高校卒業と共に切れるはずだったのにいまだに縁は切れず、むしろ頻度は一ヶ月にあるかないかにせよ電話で連絡をとって部活の相談という名目で待ち合わせたりしているのは、自分の本心のあるところには自然消滅したくないという欲があるからだ。
とはいえ相手にそれを伝える術はなく、むしろ部活の相談という名目で相手も連絡をしてくるものだからただの相談相手、あるいは論争を競わせる友人未満といえなくもない。
なんとなく仲良くなって、とおもうのはこちら側の都合のいい捉え方の可能性も否めない。
だからこそ賭けのつもりで、２月の初旬。彼の予定を聞いて、待ち合わせをしてみた。
その日当日にできなかったのは平日で夕方にという時間のすりあわせができそうになかったのもあるが、あからさまにそれを匂わせる真似をしたくなかった。そしてその日に予定があったら、などとも頭の隅にも不安を過らせたくなかった。

はたして待ち合わせの昔づくりの喫茶店にきた彼は、なんの気もなく雪ですこしぬれた肩と髪と寒さで赤らんだ顔で、だいたいそれ以外はほぼいつも通りそうで、２月のわざとはずしたあの日を意識しているそぶりはなさそう。
最初に探偵部の立て込んでいた依頼が片付いた報告を受けて、次に大学の部での近況を話す。
それが済んだら、すこしだけ部を除外した近況。これは最近になって時間が延びてきていて、一ヶ月にあるかないかの相談の時間を大いに長引かせてくれている。
「そうだこれ、探偵部のみんなで分けて」
「え？いや悪い」
「この前からお世話になったでしょ、ほらうちの部の仲間の関係で」
話の頃合いをみてバッグとは別に用意していた紙袋をテーブルに乗せた。これが目的の半分だ。中身はあの日を意識させたりほかの探偵部の面々を勘繰らせると面倒なので、チョコレートは入れていない。
「それとも受験のために参考書とかのがいい？」
「いやそれはちょっと」
冗談に首を横に振る彼の姿にすこしばかりしょうがないと思わなくはないがそこは圧し殺して、彼の手元の小皿にチョコレートケーキが一欠片もないのを視線で確認する。
この純喫茶はセットでこうしたケーキがついてくる。２月はチョコレートケーキだ。
これでとりあえずは目標達成。
チョコレートケーキの甘さをストレートティーで洗い流して、視線をあげると、紙袋を持った彼と視線が噛み合う。
瞳が見開かれて不自然に揺れた彼の優しい眼差しが、横に逸れて、お前もマメだなと話を引き戻す。
マメ、ね。それはそっちもじゃない。相談があるといったらちゃんとのって、同じように悩んでくれて。２月なんて時期に文句いわずに。

オチがみつからない