傘が壊れた
傘自体はサトリの器用な指先で修理されてなんともないが、しかしこの傘は昔…それこそ妖怪専用のトレジャーハンターを興してから拾って、ながく使っていたもので、サトリいわく魂が宿りつつあるかもしれないというのだ。
おそらくながく使われていたのか、前の持ち主から愛情を注がれて魂が宿ったのだかと説明したサトリも妖怪であるから同族の気配を察知していち早く同族のいたんだからだをなおしてあげたらしい。
妖怪が同族を労る気持ちは人間が人間を労る気持ちとそう変わらない……
弱い妖怪のものだからとあまりよい顔はしないながらも黙って魂が宿りつつある傘を受けとる蒼汰の心中のあるところを推測して、つい細く吐息を洩れた。
いまの蒼汰は完全な調子ではないけれどサトリに敵意や距離を置こうともしていない日々の態度のように、魂が宿りつつある傘を蔑ろにはしないだろう……その証拠に、修理された傘はさっそく蒼汰の日傘代わりに開かれた。