チョコ奪還大作戦?「大寿くんがプレゼントしてくれたバレンタインチョコ、星が宝石のようだよね。ルビーは、大寿くんが着ていた黒龍総長の特攻服の色。サファイアは、大寿くんの濃い方の髪の色。シトリンは、大寿くんの瞳の色みたいだなと思っていたんだよ」
三ツ谷は朗らかに笑う。
宇宙をイメージしたお洒落なパッケージにチョコが6個入っているが、三ツ谷は特にこの3つがお気に入りだ。
優しげな柔和な顔がより一層柔らかくなって、人々の敵意を喪失させる。しかし、大寿は好戦的になった。
「なら、この宙に煌めく銀河は、三ツ谷の髪の色だな」
三ツ谷はオレのものだから貰うぞ。
と大寿は言うと、大寿にとっては小さな丸い塊を摘み、ひょいっと口の中に放り込んだ。
「あ──っ、オレのっ!」
三ツ谷は返せっと手を伸ばした。伸ばしたところで既に口の中で全く意味はないのだが。
一粒のチョコが大寿の口の中で転がる、その様を見せられて、悔しさで涙がちょちょぎれそうになった。
「大寿くんヒデェ、オレまだ食べてないのに…」
「フン、甘いぞ」
嫌味ったらしくニヤつきながら、舌の上の少し小さくなったチョコを見せつける大寿。
すっかり忘れていたが、大寿はイジワルだった。
──こうなったら奪い返してやる!
と決意を固めた三ツ谷は、テーブルの向かい側に座ってる大寿の元にズカズカと歩み寄り、ガシっと肩に手を置いて顔を近づけた。
大寿が避けようとしないので、ドクンドクンと狭しく心の音が鳴ってしまったけど、チョコ奪還の意志は揺るぐことなく、気合いを入れる。
ふにっと弾力のある膨らみが触れた。
──やわらけぇ……
先ほど何度も唇を重ねた。大寿は三ツ谷の唇を味わうように幾度も啄んだり、食んできて、大きな口は余すことなく快感を与えてくれた。お互い更なる快感を求めて舌を絡めて、齎される甘い痺れに酔いしれた。
三ツ谷はまずは何度も角度を変えて肉感的な唇の弾力と柔らかさを堪能したいものの、今しなくてはならないのはチョコ奪還!
早くしないと溶けてなくなってしまう!
──おじゃまします…
心の中でバカ丁寧に挨拶をしながら、大寿の口腔に舌を侵入させようと下唇に舌を添えた。大寿は奪い返されていいのか、抵抗はしてこない。
──返してもらうよ大寿くん
意を決して潜入捜査を開始する。
すると口内を満たす甘い粘液が舌に絡まり、チョコの甘さが伝わって、早くも蕩けそうになった。
見た目に特化したチョコで、味は保証できないようだったが、大寿の口の中に広がる甘さは好みだった。
──あ、ヤバ。チョコ探さないとっ!
うっかり動きを止めてしまったが、味が分かって満足するわけがない。チョコの舌触りはどうなのか、飾りの部分の味は、もう表面は溶けて手遅れでも、直接舐めたいのだ。
大寿の舌は大きいので、すぐに触れることが出来た。先端を丸めてチョコを渡すまいと包んでいるようだ。肉厚な舌をこじ開けるのは困難かもしれない。どの部分だって力では敵わないのだ。しかし『柔よく剛を制す』という言葉があるではないか。舌先を器用に使って、やわやわと隙間を擽っていく。時おり溶けたチョコが隙間から溢れ出るので、じゅるじゅると啜り、口内より濃厚な甘みを味わいながら、舌先を尖らせて小刻みに擦り続ける。
ピクッと大寿の肩が跳ねた。
耐えられなくなったのか、大寿はついに舌を伸ばした。
──もらいっ!
舌の上のチョコは大分溶けてかなり小さくなっていた。でも無くなってはいない。大寿の広い舌に乗るチョコを自分の舌で転がす。
舌と舌が擦れて、その間のチョコは益々小さくなってしまうけど、舌に触れるチョコと、チョコが溶けた大寿の舌の甘さで、とろけそうになる。
「…は…ぁ……んンっ」
奪還するのを忘れて、大寿の舌の上のチョコを転がし続ける。
もうすぐチョコは無くなってしまうけど、チョコと共に触れる大寿の舌は甘いし、このまま大寿の舌を舐めて、甘みと舌の感触でジンジンと広がる甘い痺れに酔いしれてもいい。
──え?
溶けたチョコにより、甘く滑らかになった大寿の大きな舌が、突如、同様に甘く濡れて滑らかな三ツ谷の舌を、呑み込むように絡め取った。
後頭部と首の後ろに大きな手を添えて、口内で三ツ谷の舌を包みでぐっと引き寄せる。
「……ふ、ぅ……む、んんっ」
大きな肉厚の舌が獲物を逃さまいと掴む。
どうやら三ツ谷は、チョコという甘い罠に引っかかってしまったようだ。
やがて根元から舐め上げられ、吸いつかれて、ねぶられて、甘い電流が脊髄を走り、快楽物質が脳に溢れ出した。
腰にもダイレクトに響き、キスだけでは終われないほど昂ぶる。
三ツ谷自身がチョコになったように、トロトロにとろけてしまった頃、唇が解放され、ふたりの唇と唇の合間で、粘着質な甘い糸がプツリと切れた。
「三ツ谷、今度は三ツ谷がチョコを口の中に入れて、オレがオマエの口腔ごと、チョコを堪能する番だな」
「………ふぁい♡」
ふたりの甘いひとときは、まだ始まったばかり。
【おしまい】