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    柿村こけら

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    POIPOI 23

    柿村こけら

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    #オベぐだ
    ##FGO

    生理痛しんどいマスターとオベロン(再掲) いきなり斬られても壁に投げ付けられても頭をぶん殴られても、なんなら胎を掻き混ぜられても立ち上がれるのにどうして生理痛には勝てないんでしょうか。人体の不思議だね。
     不思議だねって言うかただ単に戦闘時だとアドレナリンがドバドバ出てるから誤魔化せるけどこうして何もないノウム・カルデアの中だとそういうワケにもいかないので負けてしまうだけなんですが。
     そんなこんなで藤丸立香、本日生理痛でお休みをいただいています。連日ずっと酷かった痛みは最高潮に達し、縦になったら死ぬ横にならせろ横になったまま移動させろとワガママを言うも私はイシュタルみたいに浮けないので無理。ただの人間は移動するために縦にならざるを得ないのだ。仕方なく新所長に休みを申し入れ(ムム? いつもながらキミは大変だな、まあ人類最後のマスターに倒れられたら困るのでね。薬を飲んで休んでいたまえ!)医務室に向かい鎮痛剤を貰い(また月のものかマスター。ここまで来るともしや新たな症例が胎にあるのではないかという気がするぞ。ちょっと診させてくれないか?)サンソンがアスクレピオスを止めてくれている間に食堂に逃げ(温かいものを食べてから薬を飲むといいワン。フフ、ご主人は唐辛子マシマシトマトチリうどんを所望しているものと見た。え? 違う?)ご飯を食べて薬を飲んで現在マイルーム。……食堂から部屋までの記憶がおぼろげなんだけど、誰かが送ってくれたような気がする。後でお礼言わないと…………
    「あ〜〜〜〜……死ね」
     自分の腹に文句を言っても仕方ないのだが、そうでもしていないとやってられないのだ。時間は限られているのにどうして私は自分の都合で眠っているのかと嫌になってくる。本当は少しでも時間を有効に使わないといけないのに。元気だったら今日はシミュレーターでライダークラスのみんなと演習して、その後孔明先生に魔術の勉強見てもらって、あとブーディカとバーゲストと料理する約束もしてたな……そういう予定が全部リスケされてしまうのも申し訳ない。サーヴァントのみんなだって現界してからも鍛錬を積んでいるのに、彼らに頼っている私がこの様なんて情けなさすぎる。
    ――不可抗力だって解ってる、けども。
     気分が落ち込むのも仕方ないし、こうして蹲るのも当然のことだ。けれど解っていても嫌になる。そんなイフを考えたって無駄だって解ってるのに、もし生理痛とか全然ない人が人類最後のマスターだったら単純計算で一年以上元気な日が増えることになったのに……とか考えちゃうのだ。
    「いっそ私が死ね……」
    「……殺してあげようか?」
     枕に顔を押し付けたまま呻いていたら突然声が降ってきた。慌てて――と言いたいところだが、生憎私にそんな元気があるわけもない。ノロノロと顔を上げて声のする方を見る。扉の空いた音はしなかったからきっと霊体化して抜けてきたのだろう。珍しく真雪のような白い外套に身を包んだ妖精王が、呆れたような顔して私を覗き込んでいた。
    「きみが死ねば汎人類史もめでたく崩壊だろ? 俺としては願ったり叶ったりだから、今ここで殺してあげてもいいんだけど」
    「……言葉の綾だよ」
     起き上がってやりたいがそれも叶わない。だらしないこと承知の上で寝返りだけ打って、視線をオベロンの方に投げる。オベロンは弱った私を見ても面白くないとでも言いたげな溜息を零し、傍らにあった椅子へ腰かけた。
    「倒れたっていうから様子見に来てあげたんだけど、ピンピンしてるじゃん。流石だねマスター、きみの生き汚いところは本当に尊敬するよ」
    「ハハ、ありがとうオベロン。たった一人のプリテンダーに尊敬されるなんて私は幸せなマスターだなぁ」
    「…………」
    「…………」
    「……で? 何、きみ。そんなに体調悪いの?」
