音がこいしい楠石時に音が恋しくなり、古いラジカセを引っ張り出し(もともとこの根城にしている廃屋に放置されていた)霊混じりの音を聴いたりもする。
ラジオでは気が向かなければ、なにかを口ずさんだりも。
しかし昔習ってもいない流行り歌を蒼汰が知るはずもなく……楠石とてそういうものは呪術として利用されなくもないため、件への情報提供するにあたり調べなくもないが……それは蒼汰に習わせることもなく、平穏に暮らしていたといえなくもないがおよそ一般的ではなく、人間の流行に疎いサトリには歌えず。
そうなれば自然に童話などとなって子供扱いされたと思い違いした蒼汰がヘソを曲げたりするまでが一連のやりとりもあったりして、音がささいな諍いを生んだりもするがそれすらこの音をたのしむことの一環になっているのを、蒼汰もサトリもしらないだろう、そして今日も音が恋しくなり、音を求める……
いや、音がなくても本当のところ、こうした些細なやり取りが落ち着いたりもしてそれを堪能しているのかもしれない。