今日のカルエゴくんの絡み酒面倒くさそうだなぁって思って」
    「!?そういう面倒見るのはお前の仕事だろ」
    「いつからそんな仕事に就いたの僕」

    少し加減された拳が僕のお腹に来る。痛いと唸ればカルエゴくんはまた三言くらい僕に噛み付くように文句を言う。そんな彼を無視しながら片付けに集中した。

    「シャンプー持ってきたから買い物の荷物はお前が持てよ」
    「!」
    「お前が身なりに気にかけ始めるとはな。まさか気になる相手でもできたか?」
    「…もーからかわないで。髪の毛絡まるの大変なんだからね」
    「はいはい。ほらさっさと準備しろ。俺が待ってるんだぞ」
    「へーい」
    「外で待ってる」
    「はいはーい急ぎまーす」

    フンっと鼻を鳴らすとカルエゴくんは外へと出ていった。

    「変なカルエゴくん」

    _________________

    「_で、お前どうした」
    「へ」

    まだお酒一口目でカルエゴくんがそう告げる。まだ買ってきたおつまみをお皿に移してる最中だというのに真っ直ぐ見つめてきて、思わず僕は座り込んだ。

    「どう見ても様子変だろ」
    「あーそういう…ごめん心配かけた?」
    「そんなあからさまに顔色がおかしければな」
    「えー?そんなにかな」
    「で、なんだ」
    「キミ本当にそういうの聞くの下手だね」
    「お前相手にわざわざ建前なんて必要ないだろ」
    「ははっもしかして喜んでいいやつかな?」
    「さぁな。で?」

    本当にオブラートを知らないというかなんなのかと思わず眉を歪ましては、またおつまみを皿に動かし始めた。ゆっくりワインを飲み進めるカルエゴくんを尻目に僕の口は当たり前のように嘘をついた。

    「何も無いよ?いつも通り」
    「は?んな訳ないだろ。何日寝てない?」
    「寝てるって。ただね、最近疲れてるせいかあんまり寝付きがよくないだけだよ」
    「観察とやらを続けてるのか?」
    「あぁそれも続けてる。楽しくって」
    「その観察対象はどこだ?見たい」
    「ダメ。デリケートなの」
    「……」

    あぁ不貞腐れてる。そんな顔をしてもダメだよ。あれはもう、僕にとって宝物になってしまったから。空になったグラスにワインを注げば、黙ってそれを飲み続ける彼に少しの罪悪感を抱きながら、僕もその感情を飲み込むようにワインを飲んだ。

    「…今日泊まる」
    「明日も仕事だよ?」
    「…お前が嘘をついてるようにしか思えん」
    「…」
    「シチロウ」
    「…今日はダメ」
    「どうして」
    「今日は__」

    続きを言おうと口を開くがすぐにそれは強く噤む。

    「予定があるんだよ」
    「予定だ?」
    「そ、予定。だからお酒飲んだらさっさと帰ってよ?」
    「……誰と」
    「カルエゴくんが知らないヒトと」
    「俺よりそっちとの予定優先か」
    「そっちが先だったもん。誰がじゃないよ」
    「…わかった。酒飲んだら帰る」

    納得はしていないんだろう顔に僕は知らないフリをした。ただお酒を飲んでいつものように過ごすそれだけだ。

    「で、カルエゴくんの愚痴は?」
    「__そんなもんないわ」
    「そ。じゃあこれ食べよ。おいしいよ」









    「それで?結局現実の俺を追い出したのか?」
    「追い出したって言い方やめてよ」
    「ククッ酷いやつだなぁシチロウは」

    いつもの木の下なのに、何故かそこにはベッドがあって僕らはそこに腰掛けていた。何度もカルエゴくんの鼻が僕の首を擽る。

    「現実の俺よりこっちの俺を選んでくれたのか?嬉しいな」

    そう笑ってはカルエゴくんは僕の首に腕を絡めるとゆっくり確かめるように足を間に入れていく。それを僕は黙って受け入れた。細い腰に手を回して、彼の熱のある視線をしっかり受けて、僕はいつのまにかそれに夢中になった。

    「カルエゴくん、ぎゅっとして」
    「あぁいいよ」

    いつも冷たいキミの体温は変わらない。埋めた感覚もない。それでも一つだけ変わった。僕はそれを堪能するために何度もカルエゴくんの胸に鼻を押し付けて、そして今度はカルエゴくんの頭を抱き締めた。