     お互い何を言い合ってもダメージにならないので厭味を言うのは諦めたらしい。オベロンは足を組み直すと、青空の瞳で私を見た。そっか、オベロンが召喚されてから私が生理痛に負けるのって初めてか。妖精國にいた間は……気合いで何とかしてたから。うん。だいぶキツめの鎮痛剤で誤魔化してた、と言ってもいい。ただの人間である私には些か過ぎたものであるのであまり使い過ぎないようにとアスクレピオスに釘を刺された代物だ。
    「体調悪いって言うか、生理痛。知ってる?」
    「バカにしてる? 経験はないけどね、知識としては一応。聖杯に授けられたような」
    「すげえな聖杯! で、まあ、私それがだいぶ重い方で、戦ってるときなら無理に誤魔化すけど、こういう待機時間のときはどうしようもないから休むことにしてるの」
     オベロンってキャスターアルトリアにそういうの訊かれたことはなかったのかな、と思ったけど、よくよく考えたら妖精は妊娠しないからそもそもそういう機能ないか。ならこんな風に生理痛に負けている女を見るのも初めてに違いない。
    「……それ、死にたくなるくらい辛いんだ?」
    「あー……」
     まあ、と頷く。
     私は横になったまま、オベロンの方に少し手を伸ばした。ヴォーティガーンの姿でいることが多い彼が珍しく羽もしまった人間態でいるのはもしかして私に気を遣ってくれたんだろうかと都合のいいことを考える。触れても傷付かない手を掴んだら、オベロンは薄桃銀の髪を揺らしながら私を見た。
    「腰は痛いし足は動かないし頭痛いし寒いし、何より子宮がクッソ痛い。そんなわけないのに、酒呑にハラワタ掻き混ぜられるのより痛い気がする。死んだ方がマシだって思うし、自己嫌悪でグチャグチャになってるよ」
    「ハ、普段のきみが形無しだね、それ。ていうか、いつもバカみたいに背筋伸ばして真面目に生きてるから、反動で休んでるコトに罪悪感を抱く羽目になるんだよ。もっと適当に生きればいいのに」
    「そうはいかないでしょ。私、人類最後のマスターだもん」
     そう返せば溜息を吐かれた。ずい、とオベロンの顔が近付いてくる。本性を知っていれど、王子様のようなかんばせは心臓に悪い。キラキラトーンが背景に見えるくらいだ。
     けれどそのキラキラも束の間、次の瞬間には空いている方の手でデコピンを食らった。ずびし、と額に衝撃一発。
    「いっっっった……!!」
     悶絶する私をよそにオベロンはジト目でこちらを睨んでいた。バカだなぁ、とそのアクアマリンが告げていた。目は口ほどに物を言う――彼の場合、目も言葉も嘘に塗れているから、真実なんて告げてくれはしないけど。
    「ブッ倒れてるときまで余計なもの背負おうとするなよ。ていうか世界の方だってきみみたいな女に背負われたら迷惑だよ」
    「そこまで言う?」
    「言う。だってきみ、ちゃんと言われないと解らないだろ」
    「そんなことな……ってちょ、ちょオベロン? オベロンさん? 何ヒトの布団に入ってきてるの」
    「立香が寒いって言ったから」
     勝手にベッドに潜り込んできたオベロンの腕が私を捕まえて、ふわふわのマントの中に閉じ込められる。首筋にぶつかるオベロンの髪の毛はサラサラで、くすぐったいけど妙に心地良かった。つめたくなんてない、人肌の温度がゆっくりと伝わってくる。
     耳元に寄せられた口が私の名前を紡ぐ。童話でも語り聞かせるみたいな優しい声は確かにオベロンのものなのだけれど、優し過ぎてちょっと笑いそうになった。
    「……ありがとね、オベロン」
    「素直だと気味悪いな。何か企んでる?」
    「企んでるのはオベロンの方じゃないの? ま、いーや。私寝るから、オベロンはちゃんと湯たんぽしててね」
    「涎垂らすなよ」
     ハイハイと雑に返事をして、私はオベロンの外套を手繰り寄せる。白くてふわふわのそれに頬を寄せながら、足元まで広がる温もりに身を任せた。痛みはまだ治らないけれど、眠気はなんとかきてくれている。まあこんな日くらい、荷物はちょっと下ろしてもいいよね。
     起きたら背負い直すからと心の中で告げて、私はゆっくり目を閉じた。後ろから聞こえてくる吐息に耳を澄ます。まだ始まってもいない夢に微睡みながら、私は意識を手放した。
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