    「これがカルエゴくんの匂いかぁ」
    「今はお前も同じ匂いだろ?」
    「ふふ、そうだねぇ。同じシャンプーだもんね」

    キミの好きな味を知った。キミの匂いを知った。

    「ねぇもっとキミを知ったらここのキミはもっと魅力的になるのかな」
    「なってほしいか?」
    「……キミは僕に好きって言ってくれる」
    「あぁだって俺にはシチロウしかいないから」
    「ね、カルエゴくん。一緒にここに寝転がろ」
    「いいよ」

    そう言うとその大きなベッドに二人で並んで寝転がる。僕の腕にカルエゴくんの頭を乗せて、僕はキミの髪を何度も撫でた。
    ゆっくりその束ねた紐を外せば、さらりとその髪はベッドに広がる。一本一本を確かめるようにして僕はその髪に触れる。キスをして匂いを確かめて、何度もキスをする。

    「シチロウに触れられるのは堪らないな」
    「今日はもっとキミの匂いを感じたい」
    「なぁシチロウ」

    チョンとカルエゴくんが人差し指で僕の唇に触れるとククっと笑った。

    「こっちにはしてくれないのか?」
    「…していいの?」
    「あぁいいさ。だってここはお前の夢だ。自由に俺を愛してくれていい。俺もお前を愛する」

    どうしたい?とカルエゴくんは笑う。そんなのずっと決まっている。キミの頬に触れて牙で傷が付かないように必死に傾けて、そうしてキミの唇に自分のそれを当てる。

    「(…あぁやっぱり感触なんてない)」

    キミの唇が柔らかいのか硬いのか、乾燥してるのか潤んでるのか、そんなのわからない。けれど僕はそれに食いつく。何度もカルエゴくんにキスをして、吐息混じりのその偽りの声に耳を傾けた。

    「…カルエゴくん好きって言って」
    「シチロウ好き。好きだよ」
    「うん僕も…僕もキミが好き」

    現実の彼に会えばこんな夢を見ていることに罪悪感を抱く。それでもこの甘い空間をやめらない。カルエゴくんを何度も抱き締めて、好きと言って言われて、堪らない、幸せだ。そう思う。胸の中に収まると彼は可愛げに笑っては何度も僕の頬に触れる。

    「ずっとこの時間が続けばいいな」
    「キミもそう思う?」
    「あぁ」

    とんだ茶番だ。このカルエゴくんが言うセリフは全て僕の願望なだけで、この言葉はただの僕の気持ち。そうわかっていてもカルエゴくんの顔でカルエゴくんの声でそう言われれば、僕は容易く浮かれる。細い腰が折れるんじゃないかと思いながらも強く抱き締めて、ただ二人で笑い合う。

    「俺を感じたいか?」
    「え?」
    「だったらあっちの俺に触れてみたらいい」
    「……そんなのできないよ」
    「できるさ」

    前髪を払って、僕の鼻に触れる。
    そうすると彼は不気味にそして綺麗に笑うのだ。

    「お前は悪魔だ。悪魔なら悪魔らしく欲しいものを無理矢理手に入れればいい。欲に従え」
    「そ…んなの、できない」
    「なぜ?」
    「…キミに嫌われたくない」
    「なぜそんな心配をする。俺がいるじゃないか」
    「え…?」
    「感覚は本物から。感情は俺が与える。お前をこれからも愛する」

    ゆっくり彼は僕の腰を撫でた。ニヤリと笑うと小さな牙が見える。思わず唾を飲み込むとまた彼は笑うのだ。

    「大好きだぞ。シチロウ」
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    とびうお

    PROGRESSシチカル小説できたとこまで。
    結末も何も相変わらず決めてない。
    書き上げれるかもわからない。
    需要あるかしららら〜
    未定好き嫌い好き。そんな子供騙しな占いをした事は何度もあった。いつかそれが"嫌い"だと変わらないかと願った。けれどそれは変わることなどなかった。自分の心に嘘がないのなんてわかってる。自分の心を騙せないのなんてそんなの遠に知っている。いつか来る未来に怯えて、いつか来る未来を恨んで、そんな事をいつもキミの隣で考える。キミの抗う姿を見上げていた。頑張る姿をずっと隣で見ていた。一緒に笑って、一緒に泣き言を言って、一緒にボロボロになった。
    キミと身長を並べる頃からそんな視線は熱のあるものへと変わっていった。少し抜かした頃にはそれは明確なモノへ名前が付けられるものへと変化をして、そこからは真っ直ぐキミを見れなくなっていた。好きになった罪悪感、手に入れられないと分かていた絶望感、そして彼を手に入れることができる幸福な名前も知らない架空の悪魔に嫉妬する日々。常に一緒にいながらも、その幸福な相手はどいつだと頭を悩ました。そんな子供ならではの葛藤が過ぎた頃、僕達は同じ職場で働くことになった。
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